「Windows Server 2025 」の登場でNECのPCサーバ「Express5800シリーズ」は、これから企業のITインフラをどう支えるのか。PCサーバを手掛けて30年になるNECの担当者にWindows Server 2025 のポイントを聞いた。
クラウドサービスの利用拡大、データ量の増大、働き方の多様化といったIT環境の変化に伴い、PCサーバに求められる役割も大きく変化している。そうした中、Microsoftが新しいサーバOS「Windows Server 2025 」を2024年11月4日にリリースした。Windows Server 2025 では、ハイブリッドクラウドとの連携強化やGPU(Graphics Processing Unit)仮想化機能の追加、より強固なセキュリティ対策などの多数の新機能が盛り込まれている。これまで多くの企業のIT環境を支えてきたWindows Serverは、今後のIT活用や運用をどのように支えていくのだろうか。
30年前からWindows Serverを搭載するPCサーバ「Express5800シリーズ」を提供し、品質に厳しい日本の顧客のさまざまな要望に応えてきたNECに話を聞いた。
1994年12月に発売が開始されたNECのExpress5800シリーズは、市場の変化やニーズをいち早く取り入れ、製品を継続的に強化することで、常に顧客に新たな価値を提供してきた。2001年5月に「ft(フォールトトレラント)サーバ」を出荷し、同年10月には問い合わせ窓口「ファーストコンタクトセンター」を開設。2002年にはNEC直営の企業向けショッピングサイト「NEC得選街」をオープンしている。
2020年には世の中のサービス化に対する要望を実現すべく、Express5800サーバを用いたクラウド型のICTインフラ運用サービス「NEC ICT Management Service and Technology」の提供を開始。ICTインフラの運用自動化によって、IT部門の運用負荷軽減や工数削減、運用業務の効率化を支援している。2023年11月には、Express5800サーバ本体を月額サービスでクラウドサービスのように提供する従量課金サービスも開始した。
「Express5800シリーズは、山梨県甲府市にあるNECプラットフォームズでの国内生産にこだわり、お客さまに喜んでもらえる『ベタープロダクツ、ベターサービス』の提供を心掛けています。安定した品質チェック体制では、メインフレームレベルの厳しいチェックをExpress5800シリーズでも実施し、部材レベルでの品質を確保して、日本全国をカバーする336拠点(2024年3月末時点)で保守サービスを提供しています」。こう話すのは、インフラ・テクノロジーサービス事業部門の柵木秀俊氏(コンピュート統括部 サーバマーケティンググループ プロフェッショナル)だ。
Express5800シリーズは、「生産スピード短縮」「環境」「品質向上」という3つの取り組みを重視してきた。例えば、生産スピード短縮への取り組みでは、トヨタ生産方式をNEC流に進化させ、最短4営業日(東京近郊)での納品を実現。環境への取り組みでは、省電力部品を積極的に採用したり、梱包部材に再生紙を使ったりしている。
柵木氏は、「多くのお客さまに新たな価値を提供してきた結果として、2016年にはExpress5800シリーズの累計出荷台数が200万台を超え、2023年3月現在では累計出荷台数が280万台に到達しています」と話す。
NECが提供するExpress5800シリーズの「スリムサーバ」は2004年7月、静音性の高い「水冷サーバ」は同年10月に提供が開始された。2008年にはスリムサーバと水冷サーバを組み合わせた「水冷式スリムサーバ」を発売している。さらに2016年1月には環境に配慮し、動作環境温度の上限を従来の40度から45度にまで拡大した「45度対応サーバ」を発表。2017年にはスリムサーバを拡張し、停電や瞬断にも対応できる「UPS内蔵スリムサーバ」を発表している。
「2000年以前のPCサーバは、サーバルームに設置されることが当たり前でした。2000年以降は、低価格PCサーバの台頭により、オフィス内に設置されることも多くなりましたが、日本のオフィスは狭く、賃料も高いため、コンパクトなサーバが求められていました。また、オフィスだけではなく、図書館や病院、教育機関などへの設置が想定されることから、静音性も必要でした。こうしたお客さまの要望に応えるべく、2004年にコンパクトなスリムサーバと静音性に優れた水冷サーバが登場しました」(柵木氏)
スリムサーバの特長は、大きく以下の3つになる。
横幅はほぼ名刺サイズの98ミリとかなりコンパクト。デスクトップPCサイズほどのサーバで、縦置き、横置きはもちろん、アダプターを付けることで19インチラックに搭載することも可能だ。コンパクトな筐体(きょうたい)に、サーバに求められる機能全てを搭載している。
図書館や病院、教育機関など、騒音が気になる場所でも安心して設置が可能。サーバ内の冷却ファンについて配置場所の設計を見直し、ファン数も減らして、パフォーマンスを維持しながら回転数を抑制することで静音性を高めている。具体的には、Express5800/T110m-S(空冷)が24.7デシベル(木の葉が触れ合う音)で、Express5800/T110mが30.7デシベル(ささやき声)を実現している。
コンパクトな筐体でありながら、8コアの「インテル Xeon Eプロセッサー」、最大128GBのメモリを搭載可能で、4つのPCIスロットを装備。2.5型ディスクを最大6本収納可能で、DVDドライブやバックアップ装置である内蔵RDXドライブ、バッテリーも搭載できる。オプションの防塵(じん)フィルターで、ちりやほこりなどが舞う劣悪な環境でも利用できる。
