オンプレミスとクラウドのインフラが混在するハイブリッド環境の運用管理に加えて、「Windows Server 2016」のサポート終了(EOS)への対応が迫り、IT担当者の重い負担となっています。複雑化・分断された環境を統合し、現場の負担を解消に導くアプローチとはどのようなものでしょうか。
世界の企業の大半がマルチクラウドを採用し、その多くがハイブリッド運用を実施する中で、オンプレミス環境から発生するセキュリティインシデントへの対策が急務となっています。日本マイクロソフトの知見を基に、ハイブリッド環境の管理を変える「Azure Arc」の可能性について、Q&A形式で解説します。
Q 複雑化するハイブリッド環境において、Azure Arcを導入することでどのようなメリットが得られますか?
A クラウドからの統合管理、ライセンス調達のモダナイズ、オンプレミスへのクラウドソリューション展開が可能になります。
日本マイクロソフトの内藤稔氏はAzure Arcの価値として3つのポイントを挙げています。1つ目はエージェントの導入により、オンプレミスから他社クラウドまでをAzureポータルで一元管理できる点です。更新管理や稼働監視などの運用を単一の画面(シングルコントロールプレーン)に集約できます。2つ目は、ソフトウェアライセンスや拡張セキュリティアップデート(ESU)を従量課金モデルで調達できる柔軟性です。3つ目は、「Azure Virtual Desktop」や最新のAIモデルなど、クラウド上の技術を既存のオンプレミス環境に展開できることです。同社の小林治郎氏も、Azure Arcをオンプレミスとクラウドの架け橋として統合的に管理することが、セキュリティの強化につながると強調します。

左から、内藤稔氏(日本マイクロソフト 業務執行役員 チャネルパートナー技術本部 コーポレートソリューション事業本部長)、小林治郎氏(日本マイクロソフト 執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長)Q Windows Server 2016のEOS対応において、オンプレミス環境の管理基盤をAzure Arcへ移行すべき理由は何ですか?
A 「Azure Update Manager」へ更新管理を移行し、再起動を最小限に抑える「ホットパッチ」などを活用できる点が重要です。
日本マイクロソフトの高添修氏は、半導体不足によるサーバ調達難などの影響から、単にOSをアップグレードすればよいという時代ではなくなっていると指摘し、運用変革の重要性を強調しています。オンプレミス環境を継続する場合、再起動を常に必要としない「Windows Server 2025」のホットパッチが注目されています。内藤氏はこの管理にはAzure Arcを経由したAzure Update Managerを用いるのが理想であり、従来のWSUS(Windows Server Update Services)は今後推奨しない方針であると述べています。また、Azure ArcにつなぐことでWindows ServerでEntra ID認証が実行できるようになり、オンプレミスのActive Directory(AD)依存を削減・廃止する「脱AD」のきっかけにもなる、と高添氏は補足しています。
Q 高度化するサイバー攻撃への対応や、複雑な環境下での導入において、Azure Arcはどのような効果を発揮しますか?
A AIを活用した予測型防御を全てのサーバ群に適用でき、アセスメントを通じたスモールスタートでの運用変革が可能になります。
日本マイクロソフトの宮川麻里氏は、攻撃者が対策の不十分な環境を広く探している現状を踏まえ、サーバにもエンドポイントと同様の保護が必要だと強調しています。「Microsoft Defender for Servers」をAzure Arcを介して活用することで、オンプレミスや他社クラウドを含む全てのサーバ群を一元管理できるようになります。さらに「Defender XDR」や「Microsoft Sentinel」を組み合わせることで、AIが攻撃パターンを予測して自律的に防御する仕組みが構築できます。
Q ハイブリッド環境の「運用のサイロ化」といった課題に対し、パートナー企業はどのようなアプローチを提案していますか?
A アセスメントによる現状把握や、ハードウェアの統廃合を通じたオンプレミス環境のスリム化と統合管理など、さまざまな支援施策があります。
ソフトクリエイトの野田泰宏氏は、クラウド移行はあくまで手段であり、まずは無償のアセスメントサービスなどで現状のコストや配置を正確に把握することが重要だと述べています。大塚商会の近藤啓太氏と安部里志氏は、管理ツールや担当者が分断される「運用のサイロ化」を課題の本質とし、Azure ArcがIT環境全体を統合する架け橋になると説明しています。また、デル・テクノロジーズの南部憲夫氏は、老朽化したサーバを最新のハードウェアに統廃合してオンプレミス環境をスリム化し、Azure Arcで統合管理する組み合わせが現実解になると説いています。



左から、野田泰宏氏(ソフトクリエイト イノベーションテクノロジー本部 システムインテグレーション統括部 プラットフォームソリューション部 副部長)、近藤啓太氏(大塚商会 技術本部 テクニカルソリューションセンター クラウドグループ)、安部里志氏(大塚商会 技術本部 テクニカルソリューションセンター クラウドグループ)、南部憲夫氏(デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 マイクロソフトソリューション部 ビジネス開発マネージャー)Q 従量課金モデルに対する社内説得など、導入にハードルを感じる場合はどのような一歩を踏み出すべきですか?
A 説得しやすいセキュリティ課題を起点とし、管理方法だけを変えてみるスモールスタートが推奨されます。
デル・テクノロジーズの小部直寛氏は、従量課金モデルは意思決定者へ費用を説得しにくい実情があると語っています。これに対し高添氏は、オンプレミスだけでは難しいセキュリティを起点に、クラウドにつなぐことを容易にするツールとしてのシンプルな説明が有効だとアドバイスしています。小部氏は、まずはAzure Arcにつないで管理方法だけでも変えてみれば変化が見えるはずだという考えから、スモールスタートを推奨しています。
ハイブリッド環境の統合管理やセキュリティ強化、将来的なAI活用を見据える上で、Azure Arcは運用体制を変革するための現実的かつ有効な基盤となります。パートナー企業からも、オンプレミスからクラウドへの第一歩としてAzure Arcにつなぐことで次のステップが見えてくると評価されています。クラウド移行かオンプレミス継続かに関わらず、複雑化するITインフラ環境の運用変革に向けた第一歩として、Azure Arcの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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