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Webサービス、どこまで実用になっている?安藤幸央のランダウン(18)

「Java FAQ(What's New)」の安藤幸央氏が、CoolなプログラミングのためのノウハウやTIPS、筆者の経験などを「Rundown」(駆け足の要点説明)でお届けします。(編集局)

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 Amazon Webサービス、GoogleのWebサービスが、Webサービスの今後の展開、可能性を示唆しています。

 最近Javaや.NET、XMLにかかわっていると、「Webサービス」という言葉をよく聞きます。Webサービス、SOAP、WSDL、UDDIと騒ぎ立てられていて、技術的にはどのような仕組みで動作しているのか理解していても、実際のところ実用イメージがピンとこないことも多いのではないでしょうか?

 Webサービスをとりまく各種の技術は、これまで数多くのサンプルが作られ実証実験が行われていますが、実際に実用レベルまで昇華していったサービスはそれほど多くありません。WebサービスがもともとBtoBの分野を得意とし、コンシューマ分野では触れる機会が少ないことも、いまだ実用イメージがない理由の1つになっているかと思います。

 また、HTTPプロトコルという「粗」なネットワーク結合を利用したサービスに、不安要素をぬぐえない事例にも現場では遭遇することもあるでしょう。

 しかし、ここでようやく一般のインターネットユーザーにとってWebサービスの可能性を感じさせる実例がいくつか登場してきました。検索エンジンGoogleのWebサービス、オークションサイトeBayのWebサービスなどです。ここではオンライン書籍販売サイトとしてよく知られているAmazonのWebサービスを中心に紹介していきましょう。

Amazon Webサービス

 2002年7月、Amazon.comはサイトの各機能をWebサービスとして利用するための「Amazon.com WebServices SDK v1.0」をリリースしました(現在の最新版はVersion 2.0)。

 Amazon.com WebServices SDKは無料で配布されています。実際にこのSDKを利用したサービスを動かすには、無料で発行されるトークンと呼ばれる専用のIDコードが必要です。Amazon.com WebServices SDKには以下のものが含まれます。

  • DTDとXSD
  • SOAP、WSDL設定ファイル
  • XSLTスタイルシートのサンプル
  • 結果として返ってくるXMLドキュメントのサンプル
  • SOAPリクエストのサンプル
  • Amazon Webサービスに関するライセンス記述

 AmazonがこのWebサービス用SDKを公開するに当たって提示した実用例は以下のようなものです。

  • 現在のAmazon.comとは違ったWebデザインで商品を紹介するページの構築
  • Amazonアソシエイト・プログラムを利用した専門店の構築
  • 今日のニュースなどで話題の事柄に関係した本を随時紹介するページの構築

 これらのアイデア以外にも、ほかのWebサービスと組み合わせたサービスなど、より発展したサービスを想像するのも困難なことではありません。アイデア次第で、いままでにない便利なサービスを構築することもできるでしょう。

 Amazon WebサービスはSOAPもしくはXML over HTTPで利用することができます。Amazon.comの書籍などのデータベースを検索し、製品名、製造業者、価格などの検索結果をXMLドキュメントで取得することができます。現在米国Amazon.comと英国Amazon.co.ukがサービスを提供しています。XMLドキュメントを解析して利用するのが面倒であれば、XSLTサービスによるスタイルシートの利用も可能です。

 Amazonアソシエイト・プログラムは、Amazonで扱う商品のサービス仲介業です。書籍を紹介する際にAmazonへのリンクを提示し、それによってAmazonでの商品購入を促進しようというものです。アソシエイトオーナーは、Amazonで扱う書籍などの商品を紹介するページを作成し、そのページ経由で商品の購入につながった場合、Amazon.comからアソシエイトサイトに一定率(3〜5%程度)のコミッションが支払われる制度です。現在90万件以上のアソシエイト登録があり、バイラルマーケティング(いわゆる口コミ)的なEC(電子商取引)サイトの顧客獲得の好例としてよく取り上げられます。

