AIエージェントへの移行が進む中、従来の防御壁を突破されるリスクが顕在化している。過剰な権限や誤作動を防ぎ、安全に運用するための新アプローチを、Q&A形式で解説します。
AI技術の急速な発展によって、ビジネスにおけるAIの活用形態は従来の「対話型チャット(LLM)」から、自律的に判断してタスクを実行する「AIエージェント」へと移行しつつあります。しかし、業務の効率化をもたらす一方で、社員が個別にAIエージェントを運用することによるガバナンスの欠如や、不正操作、誤作動といった深刻なセキュリティリスクも浮上しています。本記事では、AIエージェントを「新たな従業員」として捉え、その安全な運用のために企業が講じるべきセキュリティアプローチをQ&A形式で解説します。
Q なぜ、従来のガードレールだけではAIエージェントを守れないのですか。
A プロンプトインジェクションなどの攻撃手法に対してガードレールを設けることは重要ですが、それだけで完全に防御することは不可能です。
AI専門家の間では、プロンプトインジェクションを100%防ぐことは困難であるとみられています。AIエージェントは高度な権限を持って自動処理を実施するため、一度ガードレールを突破されると、システムダウンや破壊的な操作などの多大な損害につながるリスクがあります。そのため、ガードレールだけに頼らない多層的な防御策が必要です。
Q AIエージェントにおける「オンボーディング」とはどのようなプロセスですか。
A 新入社員に対してPCのセットアップや権限設定を行うのと同様に、AIエージェントのコードや権限を事前検証するプロセスのことです。
米Exabeamの「Agent Behavior Verification」(ABV)は、オープンソースツール「Praxen」などを活用して、AIエージェントが設計通りに動作するか、過剰なアクセス権限やセキュリティホールが存在しないかを事前に解析します。この事前検証を経て初めて、AIエージェントを安心して業務に導入できます。
Q AIエージェントの事前検証ツール「Praxen」の開発背景と実績は。
A 開発者自身が万全の対策を施したAIエージェントが、ホワイトハッカーのテストで簡単に個人情報を抜き取られた実体験から誕生しました。
OWASP Gen AI Security Project創設者のスティーブ・ウィルソン氏は、自身のAIエージェントの設計と実装の隙間に潜む脆弱性を痛感し、事前検証ツール「Praxen」を開発・公開しました。2026年6月にOSSとしてリリースされ、現在では高い信頼性が求められる医療機関向けAIインフラを提供する米Medigramなどに導入されています。
Q 攻撃によるAIの異常行動を察知する「Agent Behavior Analytics」(ABA)とは。
A ユーザーやIT機器の行動分析(UEBA)をAIエージェントに拡張した概念で、AIの正常な挙動からの「逸脱」(ドリフティング)を捉える仕組みです。
AIエージェントが外部攻撃によって乗っ取られる際、瞬時にではなく徐々に正常な動作から逸脱するタイムラグが生じます。ABAはテレメトリーデータを収集、解析することで、「請求書処理を担当するAIが突如人事データベースへアクセスする」といった異常挙動を初期段階で検知し、被害の拡大を防ぎます。
Q 企業はAIエージェントのセキュリティリスクにどう向き合うべきですか。
A AIエージェントを単なるシステムではなく、自律的に行動する「内部脅威となり得る存在」として位置付ける必要があります。
AIエージェントは企業の代わりに判断し行動する“新たな従業員”です。単なるアクセス制御や入出力の制限だけではなく、事前検証による動作確認と、運用中の行動インテリジェンスによるモニタリングを組み合わせた総合的なリスク管理を構築することが求められます。
AIエージェントは業務自動化の強力な推進力になる一方で、社内ネットワークの内側で動く「新たな従業員」としてのセキュリティリスクを伴います。従来のアクセス制御やガードレールのみに依存せず、事前検証で潜在的な脆弱性を摘み取り、稼働後も行動解析によって異常な挙動を早期に察知・遮断する体制を整えることが、これからのAI時代のセキュリティ戦略において不可欠です。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2026年10月14日