デジタルサービスの利用が当たり前の今、ネットワークには高速安定、迅速構築、管理簡易性が求められている。人材不足やコスト増といった課題も多い中、ビジネスを支えるネットワーク環境を構築、運用するにはどうすればいいのか。「ジャパンモビリティショー 2025」のプレスルーム環境構築事例から、そのヒントを探る。
社会全体でデジタル化が進み、B2Cに限らず、B2EやB2Bにおいてもデジタルサービスの利用が当たり前になった。インターネットにも、高速で安定していることが当然のように求められる。デジタルサービスを提供する企業にはイベント開催や拠点新設時には迅速なネットワーク環境の構築もビジネス上の要件となり、特に多店舗・多拠点を展開する企業では管理性も重要な要素となる。ネットワーク環境に求められる要件は厳しくなる一方で、人材不足やコスト増などの課題も多い。
これらの課題を解決するヒントになるのが、「ジャパンモビリティショー 2025」のプレスルームの環境構築事例だ。プレスルームには、1日当たり1000台以上の端末を接続できる高密度なネットワーク環境の短期間かつ迅速な構築が求められた。高速性や安定運用が求められる中、どう実現したのか。ジャパンモビリティショーを主催する日本自動車工業会の志賀隆宏氏、構築を担当したコムネットシステムの白柳翔大氏と吉野航貴氏、クラウド管理型プラットフォーム「Allied OneConnect」を提供したアライドテレシスの福田香奈絵氏に話を聞いた。
※以下、敬称略
――ジャパンモビリティショー 2025と、プレスルームが担う役割について教えてください。
志賀 自動車産業という枠を超え、IT、通信、エレクトロニクス産業など多くの業界を巻き込んで「豊かで夢のあるモビリティ社会の構築」を目指すイベントで、本年は過去最多となる合計500社以上の企業や団体が参加しました。「ワクワクする未来を、探しに行こう!」をコンセプトとして掲げ、未来を垣間見て体験し、一緒に考えていただく場になればと思っています。
メディアによる取材や発信も多く、プレスルームには世界中のメディアが集まります。特に今回は中国の自動車メーカーが出展していることから、東南アジアをはじめとする海外メディアの参加も増えています。プレスルームはこういったメディアが取材、編集、発信する拠点であり、通信トラブルが報道のスケジュールに影響しかねず、安定したネットワークの構築は不可欠でした。
――イベント開催時に限らず、ビジネスにおけるネットワークの重要性はますます高まっているように感じます。
白柳 数年前からネットワーク要件がどんどん高くなっています。以前は「使えればOK」だったのが、速度やセキュリティ、可視化、管理性が求められるようになりました。インフラとして、いかにストレスなく利用できるかを追求し続けなければなりません。
コロナ禍を経て、オンラインミーティングも増え、ブランチオフィスなど違う場所で働くことも増えました。インターネットがコミュニケーションの基盤となり、10年前と比べものにならないほど重要度が高まっています。
――管理の負担も増しているのでしょうか。
白柳 近年の傾向として、人数と端末数が一致せず、1人でPCとスマートフォン、BYOD(Bring Your Own Device)のデバイスなど3〜4台を接続することが当たり前になりました。人数の増加よりも速いペースでネットワークの規模を拡大しなければ追いつきません。
規模拡大に合わせて管理工数も増えますが、それに対して人を簡単に増やせないことが課題です。今後は、集中管理やゼロタッチプロビジョニングなどの仕組みでどうやって工数を削減するか、プロセス自体の見直しが求められると思います。1つのメーカーや製品に統合し、対応を含めて簡素化するのも一つの方法です。
――プレスルームの環境構築でもまさにこのような要件が求められていたのでしょうか。
白柳 コムネットシステムはここ10年ほど、日本自動車工業会からの依頼で、会期中の一時的なネットワーク環境の構築を担当しています。プレスルームは構築にかけられる期間がとにかく短いです。取材用の高画質な動画や画像を扱う上に、使われる端末数が多いため、容量も大きくなります。報道には即時性も求められるので、ネットワークの速度と安定性は必須要件で、短期間で大規模、大容量の通信に堪える環境を構築しなければなりません。
吉野 これまでもアライドテレシスと協業し、トレンドとなる製品を組み合わせて実装してきました。今回の中核を担っているのは、クラウド管理型プラットフォーム「Allied OneConnect」です。クラウドからネットワークの状況を管理でき、ゼロタッチプロビジョニングも可能なため、今回のように短期間で大規模環境を構築する場合には特にその効果を発揮します。
福田 短期間で環境構築する際は、簡単に導入できることに加え、トラブルをすぐに把握するための運用管理ツールが鍵になります。そうした意味でもAllied OneConnectは有効でしょう。
