さまざまなプロジェクトで、組み込みソフトウェアの下回り領域の技術を着実に身に付けてきたオムロン エキスパートエンジニアリングのS氏。開発歴25年の経験に裏打ちされた自信を持つエンジニアです。同社のビジョンである「生涯、エンジニア。」を体現するS氏がどのようにキャリアを切り開き、今後どのような技術にチャレンジしようとしているのか、語っていただきました。
2024年4月からの半年間は、11月から始まるプロジェクトに関連する仕様書を読み進めてきました。CPUやOS、コントローラーなどの仕様で、全部で5000〜6000ページくらいになるでしょうか。こうした仕様書を読むのが好きで「なるほど、こういう仕組みなのか」と、だんだん分かっていく過程が楽しいんです。この半年間も、知識量が増えていくことを実感できました。
自分の中に技術の引き出しが増えていくことは、エンジニアの醍醐味(だいごみ)ですよね。お客さまとの会話も、開発プロジェクトの最初の時期には難しいこともありますが、仕様書を読んで関連する技術書を熟読していくことで、建設的な会話になりますし、仕事がより楽しくなります。
派遣先では現在、NANDデバイスのファームウェア開発をしています。職場にはとても高い技術スキルを保有している方もいて、そうした方の知識や経験から刺激を受けています。最新の通信規格、それを取り巻く最新ドライバの調査など、業務を通じて最先端の技術に関する知見を積むこともできています。駅から近くのきれいなオフィスでありがたいですし、何より技術書がたくさん置いてある点もうれしいです。日本語訳が出る前の英語原書も多数あります。
休日は、技術書がある大きな書店によく行きます。私にとっての幸せ空間です(笑)。なかなか高価なものが多いので気軽には買えないのですが、会社の書籍購入補助制度も活用しながら、常に新しい知識を入れるようにしています。エンジニアとして大事なことは「知識・技術・経験」の3つですからね。常に自分の知らない、新しい知識や技術を得ることを怠らず、楽しむようにしています。
私の2つ横の席には、2024年度にオムロン エキスパートエンジニアリング(以下、OEG)に新卒入社した方が座っているのですが、とにかく楽しそうに仕事をしていて、見ていてうれしくなります。業務外で技術の会話などもしますが、つい最近は「Git」というバージョン管理ツールの話題が出たので、Linux創始者のリーナス氏がこのツールを作った時の話をしてみたら興味深く聞いてくれました。若い人には、技術にまつわるさまざまな情報を取り入れることに興味を持ってもらえたら、と思っています。
私がOEGに入社したのは2020年です。前職は大手メーカーの子会社で、自社製品も開発している会社でしたが、私はむしろグループ会社によく出向し、さまざまなプロジェクトに関わりました。いろいろな経験ができて楽しかったのですが、ある時点で経営が変わり、エンジニアファーストではなく営業ファーストな会社に変わってしまったのを機に転職活動を始めました。
OEGの面接は他の会社とは全く違い、ある意味衝撃的でした。職歴は聞いてくださいましたがサラッとで、とにかく技術の話に終始していたんです。その時は確かboot loaderの話でまず盛り上がったんですよね。「この開発ではこの種類のboot loaderを使って……」「なぜならこういう背景があるから……」「逆にこの種類のものを入れたらどうなるか……」といったふうに。とにかく楽しかったです。
「こういう話ができる人がいる会社は、絶対に良い会社だ」と思いました。OEGは「生涯、エンジニア。」というビジョンを掲げていますが、言葉倒れしていないな、と。その後は、通り一遍の質問をされる他社の面接がつまらなく感じてしまい、他の全ての選考を断ってOEGに入社しました。
その時に面接してくれた方が今の私の上司で、関東エリアのユニットマネジャーです。会社の制度で四半期ごとに面談する機会があるのですが、自己啓発でどんなことをやったらいいかなども相談したりしています。最近では、自分自身がこれまで携わってきたこと、学んできたことの集大成になるようなチャレンジをしたいと思い、Linuxカーネルのソースコードを解析しました。「おお、全部解析したんだねぇ」と、ニコニコして見てくれました。
派遣という就業形態についてですが、現場での働き方はプロパーと変わりはないと思います。ただ、自社製品だけにずっと携わっているよりも、外に出ていろいろな技術を習得した方が、確実に技術力は向上するでしょう。メーカーなどで自社製品にずっと関われば、その製品に関連する技術分野の知識は深くなりますが、広い目で技術が見られなくなってしまうのではないか──と私は思います。
一方で、派遣のようにさまざまなプロジェクトに関わる就業形態の場合は、新たな技術を派遣先で懸命に学びます。いろいろな製品開発のプロジェクトで、それぞれの特性や機能、開発環境に合わせて使用する技術を身に付けることができますから。一つ一つのプロジェクトが完了すると、新たに知識や技術を得ることができたと実感できます。この積み重ねが大事ですね。
組み込みの下回りには、OSとCPU、boot loader、ハードの各階層の中でさまざまな技術があります。これまで私が意識してきたのは、その中で一つ一つ違う技術を経験し、対応できる開発範囲を広げていくことです。私も25年ほど組み込み開発に携わってきましたが、20年目くらいで、下回り領域では大体のことを網羅したなという感覚を得ることができました。
エンジニアにとって大切なのは、現場ではスピードです。ただ、仕事以外では情報が大切だと思っています。何が今後生きてくるか分からないので、情報に関してはいろいろな分野を幅広く取り入れることが大事だと考えています。私は、さまざまな情報を取り入れ、大局的に、この先有用な技術なのかどうかを判断しています。情報に関しては「視野を広く、視点は高く」です。
今、私が興味を持っているのは「Rust」という新しい言語です。これまでの言語とは毛色が異なり特殊な書き方で、バグを発生させないよう言語自体で防ぐことができる言語です。LinuxカーネルにRustが採用されたので、組み込み案件でRustを使う案件も今後出てくるでしょうから、もし出てきたらやってみたいなと思っています。
当たり前のことではありますが、技術に終わりはありません。無限に学ぶことがあるから、楽しいしワクワクするんです。私はOEGが掲げる「生涯、エンジニア。」とは「自分が満足し、納得がいくまでエンジニアとして働けること」だと思っています。技術の習得はとても楽しい。もしエンジニアになろうかどうか迷っている人がいたら、ぜひ一度チャレンジしてもらいたいですね。
※本稿は、オムロン エキスパートエンジニアリングからの寄稿記事を再構成したものです。
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