AIを開発組織全体に展開するには 日本IBMが示す「3つの壁」とAI駆動開発の実践法開発ライフサイクルを再定義

AIの企業利用が広がる一方、「構造」「基盤」「人」という壁によって、全社展開やレガシーモダナイゼーションに悩む企業は多い。複雑な大規模開発において、AIを真の「組織の武器」に変えるにはどうすべきか。日本IBMが提唱するAI駆動開発の最新アプローチと実践の鍵を解き明かす。

PR/@IT
» 2026年09月01日 10時00分 公開
PR

 バイブコーディングをはじめ、いまやシステム開発に欠かせない手段となったAIコーディング。だが昨今はコーディングにとどまらず、開発ライフサイクル全体をカバーするAI駆動開発が浸透しつつある。注目すべきは新規システムだけではなく、レガシーモダナイゼーションへの適用も現実的になったことだろう。

 「IBM watsonx」をはじめ各種AIサービスを提供してきたIBMも、AI駆動開発の実践を支援している一社だ。日本IBMの張重陽氏は、「ここ数カ月でAI活用は小規模開発におけるコード生成から、エンタープライズにおける大規模開発での活用へとフェーズが明確に移り、コスト、ガバナンスなどの課題に直面するケースが増えています」と指摘する。

 そうした課題解決に向けて、日本IBMはAI駆動開発パートナー「IBM Bob」(以下、Bob)と、仕様駆動開発を実現する「AI Lifecycle Shared Engineering Artifacts」(ALSEA/アリーシア)を提供している。BobがAIによる開発実行を支援する一方、ALSEAはIBMの大規模開発で培われた標準プロセスや成果物テンプレートを共有資産として提供し、組織全体で一貫したAI駆動開発を実現する。仕様書のない既存システムも含めて、複数システムが複雑に絡み合う大規模開発にこれらはどう役立つのか。アイティメディア統括編集長 内野宏信が話を聞いた。

photo (左から)アイティメディア 内野宏信(統括編集長)、日本IBM 張重陽氏(データ・プラットフォーム事業部)

※ 以下、敬称略。

AI活用は全社的なビジネス価値の創出に変化、直面する「3つの壁」

内野: バイブコーディングをはじめAIコーディングは急速に浸透した一方、個人レベルの活用が目立ち、組織的な活用は成果より課題が注目される傾向にあると思います。張さんは実施状況をどう見ていますか。

張: ここ数カ月でトレンドが変化したと感じます。お客さまと話していると、従来は「AIをどう開発業務で活用するか」が中心でしたが、今は「AIをどう開発組織全体に展開するか」という議論に移っています。AIが生成するコードをどうレビューし、監視し、ガバナンスを効かせるかという、より組織的な課題に変わってきたと言えます。

内野: 実際、アプリケーションはビジネスの遂行手段ですから、成果につなげるためには、いかにセキュリティを含めた品質を担保しながら、エンドユーザーに届けるまでのリードタイムを短縮できるかが問われますよね。

張: そうですね。AIを開発ライフサイクル全体に適用するというとまだ半信半疑な方もいらっしゃいますが、AIをどうビジネス価値につなげるかが重要との認識は共通しています。経営者やリーダー層ほど高い関心をお持ちです。IBMでは、AI駆動開発を理解、実践しやすいよう3つに区分しています。小規模なプロトタイプ開発を行う非エンジニア向けの「バイブコーディング」、エンタープライズの重要システムを開発・保守するエンジニア向けの「仕様駆動開発」、いずれの要素も持つ「ハイブリッド」です。

photo

内野: 分かりやすいですね。ただ、開発業務へのAI適用には数々の課題が指摘されています。生成コードのブラックボックス化、未認知ライセンスの勝手利用、AI利用に伴うトークンコスト増大など。レガシーモダナイゼーションではドキュメントがないなどの問題もあります。ビジネス価値向上につなげるためには、コスト、セキュリティ、コンプライアンスを含めた可視性がカギになると思うのですが。

張: 同感です。IBMは開発業務へのAI適用を阻む「3つの壁」があると考えています。1つはAI導入・運用のコスト効率を把握したり、コンプライアンス、セキュリティを担保したりする仕組みがない「構造的な壁」。2つ目はSaaSやオンプレミスを含めたハイブリッド環境全体にどうAIを適用するかといった「基盤の壁」。3つ目がAIをどう組織に定着させるかという「人の壁」です。スキルギャップを埋められる環境整備や教育が求められます。

photo (提供:日本IBM)《クリックで拡大》

AIエージェント駆動のエンタープライズ向け開発支援パートナーIBM Bob

内野: Bobはそうした課題の解決手段なのですよね。2026年6月にはV2も発表されましたが、その辺りにどう対応しているのですか。

張: 基本的なところから説明すると、Bobは対話型でAI駆動開発を進められるツールで、AIエージェント駆動の“エンタープライズ向け開発支援パートナー”と表現しています。コード生成だけでなく、コスト効率やコンプライアンス、セキュリティを担保しながら開発の各工程を支援できる点が特徴です。