クラウドで管理できるので管理者がどこにいても状況を把握できます。複数拠点の管理も容易ですし、システム管理者がいない店舗や拠点などでも簡単に導入できます。今回のような一時的な環境だけでなく、拠点数が多い大規模なネットワークを構築するケースにもメリットがあると思います。
白柳 Windows 10のサポート終了に伴うアップグレードなどで端末も進化します。その結果、6GHz帯のWi-Fiなど新しい規格が使えるようになると、「小規模な店舗・拠点などのネットワークもアップグレードした方がよいのでは」と目が向けられるようになります。Allied OneConnectは、このような環境のアップグレードも簡易化されており、対応しやすいです。
――プレスルームの環境構築でAllied OneConnectを選定した決め手を伺えますか。
白柳 クラウド管理型製品は他にもありますが、Allied OneConnectのゼロタッチプロビジョニング機能は構築工数削減でメリットがあります。事前にコンフィグを作成し、アップロードしておけば、機器をインターネットに接続するだけで設定が完了します。今回も、初期構築の工数を5割近く削減できました。
コンフィグの設定変更履歴も確認できます。例えば、プレスルームでは有線を10G、Wi-Fiは6GHz帯でネットワークを提供しています。中にはこれらの規格に対応していない端末もあり、古い端末に対応できるように設定を変更する場合があります。その場合も、どのように設定を変更したかを比較して確認できるのは保守ベンダーとして大変助かります。もちろん短期間のイベントだけでなく、企業向けネットワークの運用でもコンフィグの変更履歴管理はかなりの負担なので、この機能は保守品質にも直結すると感じています。
もう一つ、ルーターやスイッチ、アクセスポイントなど全ての機器の管理画面が統一されていることもAllied OneConnectのメリットです。機器ごとに設定や管理方法が異なる製品もあるので、種別に関係なく同じ設定情報で管理できるのは便利です。
福田 Allied OneConnectは簡易ステータスモニタリング機能を提供しており、どのロケーションにどの機器があり、どのような状態なのかをすぐに把握できます。エラーが出たときの機器交換なども迅速に対応できて便利です。
吉野 プレスルームの環境構築時も各機器が正しくインターネットに接続できているかどうかを確認する必要がありました。Allied OneConnectは、1台ずつPCをつないで確認するのではなくまとめて確認できるので、監視の負担がかなり軽減されました。以前は現地で1台ずつ設定しなければならず、知識があるメンバーでなければ対応できませんでしたが、Allied OneConnectはベースのコンフィグさえ作成すれば、自動で機器に反映されます。
手作業で設定するとどうしても抜け漏れが出てしまいますが、自動で反映されればミスもなくなります。Allied OneConnectが非常に優秀なためほとんどトラブルがなく、稼働し始めてからも「パスワードを教えてほしい」といった問い合わせくらいしか来ていません。
志賀 イベントが始まってからも、プレスルームのネットワークは安定して稼働しており安心しました。端末を持ったまま移動することもありますが、Wi-Fiが途切れることもなく、快適で安定した通信環境を提供できていると感じます。
――今後の展開についてお聞かせください。
白柳 お客さまが求めるネットワークの規模や状況はさまざまで、ベースは共通でも、運用保守は異なることがほとんどです。ネットワークベンダーとして、多様なお客さまに同質のサービスレベルを提供するためにも、マルチテナント型で管理できるAllied OneConnectには非常に期待しています。
コムネットシステムには、ネットワーク機器と運用保守を月額のサブスクリプション型で提供するサービス「MALUTO」があります。常に最新モデルの機器を利用できることが特徴なのですが、最新機器の構築にはどうしても工数がかかっていました。Allied OneConnectでこの工数を削減できれば、よりスピーディーな提供が可能になります。障害発生時の復旧の簡単さなども魅力で、MALUTOでもAllied OneConnectを活用し、品質向上につなげたいと考えています。
福田 現状のAllied OneConnectは機器の設定と状態監視などの簡易的なモニタリングを行っていますが、今後はAIアシスタントなど、さまざまな機能を拡張しながら運用、管理工数の削減につながる支援を進めていく予定です。
インターネットに接続する端末が増え、ますます複雑化することは自明であり、スキルを持った人が全てを管理するのには限界があります。ユーザー企業にとってもクラウドから簡単に管理できることで、ビジネス展開の可能性は広がっていくでしょう。
※「Allied OneConnect」は、アライドテレシスが商標登録出願中の名称です。
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提供:アライドテレシス株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2026年1月10日