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Apacheパフォーマンス・チューニングの実践ApacheによるWebサーバ構築(16)(1/2 ページ)

前回、ボトルネックになり得るポイントの検討やベンチマークツール「ab」によるパフォーマンス・チェック方法を紹介した。今回はそれらを基に、Apacheのチューニングを行っていく。

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処理の簡略化による負荷の低減

 初めに紹介するのは、処理を減らすことによってApacheの負荷を少なくする方法だ。1つ1つの効果は小さいかもしれないが、積み重なると大きな差となって表れる。

不必要なモジュールの削除

 最初に行うチューニングは、不必要なモジュールの削除だ。周知のとおり、Apacheはモジュールの組み合わせで動作している。モジュールの種類は実にさまざまで、仮想ディレクトリ機能(mod_alias)やユーザーディレクトリ(mod_userdir)といった基本的な機能さえも、モジュールとして実装しているくらいである。

 Apacheがこのような形態で実装されているおかげで、利用する側は不要な機能を切り離してプログラムを軽量化できる。プログラムのサイズが小さくなることは、実行パフォーマンスに少なからず影響を及ぼす。

 まず、プログラムを読み込んで保存するメモリ容量が小さく済む。そして、余計なロジックを通過しないことで、CPUの計算時間も短縮できる。こうしたメリットは小さなことと思われるだろうが、多人数から同時実行されるApacheでは、その同時実行数分の差が出る。不必要なモジュールを削除する努力は、重要なパフォーマンスチューニングの1つなのである。

 モジュールを削るには、まず現在組み込まれているモジュールを知る必要がある。Apache(httpd)を「-l」オプション付きで実行すればそれが分かる。

# /usr/local/apache/bin/httpd -l

などとして実行すると、その結果としてApacheに組み込まれたモジュールのファイル名(通常は拡張子が「c」のもの)が表示される。こうして表示されたモジュールを取り除くには、再インストール(コンパイル)するほかない。configureを行うときに、「--disable-module=…」とすれば、そのモジュールは組み込まれなくなる。

 このように固定的に組み込まれているモジュール以外に、現在のApache(1.3以降)ではDSOと呼ばれる仕組みによって組み込まれるモジュールが存在する。これは、必要に応じて呼び出し、組み込むことのできるモジュールだ。DSOで読み込まれるモジュールは特別に決まっているわけではなく、どのモジュールであっても構わない。

 ただし、前出の「mod_alias」のように、頻繁に呼び出されるモジュールをDSOで組み込むとかえってパフォーマンスを悪化させる可能性もあるので注意したい。頻繁に組み込まれる(確実に利用する)モジュールはあらかじめ組み込んでおき、ときどき利用するモジュールはDSOで組み込むのがいいだろう。不必要なモジュールを、「いずれ使うかもしれない」という程度の感覚で組み込むのは感心しない。

 DSOで組み込むモジュールは、インストール時に「--enable-shared=..」としなくてはならない。そして、それらのモジュールは「httpd.conf」にリストされることになっている。具体的には、「LoadModule」ディレクティブと「AddModule」ディレクティブがそれで、これらのディレクティブは1つのモジュールに対してペアで記述される。インストール時に組み入れたモジュールが不必要になったら、これらのディレクティブの先頭に「#」を付けて、コメントアウトしてしまえばよい。また使いたくなったら、コメントアウトを解除すればいいのだ。

DNSの逆引き停止

 不必要なモジュールを削減した後は、無駄な処理をしないようにチューニングしていこう。ただし、その処理が無駄かどうかは、一概に判断できないところに問題がある。

 ここで、Apacheにおける無駄な処理の1つとしてDNSの逆引きを挙げる。なぜApacheがDNSの逆引きを行っているかというと、主にログの記録や認証のためである。アクセスログやエラーログにどこからのアクセスがあったかを記録する際、IPアドレスよりドメイン名の方が(人間にとっては)分かりやすい。コンテンツへのアクセスを認証するにも、IPアドレスの範囲よりドメイン名の方が設定しやすいが、そうすると認証時にドメイン名を調べる必要が出てくる。ただし、DNSの逆引きは、通信を伴うので意外にパフォーマンスへの影響が大きい。アクセスが集中すれば、ネットワーク回線にまで負荷をかけてしまう。

 DNSの逆引きを停止するには、「HostnameLookups」ディレクティブを使う。具体的には、

HostnameLookups off

とする。

 特定のファイルや拡張子については逆引きを有効にしておきたい、ということもあるだろう(CGIプログラムの内部でドメイン名を使いたい場合など)。そのような場合には、次のように「File」ディレクティブを活用すればよい。

HostnameLookups off
<File ~ "\.(shtml|cgi)$">
  HostnameLookups on
</File>

 この設定ではログの分析の際に困るという方がいるかもしれないが、これについては第14回 ログローテーションとAnalogの導入で紹介したように、分析前にDNSの逆引きをまとめて行うことをお勧めする。

.htaccessファイルを読み込ませない

 DNSの逆引きのほかに無駄な処理があるとすれば、それは「.htaccess」ファイルへのアクセスである。.htaccessファイルがコンテンツへの認証を行うために不可欠であることは、以前にも説明したとおりだ。しかし、このファイルもサーバの負荷を増やす要因となる。必要最小限の利用にとどめるべきだろう。

 認証が不必要なディレクトリについては、必ず「AllowOverride None」としてファイルを探しに行かないようにする。そのうえで、本当に必要なディレクトリだけを個別に設定して「AllowOverride All」などにする。こうするだけでも、無駄なファイル検索や読み込み処理を削減でき、全体で見ればパフォーマンスの向上につながるのである。

ディスクアクセスの分散

 Apacheのプログラム自体を改良してディスクの読み書きを削減するのは困難だが、ちょっとした工夫で効率を上げることはできる。その1つが、ログファイルのディスク分散である。通常は、インストール時の設定のまま「/usr/local/apache/logs/」などにログを書き込んでいると思う。しかし、これではコンテンツファイルへのアクセスも、ログファイルへのアクセスも1つのディスクに集中することになってしまう。

 ディスクが複数台あってRAIDなどでグループ化されていないのであれば、ログファイルを物理的に異なるディスクへ分散することを勧める。細かいことをいうようだが、ログの記録はリクエストのたびに行われるので、意外と侮れないチューニングとなる可能性もある。パフォーマンスを追求するなら、ぜひ実践しておきたいポイントの1つである。

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