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 @IT > SPSS DIRECTIONS Japan 2007 イベントレポート前編
 
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  11月8日−9日の2日間にわたり、「SPSS Directions Japan 2007」が開催された。従来、この時期には「SPSS Open House」が10年間にわたって行われてきたが、今年より、米国、ヨーロッパでも開催されているワールドワイドなユーザーカンファレンスの名称である「SPSS Directions」を冠したイベントとして、新たなステージを迎えたことになる。

 会場では、産学共同の研究やユーザー事例の発表に加えて、チュートリアル、ハンズオンワークショップ、協賛社のショートプレゼンテーションが開催され、来場したユーザー企業の担当者たちで活況を呈していた。

 本レポートではいくつかのセッションを取り上げ、そのポイントをご紹介する。

日時:2007年11月8日(木)、9日(金)
会場:東京ドームホテル(東京・水道橋)
主催:エス・ピー・エス・エス株式会社

<基調講演> 11月8日(木)10:10−11:10
テーマ:
日本発のマーケティング 
〜日本のマーケティングディレクションを探る〜
講演者:
明治学院大学 経済学部 国際経営学科 教授 清水 聰氏

SPSS Inc. President&CEO
ジャック・ヌーナン

 今回のイベントは、SPSSユーザー会の新たな門出ともいえる記念すべきもので、まずはエス・ピー・エス・エス株式会社 代表取締役のジャック・ヌーナン氏の挨拶によりその幕があがった。

 基調講演で登壇した清水氏は、日本のマーケティング分野も、新たな日本発マーケティングの方向性を探り、日本独自の理論を構築して世界に問うべきだという問題提起をしつつ、清水氏が関わっているユニークな研究の一部を紹介してくれた。

 清水氏によれば、日本におけるマーケティングは、そもそも1955年に米国に渡った日本生産性本部 (現社会経済生産性本部)第1次トップマネジメント視察団により紹介されたものであるという。以来、現在に至るまで、次々と登場する各種マーケティング理論はすべて欧米発であり、ほとんどmade in Japanの理論が登場していないそうだ。ところが、端的な例を挙げると、いまや日本のブログ投稿数は全世界の37%を占め世界第1位(2007年4月の米Technorati調べ)となっており、いつまでも欧米の理論にばかり頼っているのは問題と清水氏は考えているという。

明治学院大学 経済学部 
国際経営学科 教授 清水 聰氏

「欧米に留学された研究者の方々は、日本が決してマーケティング分野でも遅れているわけではないことを現地で実感されているでしょうし、むしろ、消費者情報の収集という点では日本の方が優れているのではないでしょうか」(清水氏)

 もちろん、日本発マーケティング理論の兆しは伺えるという。例えば、現在の日本人の新しい消費者行動プロセスについての仮説として、丸の内ブランドフォーラムの代表、元東京大学教授の片平秀貴氏が提唱する「AIDEES」や、電通の秋山隆平氏が提示した「AISAS®」などがある。

 清水氏は、上記のような日本発の理論が生まれてきた背景として、情報メディアの発達によって、日本人の情報接触のあり方が変化してきていることを示す。清水氏によれば、従来の消費者の情報接触理論には、大きくは「刺激反応型」と「情報処理型」の2つがあった。値引きなどの外部からの刺激に反応して購買に至るのが「刺激反応型」。自分の解決したい問題のために、自分なりに情報を収集・処理して購買を決定するのが「情報処理型」である。

 ところが、今の日本人の情報接触の方法は、この2つの理論ではうまく説明できないという。なぜなら、情報を収集・処理するだけでなく、自ら情報発信する「情報発信型」の消費者や、情報感度が極めて低く、外部からの刺激に反応しにくい層が生まれてきていると想定されるからである。このため、清水氏は、こうした情報接触の格差によって消費者の分類が可能であり、日本発の新たな消費者像を理論的に提示することができる可能性があるという。

 さて、清水氏が、今回提示してくれた新たな消費者像は、「目利き」「聞き耳」「死に神」の3つである。まず、「目利き」とは、情報感度が高い人たちである。ただし、実際の購入者で、ほかの人の購入に影響を与える「インフルエンサー」と呼ばれる人とは異なる。商品を購入する以前に、新商品がヒットするかどうかを的確に予想できる人たちが「目利き」だそうだ。

 清水氏の研究では、こうした情報感度の高い人たちをインターネット上に「目利きパネル」として組織化し、新商品のプレスリリース記事を読んでもらい、その商品の成功度合いを評価、その評価を基に売り上げ予測を行っている。発売後の実売り上げデータで検証すると、目利きでない人と比較して、目利きの人のほうが明らかに新製品の成否を判断できていることが分かったそうだ。

