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第3章 クラスとインスタンス連載 改訂版 C#入門(1/3 ページ)

C#を使いこなすためには、「オブジェクト指向」という考え方を把握する必要がある。今回はその中核となる「クラス」と「インスタンス」について解説する。

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連載 改訂版 C#入門
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連載目次

 本記事は、(株)技術評論社が発行する書籍『新プログラミング環境 C#がわかる+使える』から許可を得て転載したものです。同書籍に関する詳しい情報については、本記事の最後に掲載しています。

 C#を使いこなすためには、「オブジェクト指向」という考え方を把握する必要がある。C#そのものにオブジェクト指向機能が備わっているだけでなく、便利に使える多数のクラス・ライブラリがオブジェクト指向の考え方で作られているため、これを活用するには、基本的な知識を身につけておく必要がある。本章では、オブジェクト指向の中核となる「クラス」と「インスタンス」について解説する。

3-1 オブジェクト指向の必要性

 C#を使いこなすためには、オブジェクト指向というキーワードの意味を把握する必要がある。これは、オブジェクト指向に親しむことなくプログラミングを行ってきたプログラマーには難物といえる。このキーワードにはいくつもの意味があり、「オブジェクト指向とは何か?」というテーマだけで1冊の本ができそうなくらいだ。だが、C#でプログラミングを始めるだけなら、そこまで深い世界に入り込む必要はない。大まかなアウトラインを知るだけで十分である。本連載では、オブジェクト指向の思想面についての説明は行わず、C#に備わっているオブジェクト指向の機能を中心に説明を行う。より突っ込んだ、オブジェクト指向に関する知識を求める方は、オブジェクト指向の入門書を紐解くとよいだろう。

 さて、具体的なC#におけるオブジェクト指向の必要性とは何か? C#はオブジェクト指向を実現する機能を備えたプログラミング言語ではあるが、単にそのような機能があるというだけで、理屈からいえばオブジェクト指向的にプログラムを書かないという選択もありうる。しかし、実際にC#でプログラムを記述する場合は、多様な機能を持つクラス・ライブラリを利用しないわけにはいかない。クラス・ライブラリはオブジェクト指向的な方法論で作られているので、これを理解し使いこなすには、オブジェクト指向の知識が必要とされる。また、自分1人でプログラミングしているときはどのようにソースを書こうとかまわないが、チーム開発になったり、作成したプログラムを後からほかのプログラマーが修正する可能性があれば、独自の流儀を押し出すことは好ましいことではない。C#であれば、オブジェクト指向の方法論で開発するのが標準的であり、C#プログラマーはそれを学んでおく必要があるだろう。

3-2 クラスとインスタンス

 オブジェクト指向の概念のあるプログラミング言語を使ってきた方々なら、この説明は不要だろう。読み飛ばしてしまってもかまわないが、多少、C#でのオブジェクト指向の構文にも触れるので、斜め読みしていただくとベストである。

 さて、C#のオブジェクト指向機能の中核をなすのは、クラスとインスタンスである。クラスとは設計図として機能する図面であり、インスタンスとは設計図に従って製造される製品と考えると分かりやすい。例えば、時計の機能を持ったクラスがあり、それにwatchという名前が付いているとしよう。すると、実際に製造された時計は、クラスwatchのインスタンスと呼ばれる。奇異な用語に聞こえると思うが、意味は難しくないので丸暗記してしまおう。

 クラスとインスタンスの関係を見るために簡単なサンプル・ソースを見てみよう。List 3-1は、名前(name)と年齢(age)の情報を含むPersonというきわめてシンプルなクラスを作ってみた例である。

 1: class Person
 2: {
 3:   public string name;
 4:   public int age;
 5: }

List 3-1

 クラスを定義するには、classというキーワードに続き、クラスの名前を記述する。そして、その後の中括弧({})の内部がクラスの内容となる。stringは文字列型を示すデータ型、intは整数型を示すデータ型のキーワードである。それに続けて変数名を記述すると変数を宣言することができる。手前に付いているpublicはプログラム内外のどこからでもアクセス可能であることを示す。本来は必要に応じてアクセスを制限すべきだが、ここでは制限方法についてまだ解説していないので、無制限のアクセスを許可しておく。さて、クラスの中で行われた変数宣言で、実際の変数は作成されない。なぜならクラスとは設計図なので、これは「変数を作りなさい」という指示を書き込んだと見なされるのであって、変数そのものを作れという指示ではないのである。この変数が本当に作成されるのは、クラスのインスタンスが作られたときである。逆にいえば、ここではnameやageという変数は1個しか宣言していないが。インスタンスは何個でも作ることができるので、変数nameやageが何個も実際に作られる場合もある。

