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@IT > SPSS事例探求 第8回 インテージ編 |
企画、制作:@IT営業企画局 掲載内容有効期限2003年5月9日 |
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「株式会社インテージ」は、1960年国内初のマーケティング・リサーチ会社「社会調査研究所」として誕生した。当時としてはまだ珍しい大型汎用コンピュータを導入し、いわゆる受託計算業務も手がけるなど、「リサーチ」領域だけでなく、「システム」領域においても高度な技術力とノウハウを蓄積してきた企業である。 今回は、SPSS製品のロイヤルユーザーである同社のシステム・ソリューション事業部 企画部 チーフ・マネージャー 都筑佳行氏に取材し、データマイニングを中核としたCRMシステムの構築事例をご紹介する。
インテージでは、2001年12月に、データマイニングを中核としたCRMのトータルソリューションを「INTAGE CRMコンセプトシステム」という名称で体系化している。
このシステムでは、基幹系システムに蓄積されているデータとマーケティングアクションから得られる情報系のデータをデータウェアハウスに一元化し、データマイニングの対象データとしている。特長的なのは、マーケティングアクション履歴を蓄積し、次なるアクションの精度を高めるための情報として活用できるよう設計されている点だ。これにより、CRMの効果を繰り返し高めるのに必要不可欠な「運用サイクル」が実現されている。また、インテージならではのインターネット調査システムや、消費者コミュニティの情報を活用することによって、自社内の情報だけでなく、外部のさまざまな情報を取り込んで、分析を行うことができることも大きな強みとなっている。 こうした、データの収集・蓄積から、クレンジング、分析、施策展開、さらにその結果のフィードバックというトータルな仕組みの中で、新たな知見を生み出す機能である「データマイニング」は最も重要な機能であることはいうまでもない。 都筑氏は、 「“Clementine”は、当社の提案するCRMコンセプトシステムにおいて、重要なツールであることは間違いありません。データのインプットからアウトプットまで、一貫してビジュアルなインターフェイスをもち、使いやすい分析ツールはほかには類を見ないです」 と、全幅の信頼を寄せている。その証拠に、インテージではほぼすべてのSPSS製品を導入済みであり、新人研修においてもSPSS製品を活用するなど、社内にはすでに100名以上のSPSS製品を駆使するデータ分析者を抱えているという。
インテージが手がけたデータマイニング案件の1つに、某旅行関連企業のシステム構築事例がある。一般的に、ホテルやレジャー施設などを運営する旅行関連企業では、常に「稼働率の向上」と「顧客満足度の向上」という、両立の難しい課題を抱えており、インテージが手がけた案件も例外ではなかった。また、某旅行関連企業では、その当時、基幹システムのリプレースの時期を迎えていたため、「リサーチ」と「システム」の両翼をもつインテージは、顧客データを中心に据え、施設利用履歴などを収集・分析、マーケティング施策に展開できる「マーケティング支援システム」を組み込んで、システムを再構築したという。 もちろん、このマーケティング支援システムには“Clementine”が導入されており、インテージは、データ分析作業の一部も担当している。顧客データを分析したり、顧客の個別のニーズに応じてコミュニケーション方法をカスタマイズしている。例えば、DMの送付は「不可」だが、電子メールによるコンタクトは「可」であれば、メールマガジン形式でコンタクトするといった具合に。こうして、某旅行関連企業のシステム構築のみならず、「稼働率の向上」と「顧客満足度の向上」の両立をサポートしているそうだ。 都筑氏は、この事例を取り上げながら、データマイニングにおける基幹系システムと情報系システム連携の重要性について、次のように述べている。
「基幹系システムに存在するデータというのは、実際のところ、そのまま分析に使えるものは意外と少ないものです。これは、データを分析・活用することを想定した設計になっていないからにほかなりません。この事例のように、基幹系と情報系(マーケティング系)のデータを統合できれば、データマイニングというのはさらに効果を発揮します。つまり、企業内にあるデータをすべて分析すれば、より多くの知見が得られますし、その知見を企業全体にフィードバックすれば、より精度の高い意思決定を下すことができ、より大きな投資対効果が得られるはずです。特にCRMシステムのように投資対効果が見えにくいと思われがちなシステムでは、マーケティング部門だけに閉じたデータマイニングではなく、全社的にデータマイニングの効果を得られるような仕組みが必要なのではないでしょうか」