 「聞き耳」とは、清水氏によれば「先端的な保守層」であり、情報感度は高く、好奇心は強いものの、自らは情報発信せず、人の話や出所のはっきりした情報を重視する人たちである。新商品に最初に飛びつくものの、全体に占める比率は小さく、売り上げに対するインパクトが弱い「先端層」だけでなく、こうした人たちが購入し始めた商品は、ユーザー層が拡大し、大きく売り上げが伸びる可能性がある。

 その一方で、「死に神」と名付けられたの人たちが存在する。この層が購入し始めた製品は下り坂になると予測できるというのだ。この層の購買傾向を見極めることができれば、商品の改廃を検討すべきかどうかの意思決定に役立つという。

 清水氏の講演は、ITの進展によって大きく変化する消費行動について、新たな日本発のマーケティング理論が構築できる可能性をはっきりと感じさせる内容だったといえるだろう。

< 特別講演 I >  11月9日(金)14:50−15:50
テーマ:
魅力ある大学とは〜学生調査から教育効果を探る〜
講演者:
同志社大学 社会学部 教授/
同志社大学 教育開発センター所長 山田 礼子氏

 当講演で、山田氏は、2004年から毎年実施している学生調査の概要と、主な調査結果を紹介してくれた。この調査は、「Japan College Student Survey」、略して「JCSS調査」と呼ばれており、調査の目的は次の3項目である。

  • 長期的に複数の機関で継続的に実施できる情緒的側面を重視した学生調査の開発
  • 複数の機関で教育効果を測り、教育改善につなげられる汎用性のある学生調査の開発
  • 魅力ある大学づくりにつながる学生調査と分析手法の開発

 研究の枠組みとしては、「I-E-Oモデル」を採用。Iは「Input」であり、学生の属性や成績など学生自身に関わること、Eは「Environment」で、大学の教育環境のこと、Oは、「Outcome」、すなわち「教育効果」のことである。なお、調査は、この「I-E-Oモデル」を精緻化したものに基づいて行われている。

同志社大学 社会学部 教授/
同志社大学 教育開発センター
所長 山田 礼子氏

「本研究では、学生の学習や発達は、関与の量と質に比例するという『関与理論』に焦点を当てています。つまり、教育政策、教育の実践、教員の学生への関与が、学生自身の学習に対する関与を導き、成果につながるという考え方です」(山田氏)

 山田氏は、2005年のJCSS調査結果について、グラフを示しながら詳しく説明してくれた。当調査は、国公立大3校、私立大5校、合計8校が参加、授業時間中に学生に配布、回収し、回答者数は3961人であった。

 例えば、「教育効果」の1つである「入学後の能力・知識の変化」について、8つの大学間や理系/文系で比較してみると、「古典的教養知(従来から大学の知として認識されていたもの)」は、やはり入学難易度の高い大学ほど優れているという相関が見られたこと、私立より国立、また理系より文系の教育効果が高いことが明らかになっているという。一方、プレゼンテーション、異文化理解能力のような「現代的実践知(グローバルな社会で求められる知)」は、文系が理系よりも優れているという結果が出ている。

 学力や一般教養、読解力などについての、学生自身による「相対的自己評価」を比較すると、数理面では理系が文系を上回り、逆に、読解・文章表現力では文系が理系を上回っている。また、情緒面の特徴である、協調性や他者理解では、国立大学よりも私立大学の自己評価が高いという結果になっている。そして、学生の「価値観」については、社会意識(コミュニティ意識、コミュニティへの貢献)や創作活動(芸術性、精神性を重視)で、文系が理系よりも高いこと、また、組織内での昇進や金を儲けるといった「世俗的成功」については、私立大学3校の学生の希望の高さが顕著であったという。

 大学の教育環境に対する学生の満足度は、全体としては、施設設備に対する満足度が最も高く、次に授業内容が続き、人的交流(大学教育と話す機会や他の学生との相互交流)は低めである。なお、理系は、他の学生との相互交流が文系より低くなっているが、これは研究室の閉じた人間関係が強く、他の研究室との交流の機会が少ないためだと推察されるそうだ。

 山田氏は、大学でどの程度能力や知識を獲得できたかという「教育効果」を規定する要因については、古典的教養知の獲得には、環境要因が重要であること、教育の質と学生交流への満足度も大きな要因となっていること、そして、実は教員の学生に対する関与もさることながら、学生自身が学生生活に適応することが非常に重要であることを示した。

 最後に、山田氏は、今後の課題として、

  • 魅力ある大学づくりへとつなげるための普遍的学生調査の開発
  • 継続的学生調査の実施と大学間比較
  • 効果的な分析手法の開発と普遍化
  • 教育改善につなげるための学生調査の開発、実施、分析、評価というPDCAサイクルの確立