Amazon Webサービス以外のAmazon活用例

 Amazon Webサービスにより、Amazonが保持する大量の書籍情報が活用できるとともに、書籍専門の検索エンジンを手に入れたようなものです。いままでも書籍情報やCD/DVD情報の検索には、一般の検索エンジンを使わず、Amazonで調べるインターネットユーザーは多かったでしょう。少々視点を変えて、Amazon Webサービス構築のアイデアのもととなりそうなサイトをいくつか紹介しましょう。

 Amazon Searchは、Amazonの検索結果をMacromedia Flashに変換し、より見やすい形で書籍情報を確認することができるサイトです。ある書籍を買った顧客が、ほかにどんな書籍を買ったのか、相関関係を図式で確認できるのが特徴です。

Amazonの検索結果をFlashで表示するAmazon Search
Amazonの検索結果をFlashで表示するAmazon Search

 Amazon Scan (JungleScan)は、Amazonでの売り上げトップ10など、人気の順位をチェックすることができるサイトです。ある書籍の順位がどのように推移したかをチェックすることもできます。

 Amazon LightはAmazon.comの検索機能だけを取り出した高速軽量 Amazon専用検索サイトです。Amazonを書籍やCD/DVD専用の検索エンジンとして活用している人も多いことでしょう。書籍、CD/DVDを探すのに便利に活用できるサイトです。

Web版セレクトショップの登場

 Amazon Webサービスの展開として考えられるのが「セレクトショップ」の台頭です。セレクトショップというと、服などのファッション系のショップや、雑貨などのショップを思い浮かべるかもしれません。米国Amazon.comは書籍やCD以外に、家電製品やオモチャなども取り扱っており、商品分野は多岐にわたっています。

 simplest-shop.comはカメラ関連商品に特化したオンラインショップサイトです。サイトオーナーのお薦めの商品の紹介や、最安値の価格情報、製品の仕様説明や商品比較ページなどを備えています。Amazon Webサービスで得られる情報を利用しつつ、Amazon単体では得られない購買情報を組み合わせているのが特徴です。

Amazonを利用した専門店:カメラショップの例
Amazonを利用した専門店:カメラショップの例(simplest-shop.com)

 Book Watchは、Google Web APIとAmazon Webサービスを組み合わせた、書籍情報サイトです。いまインターネットで話題の情報に関する書籍と、関連するニュースをGoogle Newsで知ることができます。

書籍情報サイト「Book Watch」
書籍情報サイト「Book Watch」

 Webサービスの台頭によって、使うだけであったインターネットから、プログラミングできるインターネットになったというイメージがわいてくるのではないでしょうか?世界中にちらばったWebサイトから情報を仕入れるとともに、ネットワーク上に展開しているさまざまなWebサービスを利用し、それらを相互に組み合わせていくことができるのです。Webサービスを活用し、より便利なサービスを構築していくのも、これからのアイデア次第です。

次回は5月21日の公開予定です。


プロフィール

安藤幸央(あんどう ゆきお)

安藤幸央

1970年北海道生まれ。現在、株式会社エヌ・ケー・エクサ マルチメディアソリューションセンター所属。フォトリアリスティック3次元コンピュータグラフィックス、リアルタイムグラフィックスやネットワークを利用した各種開発業務に携わる。コンピュータ自動彩色システムや3次元イメージ検索システム大規模データ可視化システム、リアルタイムCG投影システム、建築業界、エンターテインメント向け3次元 CG ソフトの開発、インターネットベースのコンピュータグラフィックスシステムなどを手掛ける。また、Java、Web3D、OpenGL、3DCG の情報源となるWebページをまとめている。

ホームページ:
http://www.gimlay.org/~andoh/java/

所属団体:
OpenGL_Japan (Member)、SIGGRAPH TOKYO (Vice Chairman)

主な著書

「VRML 60分ガイド」(監訳、ソフトバンク)
「これがJava だ! インターネットの新たな主役」(共著、日本経済新聞社)
「The Java3D API仕様」(監修、アスキー)


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