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@IT > SPSS DIRECTIONS Japan 2007 イベントレポート後編 |
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ヴァーレン氏は、近年の技術環境の大きな変化に合わせて、SPSSがどのような技術的革新を進めているかを語ってくれた。
5年ほど前、トム・クルーズが出演した映画「マイノリティ・リポート」では、米国の大手衣料品店の店内にいる主人公が、網膜の虹彩認証で個人が特定され、彼の購買履歴に応じた個別のメッセージが投げかけられる場面があった。当時この未来を象徴するシーンは話題となったが、すでに現実のものになりつつあるとヴァーレン氏は指摘する。 例えば、サンフランシスコの道路脇にある屋外広告は、近づいてくるミニクーパーを個別認識して、パーソナライズされたメッセージを表示する。これは、鍵に埋め込まれた無線チップの信号に反応する仕組みによるものだそうだ。こうしたリアルタイムで個人を特定し、行動を予測し、推奨を行うような仕組みが普及しつつあることの背景には、ヴァーレン氏が「パーフェクトストーム(超大型のハリーケン)」に喩える「大きな変革」をもたらす3つの社会的要因がそろったことがある。 その1つは「数学」である。近年、社会や生活のさまざまな場面で数学的なアプローチが採用されるようになっている。例えば、野球においてもあらゆる記録がデータ化され高度な分析が行われているように。また、研究室でデータ分析を行う捜査官が活躍するテレビドラマが登場しているのもその現われであるという。もう1つは「データ」である。日々、さまざまな種類のデータが大量に生み出されている現状に加え、今後も扱いきれないほどのデータが加速度的に派生すると予測されている。そして、最後の1つは「価値創造」である。これは、ITを活用して価値を生み出すという意味だ。ITインフラを利用して企業にとって意味のある価値を生み出すということが、これまで以上に強く求められているとヴァーレン氏は述べる。 これら3つの要因がそろって発生した大きなトレンド、すなわち「パーフェクトストーム」を制すために、SPSSは次の3つの点で貢献できるとヴァーレン氏は語った。
ヴァーレン氏によれば、Predictive Enterprise(予測分析を活用する企業)においては、顧客のデータを中心に置く。そして、顧客に関わる各種データを分析し、顧客に対する理解を深め、予測を行い、アクション(施策)に反映させる。その施策に対する顧客の反応データは再び分析の対象となる。このサイクルを企業規模で回すために、SPSSが取り組んでいるのが同社製品群の統合であるという。 従来のSPSS製品群は、固有の顧客ニーズに対応した独立した製品で構成されていた。しかし、今後はPredictive Analyticsのためのエンタープライズプラットフォームとして、全製品が一体となって運用できるように統合されていく。その基本思想は「Service Oriented Architecture(SOA)」である。すなわち、各製品をサービス(一連の機能)単位で自由に連携させることが可能となるのだ。 例えば、Clementineのストリームは、企業の共有資産として「Predictive Enterprise Services(PES)」に保存でき、SPSSのシンタックスなどと統合可能である。また、手間のかかる分析業務の自動化が進められているという。具体的には、ある分析業務において最も予測精度の高いモデルが自動的に選択されるようなプログラムが実装可能となっているそうだ。さらに、外部アプリケーションとの連携や、Pythonなどの言語でSPSSユーザーが自ら作成したプログラムをClementineに組み込むことができるなど、極めてオープンなプラットフォームなのだという。 ヴァーレン氏は、Predictive Enterpriseに移行することは、短期で成し遂げられる1回限りのイベントではなく、一定の期間を要する「旅」のようなものだということ、その旅をすでに私たちが始めていることを指摘して、講演を締めくくった。
