AWSは2025年9月18日、参加無料のオンラインイベント「AWS Innovate」を開催する。「Migrate and Modernize」をテーマにした今回は、「AIネイティブな未来」を見据え、企業がどのように備えるべきか、身近で重要なワークロードを交えて徹底解説するという。AWSの担当者に、イベントの趣旨や見どころを聞いた。
2025年9月18日、アマゾン ウェブ サービス(以降、AWS)のイベント「AWS Innovate: Migrate and Modernize」が開催される。「AWS Innovate」は年2回テーマ別に開催され、年間で1万人以上の参加者が集うAWSの人気イベントだ。
今回のテーマは「AIネイティブな未来に向けて、『今こそ』クラウド移行を進めよう」。経営環境変化が激しい現在、ビジネスとシステムには一層のスピードと変化対応力が求められている。これを受けて多くの企業がクラウド移行を推進したが、一部システムのリフト&シフトにとどまるなど「変革」には至っていないケースが多い。だが、ビジネス展開/差別化の手段がAI(人工知能)前提に様変わりしつつある今、複雑化した基幹システムやデータサイロなどの問題を残したままではその活用に乗り出せない。今すぐ生成 AI全盛時代に備えたマイグレーション/モダナイゼーションに取り掛かる必要があるというわけだ。
企画背景について、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS Japan)の内村友亮氏はこう話す。
「AWSの調査では、2024年に63%の企業がクラウド移行を加速し、うち70%が新しいテクノロジーとしてクラウドサービスを採用しています。特にAIが台頭している中で、64%の企業がAI/ML(機械学習)サービスへの投資を計画しています※。私たちは今、クラウドとAIがビジネスの中心となる大きな転換点に立っているのです」
※出典 FOUNDRY an IDG, Inc. company:Executive summary Cloud Computing Study 2024
内村氏によると、クラウド移行を「単なるシステムの引っ越し」と捉えるのではなく、「未来に向けた戦略的投資」と捉えることが重要だという。
「経営環境の変化に適応するには、システムだけではなく、ビジネスモデルや組織、プロセスにも変革が必要です。これには相応の時間がかかるため、早期に着手するほど段階的な移行と学習が可能になります。現在はAIネイティブな時代への入り口です。今どのような一歩を踏み出すかが、企業の今後を大きく左右すると考えます」(内村氏)
AWS Japanの大村幸敬氏は、クラウド移行と生成 AIの関係をこう話す。
「生成 AI活用に不可欠なのがビジネスデータです。多様なツールがそろったクラウド環境にデータを蓄積することは、活用の利便性、コスト、レイテンシなど複数の面で明らかに合理的です。まずは既存システムをクラウドへ移行し、マネージドサービスを使って変化に強いモダンなアーキテクチャにすることが、生成 AI活用に向けた有効な第一歩になります」
だが前述のように、多くの企業は一部システムのクラウドへのリフト&シフトにとどまり、生成 AI活用に本格的に乗り出すには至っていない。そこにはどのようなハードルがあるのか。
「まずビジネス面では、従来のビジネスモデルのままではさらなる成長を目指すことが難しい時期を迎えていると考えています。多くの企業は変革の必要性を感じてはいるものの、データセンターへの投資や既存システムの維持コストが財務を圧迫しており、新たな価値創出に踏み出すリソースを確保しにくい状況にあります。多くの企業がこのジレンマに苦しんでいます」(内村氏)
システム面では、基幹システムが積年の改修を経て複雑化しており、生成 AIをはじめ新たなテクノロジーを取り込むのが困難になっている点が挙げられる。「Microsoft、SAP、Oracleなど、コア業務を支える複数のシステムが絡み合い、その連携は年々難しくなっています。エージェンティックAIをはじめとする新たなテクノロジーに注目が集まる中で、それを活用できないもどかしさを多くの企業が感じているのです」(内村氏)
特に根深いのが組織とプロセスの問題だ。新しいテクノロジーを導入するには、人材の育成、運用プロセスの見直し、ひいては組織文化の変革まで求められるためだ。
「ビジネス、システム、そして組織とプロセスの課題は相互に関連しています。システムの制約がビジネスチャンスを逃す原因となり、組織の準備不足が先端テクノロジー導入の障壁となります。そこから生じる機会損失は新たな投資をますます難しくする――この悪循環から抜け出すためには包括的なアプローチが必要です」
そうした悪循環を抜け出すためのノウハウや知見を提供するのが、2025年9月のAWS Innovate: Migrate and Modernizeだ。31に及ぶセッションを通じて、企業のコア業務で多く利用されている、Microsoft、VMware、SAP、OracleといったワークロードをAWSへマイグレ/モダナイするアプローチとポイントを解説する他、組織とプロセスの課題解決も含めた豊富な事例を紹介する。
セッションは以下の6トラックに分かれており、ワークロードごとに実践の要点を押さえやすい構成となっている。
AWSが提供するツールやサービスの機能、メリット、使い分けのポイントをあらためて学べる。「マルチアカウント環境でのガバナンス、オブザーバビリティ、生成 AIによる開発プロセスの改善、移行およびモダナイゼーションの実施方法など、実際の開発・運用現場で使われる技術について解説します。システム管理の多様なツールもマネージドサービスで提供しているのがAWSの一つの強みです。見落とされがちな工数削減に寄与するサービス群も知っていただき、知見をぜひ持ち帰っていただきたいです」(大村氏)