SPSSでは、現在日本語版の開発を急ぐ“SPSS WebApp”の発表を控えている(発売は2003年度内を予定)。この製品は、これまでの“Smart Viewer Web Server(Webブラウザ上で分析結果を閲覧可能にするツール)”による分析結果の閲覧に加え、ユーザーが自由にデータを分析できるブラウザベースの分析環境を構築する開発ツールである。 SPSS WebAppアプリケーションを構築する際には、特殊な知識というのは必要ない。Web記述言語を知っている開発者であれば、容易に分析アプリケーションを開発できる。Webベースのアプリケーションで気になるセキュリティも、認証やSSLプロトコルなどを備え、アプリケーションの安全性を確保している。 SPSS WebAppで構築したアプリケーションは、SPSS Baseとオプションモジュールに含まれるすべての機能を利用できるので、Webブラウザさえあれば誰でも高度な分析が可能となる。しかも、分析機能をカスタマイズすることができるので、役員レベルにはクロス分析まで、現場担当レベルでは多変量解析などのさらに深い分析まで、といった具合にユーザーレベルに応じた機能を提供することが可能である。SPSS
WebAppにより、データ分析は限られた担当者がデータを分析するにとどまらず、全社的な意思決定を支援するための戦略的な取り組みへと進化するはずである。
SPSSは製品開発の過程において、確実な利用ニーズを見極めた上で、ユーザーにテスト版の評価を依頼しているという。そこで得られた評価を実際の製品仕様に反映することで、よりユーザーフレンドリーな製品開発を実現しているのだ。当製品については、現在インテージに英語版による製品評価をお願いしているとのこと。さっそく、都筑氏にこの製品に関する評価を尋ねてみた。
「SPSS WebAppは、アーキテクチャが非常にシンプルである、という点で評価しています。通常、クライアント/サーバ型システムだと、クライアント側にプラグインソフトをインストールする必要があると思うのですが、この製品では、すべてアプリケーションサーバ側で処理するので、クライアント側では、Webブラウザのみで、データにアクセスできるし、SPSSの分析機能が利用できます」 社内に多数の分析者を抱えているインテージではなおのこと、クライアント側の負担が少ないという点にメリットを感じるだろうが、ユーザーインターフェイスという点でも、自分専用の分析環境をいつでもどこでも、Webブラウザのみで利用できる「分析ポータル」というSPSSの開発コンセプトは評価されているようだ。
SPSS WebAppはサーバライセンス型製品として提供されるので、ユーザーは、PC環境に左右されることなく、Webブラウザさえあれば、いつでも、どこでもデータへのアクセスはもとより、データを基に分析・予測を行うことができる。そして、ユーザーごとにカスタマイズされた分析機能が提供されるので、ユーザーはさまざまなデータの分析を行うための「分析ポータル」としての利用が可能だ。もちろん、インテージのように、クライアントに対して、インターネットを介した分析機能を提供する分析ASP(Application Service Provider)を提供するといったことも可能となる。
1999年よりインテージの担当営業として同社への支援を行っているSPSSの増山剛雄氏は、「INTAGE CRMコンセプトシステム」の中でも特に、マーケティング、コミュニケーション施策に対する顧客からのレスポンスデータに着目している。
「レスポンスデータの中には、掲示板などに書き込まれた顧客の意見や要望など、多くのテキストデータが含まれていますが、そうしたデータには、定量的なデータ以上に、ユーザーの嗜好性や隠れた知見が内包されていることがあるので、より分析の精度を高めるためには、テキストデータの分析というのが非常に重要であるはずです」 と、増山氏はテキストマイニングについて話を切り出すと、それに続けて、「SPSSが2002年12月に出荷を開始したテキストマイニングツール“Text Mining for Clementine”を、インテージ様にもぜひご活用いただきたい」と、都筑氏にテキストマイニングの導入検討をすすめた。同製品の詳細については、「“Clementine 7.1”の新機能を一挙に紹介」を参照していただきたい。 一方の都筑氏もテキストマイニングの重要性については、かねてより着目していたようで、“Text Mining for Clementine”がインテージに導入される日もそう遠くはないはずだ。そうなれば、インテージが手がけるデータ分析システムは、また一歩前進するだろう。
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