 V2では、AIエージェントの動作を組織として制御する“エンタープライズ・エージェント・ハーネス”を全面的にサポートし、レガシーモダナイゼーションにも本格対応しました。これにより、既存資産も含めた「大規模開発におけるライフサイクル全体」を支援できるようになりました。

内野: 仕様策定やコーディング、テストといった業務に別々のAIモデルを使っている例は多数あります。Bobはそれらを一気通貫でマネージできるということですね。ただ、ライフサイクル全体という意味では、複数のAIモデル/エージェントを統合管理できるワークフローツールも想起されますが。

張: あくまで「エンタープライズにおける大規模開発を見据えたツール」であることが一般的なビジネスワークフローとの大きな違いです。特徴は「3つの壁」に沿って説明できます。1つは「全社展開を支える運用基盤」であること。AIの企業利用に必要なコスト効率、安全性、利用状況の可視化を備え、全社展開を支援します。2つ目は「開発業務全体への適用拡大」が可能なこと。コード生成にとどまらず、仕様策定をはじめ多様な開発業務、既存資産、開発環境にAIを適用できます。3つ目は「開発現場への定着」。AI活用を一部の先進ユーザーに限定せず、開発組織全体に浸透させます。

photo (提供:日本IBM)《クリックで拡大》

内野: なるほど。組織利用が前提となると、まず気になるのはコストです。「AIを使え」という社内の空気が強く、活用を個人に任せている例も多い。トークンコスト増大にはどう対応しているのですか。

張: コスト効率こそBobの強みの一つです。競争力のあるトークン単価を設定している他、コストを予測しやすいようシンプルな料金体系を整備しています。タスクの重さと入出力次第でトークンコストは変動しますが、Bobがタスクに最も合理的なモデルを自動選択することでコストを抑える仕組みとしています。AIの利用状況や運用コストも可視化できますから、費用対効果と定着度合いを同時に把握できます。

内野: 便利ですね。ただ、使い慣れたツールやモデルにこだわりがある人も多いのでは。

photo

張: その点にも配慮しています。IDEやShellなど多くの開発者が使い慣れた環境から各種モデルを利用できるようにしているのです。モデルの違いを意識せずに利用できるというメリットがありますし、IBMのAI定着支援サービスを組み合わせることもできます。

内野: なるほど。確かに工程ごとにモデルを使い分けるのが煩わしい、キャッチアップが大変だといった声も少なくありません。一方、大規模開発というと仕様策定や実装手順などに高度な精緻さが求められます。AIに任せることに懐疑的な向きもありませんか。

張: 全てを丸投げできないのはもちろんです。よって、Bobは「モード」機能を備えています。AIの力を借りてコードの分析や仕様の確認などができる「Ask」、要件定義や実装手順など計画策定に特化した「Plan」、計画した手順に基づきコード生成やテストなどを行う「Agent」という3つのモードがあります。専門性が高い業務は人が集中して取り組み、人の考察や判断を必ず取り入れることで、安全・着実に開発サイクルを回せる仕組みを採用しています。

 独自のセキュリティ要件を担保するなど、各社固有の条件に合わせて業務を行える「Custom」モードの作成・追加も可能です。これは組織的活用の大前提ですが、開発プロセスへのAIガードレールの組み込みやお客さまのプロンプトやデータを保存せず、AIモデルの学習にも使用しない仕組み、日本国内のデータセンターでデータ処理を完結できる日本リージョンへの対応など、個社事情に合わせて安全・円滑に使える環境を整備できます。

内野: 決して持ち上げるわけではないですが、隙がないですね。(笑)

 開発ライフサイクルと言っても、業種や業態のような個社やプロジェクトの事情によってやるべきことや進め方は変わります。それに対応しながら、コスト、基盤、人というAI活用の課題を解決し、標準化された「AI駆動開発というプロセス」を組織全体に実装する――。単に「Bobを入れる」というより「自社の開発ライフサイクルを再定義する」印象ですね。そこにTDD(テスト駆動開発)やEDD(評価駆動型開発)を取り入れるなどすればDevSecOpsの実践も考えられそうです。

