世界最先端のスピード[Analysis]

» 2009年09月14日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 9月9日、アイ・ティ・アールがデータウェアハウス用DBMS市場の2008年度市場規模やシェアを発表した。調査によると、同市場規模は前年比20.4%増の約71億円だったという。ベンダ別シェアを見ると、テラデータが圧倒的で78%を占め、続いてネティーザが15.7%、HPが6.3%と続く。

 DWH市場では、前述のテラデータやネティーザなどの専業ベンダに加え、IBMやオラクル、MSの主要RDBMSベンダとの競合が激しくなってきている。MSは2008年にDWHベンダのDATAllegroを買収し、2010年上半期にDWH製品を正式リリースするなど、さらに競争は激化し、2009年度以降も成長が予測されている。一般的にDWHは1つのクエリが扱う件数が通常のDBよりも多いため、DWH用DBMSは設計段階からその点を考慮されているのが特徴だ。また、パフォーマンスを向上させるため、ほとんどのDWH用DBMSがDWH用にカスタマイズしたハードウェアと組み合わせたアプライアンス製品として発売されている。この調査結果でも、市場売上の約9割がアプライアンス製品だった。

 このように不況下でもDWH市場の成長が見込まれている背景には、やはりデータ量の増加や、データの重要性が増していることが一因に挙げられる。従来はデータ取扱量の多い流通・小売業や金融業での利用が中心だったが、現在では通信や製造業での利用も増えている。

 例えば、イオングループは1日1億トランザクションを処理するためにテラデータを導入。UFJニコスは月間3000万件のデータ処理を行うため、取り扱えるデータ量を生データで5テラバイトまで拡大し、同じくテラデータを導入している。一方、ネティーザユーザーである世界最大級の証券会社を運営するNYSEユーロネクストの場合、1日1.5テラバイトのデータを扱い、それを12カ月分(240テラバイト分を100テラバイトに圧縮)を保存・運用しているうえ、その量は年率40〜100%増加しているという。

 そして、NYSEユーロネクストのケースで驚くべきは導入の速さだ。実機テストで実データを流し込んでテストを行い商品選定してから、導入決定後わずか3カ月で本番稼働まで実現したという。また、同社では積極的に新製品もテスト。テストの結果がよければ、順次旧モデルを切り替えていくとした。もちろんROIを考慮したうえでの製品導入だが、日本の製品交換サイクルから考えると信じがたいスピードだ。

 さらに、NYSEユーロネクストでCDO(Chief Data Officer)を努めるスティーブ・ハーシュ氏はこう言い切る。「まだまだ製品に満足したわけではない。いまでも数カ月おきにネティーザ以外の製品で実データによるテストを行い、現在のシステムとのデータ比較を行っている。また、他社の新製品がでればすぐにテストする。もちろん、テスト結果がよければ、すぐにでも現行システムから乗り換えるつもりだ。すでに乗り換えノウハウも蓄積しているので、さらに短時間で移行できるはずだ」。その理由には、「第一にはパフォーマンスの改善だ。エンドユーザーはもちろん、社内アナリストなどは常にデータ分析を行っているが、その作業の効率化はかなりニーズが高い。まだまだユーザー満足度を上げていかなければ競争に勝っていけない。そのために常に最大の努力を行っている」と説明した。

 このようなユーザーがDWHベンダ間の競争を刺激し、業界を成長させているのであり、世界の証券取引を牽引する同社のフットワークの軽さを強く感じた。

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