という4つのポイントを挙げて講演を終えた。

< 特別講演 II >  11月9日(金)16:00―17:00
テーマ:
ブログを使ったオピニオンマイニングという新しい可能性
「バズパルス」を使ったブログ分析
講演者:
ニフティ株式会社 ニフティ研究所 所長 友澤 大輔氏

 2007年5月、ニフティ(および富士通グループ)が持つ先端技術で、Web2.0におけるマーケティングを支援するため、ニフティ株式会社内に「ニフティ研究所」が設立された。その所長に就任した友澤氏は、本講演において、まさに最先端の技術を活かした斬新なサービス内容を紹介してくれた。

ニフティ株式会社 ニフティ研究所 所長 友澤 大輔氏

 友澤氏は、まず口コミの影響力が強くなった理由として、「売らんかな」のメッセージが連呼されるマス広告に対する消費者の不信感が、マス広告の効果を低下させている点を挙げた。また、モノ余りの時代、失敗を恐れて無理に買おうとはしないという消費行動の保守化や、商品が複雑化したことによって、他人の経験談や評価に頼る傾向が高まっていること、ネットによる情報検索が日常化し、ブログや製品評価サイトを通じての情報交換が活発化していることが、口コミの影響力が高まったことの背景にあるという。

 こうした口コミというメディア、いわゆる「Consumer Generated Media(CGM)」の中でも大きな影響力を持つのがブログである。ブログは、コメントやトラックバックなどの機能によって、相互につながり合うインタラクティブメディアとして利用者が増大している。友澤氏が示してくれた予測数値(出所:野村総合研究所刊 『これから情報・通信市場で何が起こるのか―IT市場ナビゲーター〈2007年版〉 』)によれば、2006年末現在でブログの書き手は約1000万人、読み手は5000万人、合計で6000万人がブログユーザーであるが、2011年には、書き手が1800万人、読み手8000万人へと伸長、合計すると延べ1億人が触れるメディアになるそうだ。

 友澤氏は、ブログを含むCGMのおかげで、「物言う顧客」が増えたという。従来、企業が捕捉できる顧客の声といえば、コールセンターにわざわざ問い合わせてくる、ごく一部の顧客の声だけであった。しかし、今ではブログなどに、企業や商品に対する意見や感想を書き込む人が増え、そうしたCGM上の「物言う顧客」の声は、それを読んだ「物言わぬ顧客」の行動に大きな影響を与えるようになっている。そこで、企業としては、こうしたCGM上で発信されるユーザーの声を無視することはできず、それらを的確に把握しなくてはならなくなってきた。

 ニフティ研究所では、こうした企業のニーズに応えるために「オピニオンマイニング」を研究/開発している。オピニオンマイニングとは、ネット上のほぼすべてのブログや掲示板を対象として、顧客がそれぞれの場面で書いた自然な意見をほぼリアルタイムで収集/集計するものであり、仮説構築、仮説検証のどちらにも活用できる。

 このオピニオンマイニングには、さまざまな先端技術が採用されているそうだ。例えば、対象となるブログや掲示板からデータを集めてくる「クローリング技術」、スパムブログなどのノイズを排除する「スパム排除技術」、HTMLのタグなど、余分なデータが含まれるブログデータの中から、本文データだけを取り出す「本文抽出技術」、また、抽出した言葉に対して、片平秀貴氏の提唱する消費行動プロセスモデル「AIDEES」に基づいて意味づけする「独自言語解析技術」などである。

「ブログの分析にあたって最大の敵といえるのは、スパムブログです。スパムブログをどのように除去するかが最大の課題です」(友澤氏)

 分析の障害となるため、事前に除去すべきスパムブログには、本文に商品名が並んでいるだけで、アフィリエイト収入を狙う「アフィリエイトリンクブログ」や、キーワードを自動的に組み合わせて本文を生成するため、文章には見えるものの、文章としてはまったく意味をなさない内容で構成されている「自動生成ブログ」などがある。こうした一見して「ノイズ」と判断しにくいブログを除去するには、高度な技術が必要なのだという。

 同研究所のオピニオンマイニングは、「Buss Pulse」という企業向けサービスとして提供されており、その利用目的としては、自社/他社ブランドの評判を監視したり、キャンペーンの効果測定、また自社/他社顧客の特性を深く洞察したり、業界やカテゴリといった大きなトレンドを把握したりすることなどが挙げられる。友澤氏は、同研究所ではブログの内容から書き手の性別や年齢を推定して、ブログデータの分析をより高度なものにするといった、ブログとデータマイニングの融合を図る取り組みにも力を入れていることを強調し、講演を終えた。


提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画/制作:アイティメディア 営業局
掲載内容有効期限:2007年12月27日
 
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