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@IT > SPSS製品 導入事例探求シリーズ 第18回 スコラ・コンサルト編 |
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社会的評価の高かったはずの優良企業が、実は人命にかかわるような問題を長年隠し続けていた――最近、こうした不祥事が頻発している。そして、こうした不祥事が起こるたびに、その要因として「コミュニケーション不足により情報共有が図られていなかった」といった問題点が指摘されるが、なぜそうなったのかをたどると、実は従業員の行動や判断に影響を与えている「組織風土」そのものに問題があるということが分かってくる。 今回は、この「組織風土」を従業員対象のWebアンケート調査を通じて診断し、組織風土の改革を支援する経営コンサルティング会社、株式会社スコラ・コンサルトの取り組みをご紹介する。取材にご協力いただいたのは、同社プロセスデザイナーの石原正博氏である。
同社は1986年に設立、今年で20周年を迎える。主に「企業風土改革」を専門とする経営コンサルティング会社だが、組織あるところに「風土」は付きものである。このため、クライアントは民間企業だけでなく、地方自治体や学校などをはじめとする公共機関にも及ぶ。この「組織風土」について、石原氏は次のように説明してくれた。
「それぞれの企業=組織には、“ものが言いづらい”“余計な波風は立てない”といった独特の雰囲気や暗黙のルールがあります。これが“組織風土”です。組織風土は、目には見えませんが、従業員の判断や行動に実は大きく影響を与えています」
例えば、風土に問題がある組織に属する従業員は「他人の仕事に口をはさむべきではない」「わざわざ報告しても無駄」と考え、「おかしいと思っていても、言わない」「しなければならないと分かっているのにやらない」といった行動をとってしまう。そして、こうした行動が、人命にかかわる問題を隠蔽するような企業の不祥事につながるのだそうだ。 このような風土の問題は、個人の在り方だけではなく、むしろ上下やヨコの人とのつながりや関係性、マネジメントのあり方、経営に対する信頼感など、組織の人間系の状態に目を向けて変えていく必要がある。そこで、実際にクライアント企業に入りこんで改革を支援するのが、石原氏をはじめとする同社のプロセスデザイナーと呼ばれるコンサルタントだ。同社のプロセスデザイナーは、いわゆる通常の経営コンサルタント」とはスタンスが異なる。
「私たち自身は、こうしなさいと“答え”を与えることはしません。むしろ、クライアント自身が自らの問題を発見し自力で解決策を生み出そうとする、そのプロセスを一緒につくっていくといった方が適切だと思います。そういうことがしやすくなる組織の環境をつくっていくのが私たちの役割なのです」(石原氏)
従来、「従業員意識調査」のような各種調査を行う企業は多い。しかし、こうした調査では、「社員に元気がない」「コミュニケーションが足りない」といった問題は把握できるものの、これらの原因――「なぜ、元気がないのか」や解決策――「どうやったら元気になるのか」についての示唆を与えてはくれない。 同社のアセスメントサービス「組織風土診断」は、組織風土という目に見えないものを、従業員の問題意識を定量的に把握することで見えるようにすることを目的としている。そして、企業が抱える問題の背景にある組織風土だけでなく、その組織風土そのものを生み出している「組織のあり方」についてもさまざまな切り口で調べることで、問題の根本原因と解決策の仮説を立てやすくし、組織風土をより効果的に改革することができるように設計しているのだという。 では、「組織風土診断」を具体的に見ていこう。まず、現状の「組織のあり方」を次の4つの側面(図1)から把握する。この4つの側面とは、同社の定義する「組織」、つまり社員一人ひとり=【個人】、互いに協力し合うといった【個と個の関係性】、それらのリソースを【マネジメント】しながら【目的】を実現していくためのシステム、を構成する4要素である。
「組織とは、そもそも一人ではできないことをみんなで力を合わせて達成するためのものです。したがって、組織づくりは、まず同じ思い(目的)を共有できる仲間を集めることから始まり、お互いの関係を構築していきます。さらに、個々人は、組織の中でのそれぞれの役割を自律的に果たしていくことが求められます。そして、企業規模が大きくなってくると、組織全体が目的から外れないように適切なディレクションを行う“マネジメント”の重要性が増してくるのです」(石原氏) これら4つの要素は、図2のとおり、それぞれがさらに5つの要素に細分化されている。「組織風土診断」はこの枠組みに基づいて、60の設問と自由回答で構成されたアンケート調査をクライアント企業の従業員を対象に実施するものである。アンケート調査は、無記名式で、所要時間は15分程度だという。
