生成 AIの急速な浸透を受けて、AIモデルをアプリケーションに組み込み、本番稼働させる企業が増えている。競争力を高めるためには、生成 AIを自社ビジネスに適用させる活用の高度化が急務だ。その仕組みと体制作りにおいて、エンジニアには何が求められるのか。
2025年3月6日、生成 AI(人工知能)とデータを中心テーマに据えた「AWS Innovate: Generative AI + Data」が開催される。AWS Innovateは、Amazon Web Services(AWS)のサービスを活用してビジネス革新を目指す全てのITリーダーおよびITプロフェッショナル、エンジニア、開発者を対象とした、最新情報や導入手法を提供するオンラインカンファレンスだ。今回のAWS Innovateは、生成 AI活用を通じてビジネス価値創出を狙うエンジニア向けのイベントとなっている。
2024年2月にはAIと機械学習、データをテーマに開催されたが、1年を経て、AIの活用シーンは大きく広がった。特に生成 AIはさまざまなアプリケーションに組み込まれ、業務改善や自社ビジネスの加速、顧客向けサービスの拡充など適用領域が拡大し続けている。2024年のPoC(概念実証)のフェーズを経て「自社ビジネスで生成 AIシステムを長く活用するためには、適切なAIモデルを選択してビジネス要件に沿ったアプリケーションに組み込むことが重要になる」と気付く企業が増加した。
アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS Japan)の安田俊彦氏(常務執行役員 サービス&テクノロジー事業統括本部 統括本部長)は、「生成 AIに取り組むエンジニアのスタンスも変わりつつある」と話す。
「従来は、エンジニアも生成 AIという新しいテクノロジーを触って可能性を実感していたフェーズでしたが、今は自社ビジネスへの適用を進め、その成果が出始めています。これを受けて、エンジニアも『自身の業務を効率化する』フェーズから『エンドユーザーに価値を提供するために使う』フェーズに変化しつつあります。生成 AIと関連技術によって価値提供のアジリティも増し、エンジニアとビジネスの距離がより近づいています」(安田氏)
そうした中で開催される今回のAWS Innovateの狙いについて、AWS Japanの金杉有見子氏(サービス & テクノロジー事業統括本部 AI ソリューション部 部長)はこう話す。
「さまざまな生成 AIの活用方法が存在する中で、長期的に生成 AIがもたらす価値を最大化するためには、ビジネス要件に沿って適切な手法やモデルを選択することが重要になります。生成 AIをはじめとする最新テクノロジーを効率良くキャッチアップしてほしいというのが私たちの思いです。単なる製品やサービスの紹介ではなく、ユースケースや課題を基に、どのサービスをどう活用できるのか、実践手法を多数紹介します。業務に役立てられる実践的なノウハウ、知見をぜひ持ち帰っていただければと思います」(金杉氏)
ただ、生成 AIを自社ビジネスに適用して成果を獲得する上では複数の課題がある。エンジニアにとっては具体的に何が課題になるのか。安田氏は「ビジネス」「テクノロジー」「人」の観点から指摘する。
「まず『ビジネス』の観点では、多くの企業が生成 AIに大きな可能性があると確信し、PoCなどでビジネス価値があることも確認しています。一方で、どう適用領域を広げるかについては模索している企業も多い状況です。エンジニアは自社ビジネスに対する一定の理解に基づき、生成 AIを適用できる新たなユースケースを常に見いだし続けることが求められます」
本番活用を見据えたフェーズになると、「テクノロジー」面の課題が発生するケースがある。まずはビジネスに適用する以上、生成 AIが抱えるリスクを抑制し、安全性を確保しなければならない。「ハルシネーションなどによって予期しない結果が出た際にどうコントロールするのかといった課題です。生成 AIをビジネスに使うためには、その利便性と適切な管理、コントロールを両立させることが求められます」(安田氏)
もちろん、問題は守りの側面だけではない。価値を最大化するためには、データを鮮度の高い状態で素早く生成 AIアプリケーションに組み込ませる必要がある。しかし「多くの場合、企業内のデータはサイロ化しているため、統合して活用するにも作業が煩雑となり、工数、コストがかかりがち」(金杉氏)という現実がある。
本番環境での利用増に伴い、肥大化するモデルの利用コストをどう最適化するかという課題もある。「モデルは進化し続けていますし、今後も大小さまざまなモデルが登場するでしょう。ビジネス環境が変わり続ける中、活用目的やコスト要件に応じて、最適なモデルを選んで使い分けたり、自社ビジネスに特化したモデルを構築したりすることが求められます。なおかつ、一度作ったら終わりではなく、状況に応じてモデルを選び直すなど、常に最適化し続けることも必要です」(安田氏)
このためには、モデルをいかに迅速にアプリケーションに組み込み、展開するかという観点も忘れてはならない。ユーザーにいち早く価値を届け、ビジネスにインパクトを与えるためには、ソフトウェア開発ライフサイクル全般における一層の効率化が求められる。
