IT業界の今後、少し悲観的に[Analysis]

» 2009年09月07日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 GDP(国内総生産)でこれまで世界2位だった日本は近く中国に追い抜かれるのだという。世界2位の経済大国でなくなる日本のIT業界は今後どうなるのか。最近はそのようなことばかり考えている。少し悲観的に。

 IBMやオラクル、マイクロソフトなどの全世界で活動するグローバルなIT企業は、世界2位の日本をこれまで特別扱いしてきた面がある。商習慣が異なるとして日本独自のパートナービジネスを認め、日本向けの製品やサービスの開発を認めてきた。そして日本だけのマーケティングプログラムも行われてきた。

 だが、そのような特権が世界3位の国に認められるのか? グローバル企業がグローバルに活動するための武器の1つは業務プロセスの共通化である。全世界で同じ業務プロセスを回すことで、ビジネスを世界展開するためのハードルを下げ、展開を容易にしてきた。日本はその共通化から、お目こぼしをもらっていた。しかし、経済規模の順位を下げつつある国に、そのようなわがままは認められないかもしれない。

 もちろん、日本の商習慣や顧客の意向を無視したビジネスを展開すれば、グローバルで存在感のあるIT企業の製品やサービスであっても日本では売れないかもしれない。しかし、業務プロセスを変更して日本で無理に売上を伸ばすよりも、抜群の成長率を誇る中国やインドで売った方が、マーケットの受けはよい――と判断されたらどうだろうか。日本は世界的なITの流れから取り残されてしまうだろう。もちろん、日本のIT企業が、がんばれば問題はないわけだが、現状では外資系のグローバル企業が製品やサービスの面では日本のIT業界を引っ張っている。

 日本に進出する外資系IT企業の多くは、全世界の売上の10%を日本で挙げることを目指していた。日本のGDPなど経済規模を考えればそのくらいは堅いという理想数値だ。しかし、その10%を実現できた企業は多くなく、5%程度が精一杯だった。この理想と現実の差は日本企業のIT投資への消極性が要因と考えられている。大企業は新しい技術に腰が引けていて、中小企業はIT活用のメリットを理解していない。外資系企業の日本法人トップはこのように本国に説明し、理解を求めていた。「日本はIT投資に限っては発展途上。今後、急成長するのでビジネスを続けましょう」と添えて。

 筆者が編集を担当する「IFRS 国際会計基準フォーラム」での記事を読んでいると、日本企業はいよいよグローバルビジネスへの態度をはっきりとさせることが求められているように感じる。日本独自のやり方に固執し、経済成長が期待できない日本で細々とビジネスを行っていくのか、それともこれまでのやり方を大胆に改めて、真の意味でのグローバル企業となり、世界で成長を追い求めるのか。世界を常に意識している企業はITについても敏感で、そのメリットを最大限に利用しようとIT戦略に頭をひねる。世界最低とも言われる日本企業のIT投資への意欲は、世界3位の経済国家となることで変わるだろうか。

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