「組織風土診断」は、過去は紙ベースの調査票を用いて実施されてきた。しかし、昨年同社は、診断の内容の見直しを行うにあたり、データの回収システムの改善にも着手。Web上でのアンケートの設計、公開、回答、レポーティングが可能となる「SPSS Dimensions」の導入に踏み切ったという。 以前の紙ベースのアンケートの場合、まずクライアント企業に調査票の束を持ち込み、1週間程度の回答期間を設けて対象となる従業員にアンケート記入を依頼していた。そして、調査票を回収したあと、回答データをデジタル化し、ようやく集計・分析作業に取り掛かることができた。石原氏によれば、こうした調査方法では、調査票回収後〜レポート納品までに約1カ月〜1カ月半を要していたという。
しかし、「SPSS Dimensions」導入後の現在は、アンケート対象となる従業員に対して、Webサーバ上のアンケートページのURLとパスワードを通知するだけでよく、すぐにアンケート調査を開始することができる。しかも、アンケートの回答データは当然のことながらデジタルデータとして蓄積されるため、回答期限後、約1週間もあれば調査結果の「速報」をクライアントに納品することができるようになったという。いうまでもなく最終的な調査結果レポートの納期も大幅に短縮されるというわけだ。アンケート調査を紙ベースからWebベースに切り替えたことで、大幅な業務の効率化が実現し、同時に納期短縮というサービス向上も実現している。
石原氏は、「SPSS Dimensions」を選択した理由を次のように語る。
「機能や使い勝手という面でいえば、特にほかのソフトとの決定的な違いというのはなかったのですが、やはりトータルなコスト面での優位性と、何よりすでに活用していたSPSSの解析ソフトとの親和性が高いことが導入の決め手となりました」(石原氏) 実際、「SPSS Dimensions」は、「SPSS14」との連携強化により、収集したデータを値ラベルの再設定をすることなく、読み込むことができる。すなわち、データ分析の際欠かすことのできない生データのクレンジング処理など手間の掛かる作業が、「SPSS Dimensions」と「SPSS14」との組み合わせだと不要になる。
石原氏によれば、Webアンケートになったことで自由回答の記述が増えたという。紙ベースの調査票では、そもそもあまり自由回答欄に記入する回答者が少なく、また書いてある文章も短めであった。しかし、WebアンケートになってからはPCで簡単に入力できるためか、例えば、ある調査では、600件の回収調査票の半数以上に自由回答の記入があり、かつ、長文が多かったという。 石原氏にとっては、こうした自由回答の解析は、今後の取り組み課題という認識に止まっているようだったが、SPSSからは新たにテキストマイニングに特化した製品の投入予定があることが告げられた。アンケートに含まれる自由回答のような、大規模でないテキストデータの解析を行うことのできる新製品を来春に投入する予定だという(英語版はすでにリリース済み)。この製品はほかのこれまでのText Mining for Clementineのようなプラグイン製品ではなく、スタンドアローンで利用できるため、単体での導入も可能だ。
石原氏に将来的な展望を伺ってみたところ、将来的な構想として「組織風土」そのものの価値を指標化する可能性を探っているとの答えが返ってきた。 企業の価値は一般には目に見える「財務的な指標」で測定されている。しかし、どんなに財務的に価値が高い企業であったとしても、昨今のような不祥事が発生する。そこで、同社の「組織風土診断」であらかじめ企業の「組織風土」を測定し、その価値を指標化しておけば、企業の価値を多面的に評価し、より的確に把握できるのではないか、と考えているのだという。企業活動に大きな影響を与えるであろう「組織風土」の価値が指標化されれば、企業活動の将来性が織り込まれている「株価」との相性も良さそうである。 現時点で「SPSS Dimensions」を活用しているのは石原氏のみだが、石原氏自身は今後マニュアルを整備して社内ユーザーを増やしていきたい、と考えているそうだ。 一方、SPSSでは、この秋以降「SPSS Dimensions」の日本語セミナーを拡充するなど、ユーザーのサポート体制を順次整えているという。調査票の作成から収集/分析、結果の展開までトータルにサポートするサーベイ総合プラットフォーム「SPSS Dimensions」の展開は、今後目を離せないものになるだろう。
提供:エス・ピー・エス・エス株式会社
企画/制作:アイティメディア 営業局 掲載内容有効期限:2006年10月26日 |
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