最後に「人」の観点では、前述のビジネス要件に応え、進化し続けるテクノロジーを生かすノウハウやスキルをどのように身に付けるかが課題になる。「モデルの構築、自社ビジネスに適用するためのカスタマイズには多くの知識、ノウハウが求められます。アプリケーションに組み込む場合は、AIだけではなく、データやMLOpsに関する知識、スキルも欠かせません」(安田氏)
こうした課題解決を支援するのが今回のAWS Innovateだ。具体的には3つのトラック“生成 AIジャーニー”“ビジネスに寄与するデータ活用”“生成 AIアプリケーション開発”で構成される。
まず「ビジネス」における課題については、“生成 AIジャーニー”トラックで「自社に適用できるユースケース」を見つけやすくなる。具体的には、AWSの日本における生成 AI本番導入事例から、特に新規サービスに適用した事例を紹介するセッション「100以上の生成 AI事例に見るビジネス変革の方程式」や、ユーザー企業による4つの事例セッションで構成される。三菱重工業、カラクリ、三菱UFJ銀行、ゲームエイトが登壇し、各企業が生成 AIをどうビジネスに適用しているかを詳細につかむことができる。
「テクノロジー」の課題を解決するためには、さまざまなソリューションから自社の要件に最適なものを選択、活用する必要がある。AWSの強みは「生成 AIを活用するための環境を包括的に提供できる点にある」という。具体的には、コンピュート、ストレージ、データベース、データ分析エンジン、データパイプライン、学習と推論をサポートするインフラ、モデルにアクセスするためのAPI、それらを統合管理できるユーザーインタフェースなどだ。こうした各サービスを、具体的な課題に基づいて紹介するのが“ビジネスに寄与するデータ活用”“生成 AIアプリケーション開発”トラックだ。
“ビジネスに寄与するデータ活用”では、その価値を最大化するために不可欠な「生成 AIとデータのインテグレーション」を戦略的に進めるための方法、サービス、最新情報を紹介する。
「生成 AIアプリケーションにデータを組み込むことによって、精度を向上させたり、不適切な回答を抑制させたりするなどの効果が期待できます。そのためにはデータが最適な形で整備され、正しく利用できる状態でないといけません。AWS Innovateのテーマとして『AI + Data』を掲げたのも、生成 AIとデータを密接な関わりの中で取り扱うことを重視しているためです」(金杉氏)
生成 AI+データの重要性は、生成 AIのプラットフォームとデータ解析のプラットフォームを融合して統合的に扱う「次世代 Amazon SageMaker」を紹介するセッションでも確認できる。データサイロを解消するには、データレイクとデータウェアハウスを統合した「Amazon SageMaker Lakehouse」を紹介するセッションが参考になるという。
“生成 AIアプリケーション開発”トラックでは、要件に応じたツールを選択し、効率良く開発する方法を解説する。特に、複数のAIモデルを利用する際に注目のセッションが、「Amazon Bedrockを用いた生成 AI活用時のコスト最適化」だ。「『Amazon Bedrock』で、さまざまなモデルを選択し、適切なガードレールを設定して、安全にモデルを使い分けることが可能になります。モデルをカスタマイズし、自社ビジネスに特化したアプリケーションに組み込むまでを一気通貫で支援します。本セッションではそうした利便性を具体的に理解いただけます」(安田氏)
「加えて、注目されているAIエージェントのセッションも用意しています。エージェントの仕組み、導入ステップ、スケールさせる際の課題、そしてそれらに対応するAmazon Bedrock Agentsの詳細について紹介します。エージェントに関心をお持ちの方には有意義なセッションになると考えています」(金杉氏)
ソフトウェア開発ライフサイクル全般を効率化するために見ておきたいのが、開発者向けAIアシスタント「Amazon Q Developer」を紹介するセッションだ。Amazon Q Developerはコード提案のみならず、ユニットテストの自動生成、自動コードレビュー、ドキュメントの生成など複雑なタスクまでを効率化する。
ノウハウや知識を拡充したいという「人」に関する課題解決には、スキルアップを支援するAWS Innovateに参加することが近道になるだろう。
こうしたビジネス、テクノロジー、人という課題に対して一貫して支援することに取り組んできたAWSは、AWS Innovateを通じ、課題解決に悩むエンジニアを勇気付ける。
「エンジニアがビジネスに直接的なインパクトをもたらすことができる、非常に面白い時代です。今回のAWS Innovateを通じて、エンジニアが楽しみながら新しい価値を創出するお手伝いをしたいと考えています」(安田氏)
「生成 AI活用において、いろいろなフェーズにある企業に有益な情報を提供できる自信があります。その利便性は広く認知されていますが、生成 AIはまだまだ未知のポテンシャルを秘めています。ぜひAWS Innovateヘの参加を通じて生成 AIを巡る最新動向を学び、ビジネス価値創出にお役立てください」(金杉氏)
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年2月28日