オンプレミス環境のクラウド移行が進む中、仮想化環境のコスト増大やサポートの継続性に対する不安、VDIの刷新、AI活用など、企業はさまざまなインフラの課題を抱えている。そうした課題の解決策である「Azure Local」のメリットは何か。
クラウドサービスの活用、オンプレミスで運用している仮想化インフラの刷新、AI(人工知能)活用のためのインフラ整備――企業のITインフラを巡る課題は絶えない。喫緊の課題は、長年運用してきた仮想化インフラの維持コストが増大したことを受けて、運用方針を再考する必要に迫られていることだ。
そうした課題への打ち手の一つになるのが、クラウドサービスの利便性と、自社ポリシーで運用できるオンプレミスの良さを取り入れた仮想化インフラである「Azure Local」(旧称:Azure Stack HCI)だ。
Microsoftとの緊密な協力体制の下でAzure Localを提供しているデル・テクノロジーズによれば、同社が2024年に手掛けたAzure Localへの移行案件は、大きく3つのニーズに集中していた。全体の約70%を占めた「Hyper-Vマイグレーション」は、仮想化インフラを既存のハイパーバイザーからMicrosoftの「Hyper-V」に移行する案件だ。次に多かったのが全体の約23%を占める「Desktop as a Service」で、旧来の仮想デスクトップインフラ(VDI)からオンプレミスでの「Azure Virtual Desktop (AVD) on Azure Local」に移行する案件を指す。続いてAI関連が約7%で、MicrosoftのAIサービス群「Azure AI」をオンプレミスで活用する「Azure AI/MLOps/SLM(小規模言語モデル)/Azure Kubernetes Service」のニーズが高かった。
デル・テクノロジーズによれば、Hyper-Vへの移行案件は同社の前年比で数倍に拡大している。ニーズ拡大の背景にあるのは、オンプレミスのサーバ仮想化ソフトウェアを提供してきたベンダーが買収されてライセンスの料金体系が大きく変化したことだ。
「問い合わせの多くが『仮想化製品のライセンス料が上がったのでAzure Localに移行したいが、コストをどのくらい削減できるのか』というものです。これまで仮想化環境を選ぶ際は各サービスの機能を比較していましたが、仮想化ベンダーの買収問題によって考え方が大きく変化し、『将来にわたっていかに安心かつ適切なコストで使えるか』を意識するお客さまが増えています」――Hyper-Vへの移行についてこう語るのは、デル・テクノロジーズの津村賢哉氏だ。
買収が企業の考え方に影響を与えているのは、VDI製品からAVD on Azure Localへの移行でも同じだ。オンプレミスのVDI製品を提供してきたベンダーが投資ファンドの配下になる動きが続き、どこの資本がVDIベンダーを支えているのかが企業にとって重要なポイントになっている。それに対して「Microsoftが提供するVDIサービスは提供体制が変わることはない、という安心感を抱く企業が多い傾向にあります」と津村氏は話す。こうした背景から、デル・テクノロジーズは「仮想化基盤に複数の選択肢を提供するコンセプト「HCIダイバーシティー」を展開。サーバ仮想化、VDI、AIのどれについてもMicrosoft製品を含む多様な選択肢を提供している。
AVD on Azure Localへの移行が進む背景には、「Windows 10」のサポートが2025年10月14日に終了し、「Windows 11」への移行が必要になることもある。サポートが終了することで、セキュリティ更新プログラムやテクニカルサポートの提供が受けられなくなることから、Windows 10をベースとしたVDIの刷新も必要になる。
AIについては、ノウハウや知見が蓄積されていない中で新規で取り組む企業が大半だろう。デル・テクノロジーズの山野邊 真澄氏は、「AIを活用した方がよい領域があり、ニーズが拡大しているのは確かです。ですがお客さまによっては『AIに投資するための予算は確保しているが、現場は何をすればよいか分からない』というケースもあります」と話す。そうした場合、デル・テクノロジーズはMicrosoftと連携しながら概念実証(PoC)を実施し、Azure AIを活用しながら何に投資をし、何を実現するかを明確にすることから支援している。
Hyper-VやAVDへの移行、AI活用に関して、Azure Localを活用したさまざまな案件が動いている。
ある国内部品メーカーは、サーバ仮想化製品のバージョンアップが必要になったことから移行を決意。クラウドサービスを前提に運用効率やコストを踏まえて検討した結果、Azure Localに移行することを決めた。主な理由は、既存の仮想化環境がWindowsをベースにしているものが多いこと、業務アプリケーションにMicrosoftのオフィススイート「Microsoft 365」を使っていたことだ。
「クラウドサービスへの移行はアーキテクチャの変更に伴う工数とコストがかかるので、この企業は既存のオンプレミスを新しいオンプレミスに移行することにしました。商用のバックアップソフトウェアを使って仮想マシンをコピーして移行することで、低コストでの移行を実現しました」(津村氏)