張: まさにそこがポイントです。Bobは開発ライフサイクル全体を支援するAI駆動開発パートナーですが、IBMはさらに、大規模開発で培った標準プロセスや成果物テンプレート、ルールを体系化したALSEAを組み合わせて、AI活用を個人レベルにとどめずに組織全体で再現性高く展開できるようにしています。

AIを個人の道具から組織の能力へ

内野: レガシーモダナイゼーションについてはいかがですか。

張: 実はお客さまからの相談で最も多いのがそれです。Bobにソースコードを読み込ませて、ブラックボックス化したCOBOLやRPGの状況を可視化したり、読み込ませたソースコードから仕様書やドキュメントを生成したりできます。専門のコンサルタントが手作業中心で進めていた作業を大幅に効率化できるため、事例も着実に増えています。

photo 特定のプラットフォームやモダナイゼーションに特化した「Premium Package」も提供。IBMが培ってきた専門知識を生かし、Javaアプリケーションのモダナイゼーションや、IBM Z、IBM iに特化した開発・モダナイゼーションも支援する(提供:日本IBM)《クリックで拡大》

内野: しかし、どうしても懐疑的になってしまう部分もあります。特に国産のメインフレームは独自のデータベースやミドルウェアを使っているなどアーキテクチャが独特だったり、ベンダー独自の文字コード体系を使っていたりと一筋縄ではいかないことが多い。GitHubなどWeb上を含めて設計情報などの手掛かりをつかめないことも多いです。Zなど自社製品かつグローバルで使われてきたシステムとは事情が異なりますよね。

張: おっしゃる通りですが、国産ベンダー製のシステムであっても対応可能です。独自性が強いのはデータベースやミドルウェア、文字コードといった“周辺”で、業務ロジック自体はCOBOLやPL/Iが多いためです。手掛かりはWebではなくコードの中にあり、Bobで現状を可視化して仕様を復元できます。

 もちろん、独自仕様に依存する箇所は個別の事前調査が必要です。IBMのパートナーSIが持つ国産システムに関する豊富な知見や経験とBobの力を組み合わせることで、着実かつ効率的にモダナイゼーションを進めています。

内野: それは重要な話かもしれません。内製している企業だけでなく、SI事業者にとっても役立つわけですから。それも単なる自動化・自律化ではなく、「モード」機能のように人の知見や考察をベースにする、積極的に生かすことがBobのカギになっている。AIというと仕事や市場が奪われるといったイメージが根強いですが、Bobも「人と組織の力を拡張する」というAI本来の意義は変わらないわけですね。

張: その通りです。開発業務に限りませんが、日本はシステムがカスタム導入されることが一般的なため、AIも業務や部門ごとに個別導入されることが多く、AI活用の全社展開が難しい側面があります。つまりAI活用の在り方が標準化されにくいのです。

 ただ、大規模開発は仕様策定からデプロイメントまで、全ての関係者の考察や判断を基に、安全かつ着実に進めなければなりません。そこでAIを活用するためには、AIの動作ルールや利用可能なツール、ガードレールなどを定義して組織的にAIの動作を制御、標準化するハーネスエンジニアリングが前提になります。BobはIBMの大規模開発における標準プロセスや成果物テンプレート、ルール、ガイドなどのノウハウを組み込んだALSEAを組み合わせて提供することでこれを実現しています。組織的に整備された環境の中で、人の力を存分に生かしていただきたいわけです。

内野: なるほど。Bobは「構造の壁」に対してガバナンスやコスト管理を、「基盤の壁」には既存環境との統合を、「人の壁」には定着支援や標準化を提供することでAI駆動開発を組織全体に広げるわけですよね。

 また、「ライフサイクルを再定義するような印象」と話しましたが、そうした「3つの壁」を取り払うとともに、大規模開発の知見が標準化されたALSEAによって、組織の開発能力を底上げするということですね。確かに企業、SIerを問わず、Bobが仕事のパートナーとなって人と組織の力を増幅することで、アーキテクトやエンジニアは“作業”から解放されて「こんなことを実現したい」と“ビジネス”を考える、本来の創造性を取り戻す機会になるかもしれませんね。

張: 開発業務は本来楽しいものです。ただ、これまでアーキテクトやエンジニアは煩雑な業務に追われて、自分の仕事がビジネス価値にどうつながっているかを意識する機会が少なかったのではないでしょうか。Bobをパートナーとすることで、ビジネス価値をより意識した働き方ができるようになるはずです。ぜひご自身やソフトウェア、組織の価値向上につなげていただきたいと思います。

photo

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


提供:日本アイ・ビー・エム株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2026年9月30日