DNSの拡張仕様、SRVレコードとENUM:実用 BIND 9で作るDNSサーバ(14)(1/2 ページ)
DNSの用途を拡大すべく、いくつかの拡張仕様の標準化が議論されている。今回は、SRVレコードとENUMという2つの技術について解説する。(編集局)
多くのサイトは、「ftp.example.jp」のようにサービス名を別名にしたホスト名を用いることで、サーバを見つけやすくしています。安易な方法ですが、実はRFC 2219(http://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2219.txt)として広く推奨されています(表1)。
別名 | サービス |
---|---|
archie | archie [ARCHIE] |
finger | Finger [RFC-1288] |
ftp | File Transfer Protocol [RFC-959] |
gopher | Internet Gopher Protocol [RFC-1436] |
ldap | Lightweight Directory Access Protocol [RFC-1777] |
SMTP mail [RFC-821] | |
news | Usenet News via NNTP [RFC-977] |
ntp | Network Time Protocol [RFC-1305] |
ph | CCSO nameserver [PH] |
pop | Post Office Protocol [RFC-1939] |
rwhois | Referral WHOIS [RFC-1714] |
wais | Wide Area Information Server [RFC-1625] |
whois | NICNAME/WHOIS [RFC-954] |
www | World-Wide Web HTTP [RFC-1945] |
表1 |
これ以外のサービスについても、プロトコル仕様書に別名を提案することが定められています。
サービスの情報を通知するSRVレコード
RFC 2219の別名を用いる方法では、サービスとサーバの完全な対応付けができないことは明らかです。例えば、HTTPサービスがTCP 80番ポートではなく8080番で動作している場合、RFC 2219の方法ではポート番号まで通知することは期待できません。
そこで現在検討されているのが、DNSのSRVレコードを用いた方法です。これは、ホスト名やIPアドレスだけでなく、インターネットアプリケーションに必要な情報を盛り込んでしまおうというものです。
SRVレコードが実現すること
SRVレコードにより、次のようなことが可能となります。
- 負荷分散サービスの提供
- 冗長性の確保
- サービスポート番号の通知
簡単な例を見てみましょう。これまでに紹介したBIND 9のゾーンファイルでは、ホスト名に対するIPアドレス、IPアドレスに対するホスト名の対が並びます。SRVレコードでは、サービスに対してそのサービスを提供するホスト名とそれに関する情報を指定します。example.jpドメインのFTPサービスの記述は以下のようになります。
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SRVレコードを理解するDNSクライアントが、example.jpドメインのFTPサーバの問い合わせを行った場合、まずserver01.example.jpのTCP 21番ポートに対してFTP要求を行い、server01がダウンしている場合はserver02.example.jpにFTP要求を行います。
これだけの記述で、server01/server02.example.jpというホスト名を知らなくても、example.jpでFTPサービスを提供しているサーバを(しかも冗長性を伴って)見つけることが可能です。いくつかの点で、MXレコード(第3回参照)に似ている面があります。
SRVレコードのフォーマット
SRVレコードのフォーマットは、以下のようになります。順番に説明します。
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- _Service._Proto.Name
リスト1の「_ftp._tcp.example.jp.」の部分です。サービスの別名の前に下線(_)を付けたもの(_ftp)と、使用するプロトコルの前に下線を付けたもの(_tcpまたは_udp)を「.」で連ね、最後にドメイン(example.jp.)を「.」で連結します。
サービスの別名やプロトコル名にはRFC 1700(http://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1700.txt)に定義されているものや、自サイト固有の名称を使用します。example.jpドメインのSMTPサービスについての記述であれば、
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のようになります。
Serviceは大文字・小文字の区別が必要ですが、Protoは大文字・小文字の区別はなく、_TCP(または_UDP)でも同義となります。
- TTL
リスト1の例では省略されています。TTLは、これまでに何度も登場しているキャッシュ生存期間の指定です。ほかのレコードと同様、省略が可能です。
- Class
リスト1の例の「IN」の部分です。SRVレコードでは「IN」を指定します。
- Priority
リスト1では1および2になっています。同一サービスに対して複数のサーバが指定されている場合、値が小さい方を優先します。同じPriorityが指定されている場合は、次のWeightフィールド値が参照されます。
Priorityは、符号なし16bit値(0〜65535)が指定可能です。MXレコードのプリファレンス値(第3回参照)と同様、サービスの冗長化を実現します。
- Weight
リスト1では0になっています。
同一サービスに対して複数のサーバが指定されており、それぞれのPriorityフィールドに同じ値が指定されている場合は、Weight値で負荷分散を実現します。符号なし16bit値(0〜65535)が指定可能で、0の場合は負荷分散を行いません。
以下のように設定すると、server02はserver01の2倍の要求が行われます。
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第3回で紹介したDNSラウンドロビンでは、DNSサーバ自身が順序付けを行い、クライアントに応答します。SRVレコードでは、クライアントがWeight値の合計と乱数を用いて、接続するサービス対象を選択します。
- Port
リスト1では21になっています。Portフィールドは、サービスを提供するポート番号を指定します。符号なし16bit値(0〜65535)が指定可能です。
- Target
リスト1ではserver01/server02.example.jp。サービスを提供しているサーバのホスト名です。
このホスト名に対しては、必ずAレコードでIPアドレスが指定されている必要があります。CNAMEで指定されたホスト名を用いることはできません。
以下の例のように、ホスト名ではなく「.」とした場合は、サービスが利用不可であることを意味します。
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参考:
▼RFC 2782「A DNS RR for specifying the location of services」
http://www.rfc-editor.org/rfc/rfc2782.txt
SRVレコードによる負荷分散と冗長化
SRVレコードを利用して冗長化と負荷分散を実現するには、以下のようなゾーンファイルを用意します。
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example.jpドメインに対してSRVレコード対応クライアントからHTTPサービスの問い合わせが行われると、Priorityフィールドの値が小さい(1)と(2)が評価され、(1):(2)=3:1の比率で接続先サーバを選択します。ホストbig/smallが両方とも停止している場合は、(3)が評価されます。
SRVレコード未対応のクライアントからの問い合わせには、(4)が使用されます。(5)と(6)は、HTTP以外のサービスを無効にしています。
SRVレコードの現状
大変便利なSRVレコードですが、多くの機能がクライアントに依存しています。現時点でSRVレコードをサポートしているクライアントはごくわずかで、Internet ExplorerやMozillaは対応していません。
なお、Active DirectoryがSRVレコードを利用しています。
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