国内のある病院は、電子カルテの周辺システムと医療事務システムをネットワークから物理的に分離することでサイバーセキュリティを確保していた。Azure LocalとAVDを採用することで、論理的なネットワーク分離への移行に成功した。津村氏は「オンプレミス側にWindows 11を導入し、機密性が求められるデータのやりとりはドメイン内のオンプレミスだけで済む構成になっています。将来構想として『Microsoft Azure』につないでAzure AIを活用することで、研究データを整理したり画像を解析したりすることも検討しています」と話す。
国内のある通信事業者は、オンプレミスのエッジ側にAzure Localのクラスタを構築し、サービスメニュー開発にAIを活用する検証を実施している。エッジにGPUクラスタを構築していることが大きな特徴だ。津村氏は「モデリングやリアルタイムデータを解析するときにGPUを使用します。データをエッジで処理するのでクラウドに流れることがなく、安心・安全なデータ活用が可能です。運用のモニタリングや権限管理、モデリング後の展開などはクラウドを利用しています」と説明する。
特に最近は、CAD(コンピュータ支援設計)などグラフィックスを多用する用途で、仮想GPU(GPU-P)とAVDを活用するケースも目立っているという。GPUの活用について、山野邊氏は次のように話す。
「製造業では、CAD関連のシステムにおいてAVDの利用が多くなっています。ワークステーションを複数台そろえていても、CADソフトが導入されていない端末は設計に使えません。AVDを採用すればどの端末でもCADを使えることからAVDが注目されています。GPUの検証をするときに、NVIDIAの技術者に参加してもらえることもデルの強みです」
設計やAI活用のためにGPUを導入したいという製造系や金融系の企業が増えている。しかしGPUは高額なので、まずは試して効果を確認してから別の用途への活用も検討したいというニーズが増えているという。
Azure Localは仮想GPUの機能をサポートしているので、上述のニーズに対応可能だ。さらに、Microsoftが2024年11月に提供を開始したサーバOS「Windows Server 2025」でもGPUのリソースを仮想化して分割できる機能が備わっている。Azure LocalもWindows Server 2025も、いずれもHCI機能を提供するOSだ。そのすみ分けについては、オンプレミスだけでの運用を中心にする場合はWindows Server 2025、Microsoft Azureとの連携を重視する場合はAzure Localを選ぶことでメリットが大きくなると考えるのがよい。
デル・テクノロジーズは、36年間以上にわたってMicrosoftとのパートナーシップ関係を続けており、多数の実績を持つ。これらを生かし、日本マイクロソフトの本社(東京都品川区)にデル・テクノロジーズのハードウェアを用いたAzure Localの環境を設置して、Microsoftのスペシャリストと共同でデモンストレーションやブリーフィングなどを提供している。加えて、Azure LocalへのマイグレーションやMicrosoft Azureサービスの活用といったPoCを実施できる「Azure Localクラスタ」をデル・テクノロジーズのオフィス(東京都千代田区)に設置している。どちらの取り組みも、顧客企業のプロジェクトリスクの最小化を目的としている。
また、デル・テクノロジーズのサーバ製品はMicrosoftからも評価されている。Microsoftは「Azure Localに関して最も適した顧客エクスペリエンスを提供できる」というハードウェアを認定したカタログを公開しており、デル・テクノロジーズのサーバ製品が最上位ランクの「Premier Solutions」に認定されているのだ。Premier Solutionsは、Microsoftのクラスタ化ソリューション検証テストが完了した高品質な統合ハードウェアが認証され、プリインストールされたOSが搭載されている。ソリューションテストはMicrosoftとパートナーによって継続的に実施され、ソリューションの更新も自動化されたフルスタックのアップデートがワンステップで提供される。
デル・テクノロジーズの強みについて津村氏は「10年前からMicrosoft専任の担当者がいるのは国内でも珍しいことで、そこが最大の強みだと思っています。現在、Microsoftの技術者が、当社の社内でハンズオンや情報交換などの取り組みも実施しています」と話す。
Microsoftと密に連携している一方で、ダイバーシティーを重視する考え方に基づいてサーバ仮想化VDI、AI活用について幅広い選択肢を持ってサポートできることもデル・テクノロジーズの強みの一つといえる。仮想化インフラに関する課題や悩みを抱えている企業は、デル・テクノロジーズに相談してみてはいかがだろうか。
Azure Localの効果的な導入方法や仮想化インフラの移行に関する情報を知りたいという読者は、MicrosoftやNVIDIAと共にデル・テクノロジーズが主催するセミナー「Azure Virtual Desktopをハイブリッドで利用するために必要な知識」(2025年4月17日)を視聴してはいかがだろうか。
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