「Windows Server」「SQL Server」「.NETアプリケーション」といった既存のワークロードをAWSでマイグレ/モダナイする手法を学べる。「Microsoftワークロードのマイグレ/モダナイは15年の実績があります。特にWindows Server、SQL Server、.NETアプリケーションの移行戦略は実例とデモを交えて解説します。注目は『Amazon Q Developer』による生成 AI活用です。従来の4倍のスピードで.NETアプリを移行する革新的アプローチを紹介します」(内村氏)
VMware製品の移行パスとなる「Amazon Elastic VMware Service」(Amazon EVS)や、その移行手段を解説する。「『VMware Cloud Foundation』(VCF)をAWSで実行できるAmazon EVSのメリットや、専用のAIエージェントで各種ワークロードのマイグレ/モダナイを支援する『AWS Transform』を使った移行アプローチについて詳細に解説します。自社に適したマイグレ/モダナイ方法を見つけられるトラックです」(内村氏)
SAPワークロードの移行によって企業が得られるメリットは何か、その最新状況を解説する。「単にSAPのプラットフォームとしてAWSを利用するだけではありません。お客さまとAmazon本体がビジネスパートナーとして協業する事例をご紹介します。データ分析をはじめとしたSAPの周辺システムの在り方、さらにはSAPシステムの開発言語であるABAP(Advanced Business Application Programming)のコードをAI技術で改善する手法も解説します」(大村氏)
「Amazon EC2 for Oracle」「Amazon RDS for Oracle」「Amazon Aurora PostgreSQL」の他、国内提供を2025年7月に開始した「Oracle Database@AWS」など、幅広い選択肢の最新情報とともに移行手段を解説する。「各選択肢にどのような利点があるのか、ワークロードの特性や要件に応じて何を選べばよいのか、余すことなく紹介します」(内村氏)
これらに加え、見逃せないのはユーザー企業の成功事例だ。住信SBIネット銀行、富士通ゼネラル、リコー、ディップ、インフォネットが登壇し、生成 AI活用、マイクロサービスアーキテクチャへの移行、SAPシステムの移行、オンプレミスからAWSへの大規模移行、データベースのAWS移行など、各社の取り組みと成果が紹介される。システム、ビジネス、組織の変革のポイントを、より一層リアルに理解できるはずだ。
マイグレ/モダナイを達成する手段は複数ある。そうした中で、AWSで成果を手にする企業が増え続けている理由は何なのか。内村氏は、2025年6月17日に発表された、AWSの創設者でAmazon.comのCEO であるアンディ・ジャシー氏の「Message from CEO Andy Jassy: Some thoughts on Generative AI」※のメッセージを基にこう分析する。
※出典 Message from CEO Andy Jassy: Some thoughts on Generative AI(Amazon.com)
「彼はAmazon.comで起きている大きな変化について常々言及しています。それはAmazon.comが、巨大組織でありながら生成 AIの実装を進めており、AIショッピングアシスタント機能や次世代AIアシスタント『Alexa+』など多数のAIサービスを開発、展開して成果を得ている、という事実です。
つまり、私たちはクラウドベンダーとしての『理論』だけではなく『実践知』を持っているのです。ツールの提供から組織の変革まで、自らの経験を基に包括的に支援できる点が、お客さまに選んでいただける理由と考えます。お客さまに寄り添う伴走者として、われわれは共に未来を創ります」(内村氏)
「AWSは単なるプラットフォームサービスではなく、ITを活用するためのツールセットです。350を超えるサービス群があり、目的に応じて必要なサービスを組み合わせるビルディングブロックの考え方を採っています。実課題にフィットする各種プログラムやサポートも提供しており、やりたいことを迅速かつ合理的に実現できます。これが選ばれる理由でしょう。しかしAWSはそれだけにとどまらず、今も多様なお客さまのユースケースやフィードバックを受けて、サービスやプラクティスを進化させ続けています」(大村氏)
生成 AIに関心はあっても、システム、ビジネス、組織という3つの課題に阻まれて、取り入れる準備が整っていない――このようにためらう気持ちがあるとしても、前述のように、まずはシステムの制約を外さなければ悪循環から抜け出すことは難しい。イベント視聴を検討する人に向けて、内村氏は次のように語りかける。
「生成 AI時代に向けた変革に完璧なタイミングはありません。まだ正解がない今だからこそ、挑戦を始めることで大きなアドバンテージが得られます。AWS Innovateは、当社が実際に経験してきたこと、世界200の国と地域に広がる14万を超えるパートナーとの協業で得た知見、そして国内含めた世界中の成功事例をシェアします。難しく考える必要はありません。ぜひ『次の一手』を一緒に考えましょう」
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2025年10月14日