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@IT > Excel、Accessを“簡単”“廉価”にアップサイジングしよう |
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2005年5月、SQL Serverのラインアップに、廉価なライセンス価格帯を与えられた新エディション「SQL Server 2000 Workgroup Edition(以降、Workgroup Edition)」が追加された。Workgroup Editionがターゲットとするのは、Microsoft Office製品のAccessやExcelでデータ管理を行ってきた小規模システム管理者だ。Access/ExcelユーザーがWorkgroup Editionにアップサイジングする必要性とメリットは何だろうか?
手軽なデータストアの手段として、AccessやExcelは根強い人気を誇る。しかし、マルチユーザー環境でデータを共有したり、業務の拡大によって扱うデータ量が増したりするにつれ、以下のような問題が顕在化してはいないだろうか。
これらは、いずれもAccess/Excelが小規模利用を想定したファイル・ベースのアプリケーションであることから発生する問題だ。 マルチユーザー環境での不満 例えばファイル共有型のAccess/Excelでは、処理内容にかかわらずファイル“全体”をダウンロードしなければならない。これは、ネットワーク負荷が増大する原因となるものだ。そもそもAccess/Excelでは複数ユーザーでの利用を前提としていないから、マルチユーザー環境ではあるユーザーが更新を行っている間はほかのユーザーは更新できない(条件によっては、データの矛盾が発生する)。また、利用ユーザー数の増加によってパフォーマンス低下が起こりやすい。 データ容量増大によるトラブル ファイル・ベースであるが故の制限も多い。昨今では、データベースで画像やPDF文書のようなバイナリ・データを扱うケースも増えており、適用業務の拡大とも相まって、データ・サイズは日々増大する傾向にある。しかし、ファイル・ベースであるということで、容量を2ギガバイト以上に拡張することはできない。対象ファイルのデータ容量が拡大すれば、どこかでファイル自体を分割しなければならないのだ。ファイルを分割すれば、当然ファイル管理は煩雑となり、データを更新するにも対象のテーブル/ワークシートが見つからない、あるいはデータ分析を行うにも複数のデータベース/ワークブックからデータを抽出し、再結合するなどの作業を強いられることにもなりかねない。 バックアップの管理コスト また、ファイル・ベースなので、バックアップ作業をファイル単位で行わなければならない。これは小規模利用での手軽さという意味ではうれしい特性であるが、扱うべきデータ容量が増大したり、ファイルが分散した場合にはどうだろう。バックアップに要する工数は、幾何級数的に増大するはずだ。バックアップに際しては誰も更新を行っていないことを確認しなければならない、という運用上の手間もある。バックアップを行っている間は、データベースの利用をいったん停止しなければならないのだ。これは、多忙なインフォメーション・ワーカーにとってストレスとなるだろう。 セキュリティ対応力が不十分 2005年4月より全面施行された個人情報保護法が、連日ニュースや雑誌の紙面をにぎわせているが、ファイル・コピーによって重要な情報が社外に持ち出されてしまうことを懸念する管理者もいるかもしれない。もちろん、適切なファイル・セキュリティを設定すれば、ある程度は防げる問題かもしれないが、データベースをファイル単位で管理している以上、そのセキュリティ・レベルには限界があるのも確かだ。
これらは、Access/Excelを利用している場合に直面しうる問題の一部にすぎないが、もしこれらの1つでも発生しているならば、SQL Serverへのアップサイジングを検討するべきだ。 SQL Serverはネットワーク利用を前提とした高機能なデータベース・サーバ管理システムだ。マルチユーザー環境を想定したデータ管理を行えるのはもちろん、利用ユーザー数によるパフォーマンスの劣化を最低限に抑えることができる。SQL Serverならば、データベース・サイズの上限も事実上存在しないと考えてよい。バックアップやレプリケーション機能など、重要なデータを保護する機能も完備されている。アクセス制御も、細かなオブジェクト単位で定義することが可能だ。SQL Serverを導入することで、上述したようなAccess/Excelならではの問題はことごとく解決する。 SQL Serverの従来のラインアップは、大規模システム向けの「Enterprise Edition」、中規模システム向けの「Standard Edition」、そしてデベロッパー向けの「MSDE(Microsoft SQL Server Desktop Engine)」であった。初期コストを勘案しても、Enterprise/Standard Editionまでは必要ない、さりとてMSDEでは「データサイズが2ギガバイト以内」「同時スレッドは5個以内」「同時接続数は5ユーザー以内」と使用上の制限も多く、「帯に短しタスキに長し」と感じていた管理者は多かったのではないだろうか。 しかし、そのようなもどかしさも、今回新たに追加された「Workgroup Edition」によって解消される。Workgroup Editionは、従来のラインアップでいえば、Standard EditionとMSDEの中間に位置する製品だ。ライセンス価格帯は9万円台からに抑えられているが、データ変換サービスや管理ウィザード/ユーティリティ、Officeアプリケーションとの連携など、主要機能は遺漏なく実装されており、小規模システムへの適用にはうってつけの製品といえるだろう。