NECは、30年前からMicrosoftとの密な連携により、Windows Serverを安心して利用できるExpress5800シリーズを開発してきた。Microsoftの本社がある米国ワシントン州レドモンドに「レドモンドテクノロジーセンター(RTC)」を開設し、Microsoftと共同でWindows Serverの開発や評価に取り組んでいる。Windowsは、当初はクライアントOSだったことから、サーバで活用するためには、より高い品質や信頼性が求められる。そこでNECの持つエンタープライズでの経験や実績、ノウハウを生かした共同開発が進められている。
例えば、「カーネルダンプ」機能の開発(Windows 2000 Serverで搭載)や高スペックサーバへの対応、CPUやメモリなどを動的に変更する「ダイナミックパーティショニング」機能(Windows Server 2008で搭載)など、現在では当たり前となっている機能の開発にNECの知見が取り込まれている。また、品質向上として、バグフィックスや機能改善の提案など、常に他社よりも高水準のフィードバックを実施してきた自負もNECにはあるという。さらにサポート体制として、Microsoftとの協業により「メインストリーム5年+延長5年」の10年サポートを実現している実績がある。
クラウド・マネージドサービス事業部門の西田武史氏(クラウドソフトウェア統括部 クラウドソフトウェア販売推進グループ 主任)は、「現在もRTCにはNECの開発メンバーが常駐しており、Microsoftと共同開発を進めるとともに、迅速かつ的確なサポートを提供するための体制を確立しています。サポートに関しては、日本国内にもOSのリソース解析を行う専任部隊を有しており、緊急性の高い高度な問い合わせや要望にも対応できます。品質やサポートの向上に関しては、サーバとOSの両面から保証することが必要です。以前、Windows Serverに含まれる特定の機能が社内の品質基準に満たないことがあり、他社は販売を開始していたのですが、NECではMicrosoftにその機能の修正を依頼し、修正が確認できるまで出荷を遅らせたこともありました」と話す。
現在、MicrosoftからWindows Server 2025 の正式版がリリースされ、誰でも使える状態になっているが、NECでは引き続き厳しい評価を行っていく計画だ。西田氏は、「日本のお客さまは、グローバルと比較しても品質に対する要求が厳しく、そのお客さまが満足するサポートを提供しているNECに対し、Microsoftからは強い信頼を得ています。たとえNEC内で厳しい品質評価を実施していても、お客さまの環境で問題が発生することもありますので、その場合は適切なサポートも提供します。今後もNECは、長年培ってきたサポートサービスの経験やノウハウを生かし、お客さまの問題に対し迅速かつ丁寧に、根気強く対応していきます」と話す。
NECは2024年6月に、販売パートナー向けに「Express5800認知度・利用度調査」を実施。ITインフラの提案内容に関する調査では、オンプレミスのみの提案が約46%減ったと報告されている。一方、仮想化やプライベートクラウド、ランサムウェア対策、事業継続対策(BCP)、従量課金/サブスクリプションなどの提案は増加傾向にあるという。現在、ハードウェアだけの提案は難しく、複数製品を組み合わせたソリューションの提案が必要。また、テーマに基づく提案がトレンドとなっている。
インフラ・テクノロジーサービス事業部門の諏訪凪沙氏(コンピュート統括部 サーバソリューション販売推進グループ 担当)は、「例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革の推進によるファイルサーバ容量逼迫(ひっぱく)の解決策として、クラウドとオンプレミスを連携したハイブリッドなファイルサーバを組み合わせたソリューションを提案します。MicrosoftのAzureとファイルサーバを組み合わせたソリューションでは、既存のオンプレミスの利用環境はそのままに、クラウドのスモールスタートで必要に応じて拡張できることもメリットです」と話す。
シンクライアントソリューションも注目の提案の一つだ。コロナ禍以降、テレワークやWeb会議の機会が増え、いつでも、どこでも仕事ができる仕組みの実現が注目されている。しかし、サーバに対するWeb会議の負荷は高く、カメラ画像や音声が途切れるだけでなく、他の処理にまで影響を及ぼすことが課題となっている。
諏訪氏は、「仮想化技術や高速化技術に関して、CPUやメモリ、ディスクは従来のコンポーネントを利用できるものの、グラフィックスに関しては性能の問題で快適なシンクライアント環境を構築できません。仮想GPU環境を利用することで、グラフィックスの処理問題を解消することが可能です。実際に利用してみてサクサク動くということを誰もが感じられることが仮想GPUのメリットです」と話す。
NECでは、すでに仮想PC型シンクライアントシステム「VirtualPCCenter」を提供しているが、これを仮想GPUに対応した新しい基盤ソフトウェアとして提供する計画だ。仮想GPUを効果的に利用できる「GPUパーティショニング」機能がWindows Server 2025 に新たに搭載されたことから、NECはこれを活用した新しいシンクライアントソリューションを開発中とのことだ。
「ハードウェアとOSをしっかりと評価してリリースするというNECの文化は、ソリューションになったいまも変わりません。サーバの寿命は5年程度なので、刷新時にOSも切り替えることになります。Express5800シリーズでは、オンプレミスの提案はもちろん、仮想化やクラウド化、セキュリティ対策、BCP対策など、安心して切り替えてもらうためのソリューションも提供しています。ITインフラ導入、刷新のお悩みは、ぜひNECにご相談ください」(西田氏)
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