最初に壇上に上がったシアラー氏は、手作業で種を蒔いていた昔の農業が、今や農業用機械を使った大規模な生産体制に取って変わられたように、あるいは、昔の職人がコツコツと手作りで製品を仕上げていたものから、現代では自動化された工場生産が主流になったように、データ分析を行う担当者は、企業規模の拡大につれて、ますます肥大化する分析業務にどう対応していくべきか、そしてどう革新していくべきかを問いかけた。
このような状況への対応策として、2つのシナリオがあるとシアラー氏は述べる。最初のシナリオは「今までのやり方でうまくいった。これからも同じようにやろう」というものである。しかし、その結果は悲惨な事態を招くことになる。なぜなら、企業の資産として扱うべき分析結果(モデルなど)が整理されず、共有もされず、守られもせず、再利用もされないかもしれないからである。 これまで通り手作業で分析業務が行われると、プロジェクトの数が増加するにつれ、その業務プロセスの信頼性や結果の有効性は揺らぎ始めるだろうと、シアラー氏は指摘する。そして、業務量・規模が拡大し続けると、従来の分析プロセスでは対応が困難になり、分析結果を現場のビジネスプロセスに組み込もうとしても、非常に時間がかかってしまい、二度手間が発生しやすくなるという。
さて、もう1つのシナリオは、コンケル氏が説明してくれた。それは、分析の「オペレーショナルプロセス」を支援する「分析インフラ」を構築する、というシナリオである。 「オペレーショナルプロセス」とは、喩えると料理の「レシピ」のようなものである。料理の作り方が「レシピ」という形で記録されていれば、それに沿って同じ料理を再現できる。同様に、分析業務が「オペレーショナルプロセス」として整備されれば、同じタスクを繰り返すことで経験の蓄積によって生産性が向上し、かつ常に一定の品質の成果が生み出されるようになり、分析業務の大規模化にも対応できる、とコンケル氏は説明してくれた。 このオペレーショナルプロセスを支えるのが「分析インフラ」である。「分析インフラ」は、「SPSS Predictive Enterprise Services(PES)」によって管理される2つの要素、すなわち「Modeling and Analysis」と「Deployment」によって構成される。 コンケル氏によれば、この分析インフラにおいて、会社の資産である貴重な「分析結果」は管理され、そして守られる。そして、この分析インフラ上で、分析から結果を導き、その結果を現場のビジネスプロセスに組み込む「オペレーショショナルプロセス」を繰り返し実行できるため、業務の効率化が図られると同時に、一貫した正確な結果を得ることが可能となるのだという。しかも、この分析インフラを導入することにより、企業の現状に合わせた「オペレーショナルプロセス」を柔軟に構築することができるようになるという。そして、分析結果をより効果的に活用するためのさまざまな機能の統合(例えば、リアルタイムに分析データを扱うことができるUIや分析プロセスの統合など)が可能になるという。 最後に、シアラー氏が再び登壇し、「農業革命や産業革命と同様に、いま、分析の世界では革命が起ころうとしている。これまでの場当たり的な分析から、管理されたプロセスで分析が行われるようになることで、桁違いの効果効用がもたらされるだろう。分析革命の時代へようこそ」という言葉で講演を締めくくった。
ニーツ氏は、企業が「Predicitive Enterprise」へと移行する意義や価値について、技術視点ではなく経営的視点から説明してくれた。そもそも「Predictive Enterprise」には、次の2つの側面があるという。
では、なぜ企業はPredictive Enterpriseへの旅立ちが必要なのか。それは、世界がフラット化し、世界レベルでの競争が起きていること、たくさんの競合商品があふれ、企業と顧客のコミュニケーションが増加していること、こうした中で、優良顧客との関係を構築、維持することが新たな競争力の源泉となっていくからである、とニーツ氏は述べた。
そもそも「顧客との対話」は、対話を通じて相手を理解し、親密さや信頼関係を築こうとするものである。これは、1対1であれば人間同士の対応だけで問題ないが、企業が数百万人の顧客を相手にするような場合は、ITを活用したPredictive Analyticsの手助けが必要となる。 例えば、ニーツ氏が披露した、架空のPredictive Enterprise企業のデモでは、ユーザーの抱える個々の問題点を直ちに把握して、個別の解決策を提案したり、満足度調査では「満足している」と回答しているユーザーであっても、現実には他社に切り替える可能性が高いことを分析結果から事前に予測して、「解約防止」のための施策を展開するといった例が示された。 ニーツ氏は、続けてPredictive Enterpriseへの移行に成功するための鍵を示した。