 さて、インスタンスを作るにはどうしたらよいのだろうか? 例えば、メソッドの中で、List 3-2のように記述することができる。

 1: void test()
 2: {
 3:   Person taro;
 4:   Console.WriteLine(taro.name);
 5: }

List 3-2

 List 3-2はtest()というメソッドの中で、Personというクラスを利用した例である。だが、このプログラムはまったく機能しない。コンパイルする段階で、「未割り当ての変数taroにアクセスされました。」というエラーメッセージを食らうことになる。Visual BasicやJavaの経験があればピンとくるかもしれないが、「Person taro;」と書いて実際に行われるのは、Personクラスのインスタンスを参照する入れ物としての変数が用意されるだけで、Personクラスのインスタンスが作られるわけではない。インスタンスを作るには、List 3-3のようにnewキーワードを書き込む必要がある。

 1: void test()
 2: {
 3:   Person taro;
 4:   taro = new Person();
 5:   Console.WriteLine(taro.name);
 6: }

List 3-3

 3行目の段階では、変数は準備されるが、中身は空っぽである。4行目の段階で、クラスPersonのインスタンスがnewキーワードにより生成される。生成されたインスタンスは、そのままではただ存在するだけで、アクセスすることができない。そこで、空っぽであった変数taroに、インスタンスへの参照を代入(=)する。すると、変数taroを経由して、生成したインスタンスにアクセスすることが可能になる。5行目のtaro.nameは、変数taroを通して、nameというクラス内の変数(メンバ変数)を参照するという意味の記述である。もし、4行目がなければ、変数taroは空っぽであり、インスタンスも生成されていないので、エラーとなり実行は不可能である(Fig.3-1 参照)。


Fig.3-1

 ちなみに、List 3-3はそのままでは実行できない。なぜなら、変数nameに文字列を入れるコードが存在しないので、変数nameが空っぽのまま出力されることになってエラーが起こる。これはList 3-4のように変数に何か代入しておけば回避できる。  

 1: static public void test()
 2: {
 3:   Person taro;
 4:   taro = new Person();
 5:   taro.name = "太郎";
 6:   taro.age = 20;
 7:   Console.WriteLine(taro.name);
 8: }

List 3-4

 同じことを繰り返し説明することになるが、5行目と6行目の代入は、3行目と4行目の間に移動させると機能しない。この時点で、入れ物としての変数taroは存在するが、インスタンスはまだ作られていないためだ。

 さて、変数nameや変数ageは1個しか定義していないのに、複数作られる可能性があると書いた。具体的には、どんな状況で複数作られるのだろうか? 一例をList 3-5に示す。

  1: static void test()
  2: {
  3:   Person taro;
  4:   Person hanako;
  5:   taro = new Person();
  6:   taro.name = "太郎";
  7:   taro.age = 20;
  8:   hanako = new Person();
  9:   hanako.name = "花子";
 10:   hanako.age = 17;
 11:   Console.WriteLine(taro.name);
 12:   Console.WriteLine(hanako.name);
 13: }

List 3-5

 List 3-5では、newが2回出てくることから分かるとおり、2個のインスタンスを作っている。それぞれ、taroという変数とhanakoという変数に参照情報を格納しているが、taroとhanakoではまったく別個のインスタンスを参照しているので、同じ変数nameに値を代入されても、別個のものとして扱われる。そのため、hanako.nameに代入したからといって、taro.nameの値が書き換わるわけではない。これを実行するとFig.3-2のような結果になる。


Fig.3-2

 なお、ここまではソース・コードの一部分だけを抜粋して解説していたので、実際に実行できるソース・コード(最初から最後まで)をList 3-6に示す。メソッドtest()にstaticが付いている理由はこの後で説明する。

  1: using System;
  2:
  3: namespace Sample001
  4: {
  5:   class Person
  6:   {
  7:     public string name;
  8:     public int age;
  9:   }
 10:
 11:   class Test
 12:   {
 13:     static void test()
 14:     {
 15:       Person taro;
 16:       Person hanako;
 17:       taro = new Person();
 18:       taro.name = "太郎";
 19:       taro.age = 20;
 20:       hanako = new Person();
 21:       hanako.name = "花子";
 22:       hanako.age = 17;
 23:       Console.WriteLine(taro.name);
 24:       Console.WriteLine(hanako.name);
 25:     }
 26:     [STAThread]
 27:     static void Main(string[] args)
 28:     {
 29:       Test.test();
 30:     }
 31:   }
 32: }

List 3-6

  

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