もっとも、アップサイジングと一口にいっても、これを実行するシステム管理者の立場からすれば、なかなかに気が重いところかもしれない。従来の機能や使い勝手はそのままに、いかに確実に、かつ簡単にデータを移行できるか――これはシステム管理者にとっては常に悩みの種である。しかし、心配することなかれ。AccessからSQL Serverへのアップサイジングでは、移行のための有用なツールが用意されている。 Accessからなら「アップサイジング・ウィザード」 Accessが提供する移行ツールは「アップサイジング・ウィザード」だ。アップサイジングを行うに当たっては、移行元の「.mdb」ファイルを用意し、SQL Serverに対して適切なユーザー・アカウントを作成しておくだけでよい。後はAccessからアップサイジング・ウィザードを起動し、ウィザードの指示に従っていくだけだ(図1参照)。
アップサイジングに当たっては、「部分移行」か「全面移行」かを選択する必要があるが、これは用途に従って適宜決定すればよい。部分移行とは、テーブルのみをSQL Serverに移行し、そのほかのオブジェクトはAccessのものを引き続き利用する方式、「全面移行」とはクエリなどのオブジェクトも含めて、SQL Serverに移行する方式をいう。 移行コストを最小限に抑えたい場合には「部分移行」の採用が有利であるが、あくまでテーブルのみの移行であることから、パフォーマンス/セキュリティなどの問題を必ずしも完全には解決しない。データベースのパフォーマンスを最大限に引き出したい、あるいはセキュリティ管理を確実に行いたい場合には、「全面移行」の選択を推奨する。 なお、「全面移行」を行う場合、アップサイジング・ウィザードでは移行できないオブジェクトがあるので注意が必要だ。アップサイジング・ウィザードで移行できなかったオブジェクトについては、必要に応じて手動で移行作業を行う必要がある。手作業で行うべきポイントについては、以下の資料などに詳細な手引きがあるので、参照するとよいだろう。
アップサイジングに利用可能なツールとして、SQL Serverに備えられている「DTS(Data Transformation Service:データ変換サービス)」も忘れることはできない。 DTSは、Access/ExcelなどのOLE DB/ODBC対応のデータソース、SQL Server、Oracle、あるいは、Exchange ServerやActive Directoryのような非リレーショナル・データベースなど、一般的に利用されているほとんどのデータストアとの間でデータのインポート/エクスポートを行うためのツールだ。前出のアップサイジング・ウィザードのように、いわゆる移行に特化したツールではないので、必ずしも移行のための機能を完備しているわけではないが、ExcelやOracleなどAccess以外のデータソースからも移行ができる、DTSオブジェクトモデルを利用することでより細かなデータの制御が可能、データ転送をより高速に行える、などのメリットがある。 DTSはSQL Serverに付属の「Enterprise Manager」から起動する(図2参照)。移行元/先のデータソースと移行対象となるテーブルを選択するだけで、テーブル構造やデータ本体の転送を行うことができる。DTSパッケージを利用することで、移行手順やパラメータをファイルに保存しておき、後から再利用することも可能だ。
なお、DTSとは単体のツールではない。上図でも示したDTSインポート/エクスポート・ウィザードをはじめ、DTSデザイナ、DTSパッケージ実行ユーティリティ、DTSクエリ デザイナなどデータ変換のためのさまざまなツールが含まれる高機能なサービスだ。これらのツールに関する詳細については、以下の記事などが参考になるので、合わせて参照するとよいだろう。
SQL Serverへの移行が無事に完了したら、いよいよ運用局面だ。システム管理者としては、新たな環境でのシステムの使い勝手が気になるところかもしれないが、こちらも心配は無用だ。Accessプロジェクト(「.adp」ファイル)を利用すれば、ユーザー・インターフェイスはAccessデータベースをそのまま使って、SQL Serverのデータベースを運用することが可能だ。Accessプロジェクトの利用方法については、@ITの以下記事が参考になる。
先述したように、Workgroup EditionにはEnterprise Managerのような管理ツールをはじめ、DTS(データ変換サービス)や自動チューニング機能など、小規模のデータベース・システムで必要とされる機能はひととおり実装されている。 Enterprise/Standard Editionから削られている機能は分析/レポーティング・サービスなどだが、AccessやExcelでデータ管理を行ってきたユーザーにとっては、ほとんど支障ないだろう(各エディションにおける機能差については、以下の記事を参照いただきたい)。これだけの機能が、サーバライセンス+5クライアント・アクセス・ライセンスで9万円台から入手できるのは、大きな魅力ではないだろうか。
もちろん、Workgroup Edition導入後に高度な分析/レポーティング機能が必要になった場合にも、Enterprise/Standard Editionへのアップグレードは容易だ。ソフトウェア・アシュアランス(SA)を利用すれば、将来SQL Server 2005 Workgroup Editionへも無償でアップグレードできるし、さらにSQL Server 2005 Standard Editionで提供される「SA Step Upライセンス」を利用して低コストでSQL Server 2005 Standard Editionにエディション・アップグレードすることも可能だ。 また、前述のDTSはOracleやDB2などからの移行にも活用できるため、他社データベース製品ユーザーであってもWorkgroup Edition導入による価格メリットを享受できる。 これだけ環境が整えられているなら、もはやAccess/Excel、あるいは他社製品からWorkgroup Editionへの移行をためらう理由も、次期バージョンのリリースを待つ必要もない。さあ、いますぐWorkgroup Editionへの移行を検討してみてはいかがだろうか。 提供:マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア 営業局 制作:@IT 編集部 掲載内容有効期限:2005年6月16日 |
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