最後に、ニーツ氏はSPSSが注力する「Predictive Enterprise戦略」について説明し、講演を終えた。
鈴木氏はプレゼンの冒頭で、データ分析によって「顧客の行動」を的確に推測できるという点がSPSSの基本的なアプローチであることを示した。すなわち、どういう人がどのような行動を取ると、顧客になってくれたり、顧客として定着したり、あるいは休眠するのかといった将来の行動は、顧客の過去の行動データを分析することで予測が可能だという。その予測に基づき、効果的な新規顧客獲得のための施策や、休眠・解約防止施策が打ち出せるかどうかという点が極めて重要であるという。 鈴木氏によれば、より深い顧客理解を可能にするためには、従来の分析の対象としていた、顧客属性データや行動データだけでなく、顧客からの「フィードバック(態度データ)」、すなわち、意見や要望、苦情といったフィードバックデータを分析に取り込む必要があるのだそうだ。それらを分析することで、どのような提案や推奨が効果的かを判断することができ、確信を持った施策が行えるというのだ。そして、その施策に対する反応データをさらに分析することによって、施策そのものを改善していくことができるようになる。
続けて、鈴木氏は休眠防止の例を、具体的に説明してくれた。既存顧客の中には、将来なんらかのタイミングで休眠、つまり利用を停止してしまう人がいる。実際にどの顧客が休眠する可能性が高いかは、過去の利用履歴の分析に基づき、個々の顧客別に「休眠スコア」(休眠する可能性を数値化したもの)を算出できる。ただし、休眠の具体的な理由が分からないと、適切な施策が打てない。そこで、「なぜ、休眠するのか」ということを顧客に対するWebアンケートなどからのフィードバックデータ(意見、要望、苦情)として収集し分析を行う。その分析データから、休眠する可能性の高い顧客を休眠する理由別にグルーピングし、それぞれのグループに最適な内容の施策を展開するというわけである。 鈴木氏は、アンケートのフリーアンサーなど、顧客の生の声は、純粋に顧客を理解することにも役立つといい、また、テキストマイニングを活用することでさらに深い知見を得ることができるという。もし、休眠の可能性が高い顧客のグループ毎の特徴を発見できれば、それに基づく具体的な施策を立案することが可能となる。 ここで紹介された事例は、投資信託会社の「T. Rowe Prices」を舞台とした内容であった。同企業は、コールセンターが最も重要な戦略チャネルである。このため、同社のビジネスゴールとしては、コールセンターを活用して、効果的なクロスセリング(電話をかけてきた顧客に最適な商品を推奨するなど)の実現、および解約率の改善を行うと同時に、コールセンター自体の効率化が挙げられていた。ここで適用されたSPSSを用いた顧客分析ソリューションは次の2つであった。
これらの実施成果について、鈴木氏が示してくれたグラフによれば、コールセンターにおける電話の完了率(通話の目的が達成された率)は10%以上改善し、またコールセンターの対応に対する顧客満足度は、Talking Pointを利用した方が、利用しない場合よりも明らかに高いという結果になっていた。 鈴木氏は、EFMに基づくサイクル、すなわちDimentionsを用いたWebアンケートなどから顧客のフィードバックを収集、Clementineによる分析を行い、その結果をPredictive Enterprise Services(PES)で管理し、具体的な施策に結び付け、その反応について再びアンケート調査で把握するという流れの中で、SPSSが豊富なノウハウを提供できることを述べて講演を終えた。 提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画/制作:アイティメディア 営業局 掲載内容有効期限:2007年12月27日 |
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