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WAS高速化の要とトランスポート・チャネル・サービスWebSphereサーバ・チューニング入門(2)(3/3 ページ)

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主なパラメータを操作してみよう!

 以下に、「トランスポート・チャネル・サービス」の主なチューニング・パラメータを解説します。なお、以下はV6.1をベースにしており、V6.0.xでは画面が一部異なっております。

図5 [Web コンテナー・トランスポート・チェーン]の設定画面
図5 [Web コンテナー・トランスポート・チェーン]の設定画面

 [Web コンテナー・トランスポート・チェーン]の設定画面では、[TCP インバウンド・チャネル][HTTP インバウンド・チャネル][Web コンテナー・インバウンド・チャネル]という3つのトランスポート・チャネルが設定できる画面へのリンクがあります。順に見ていきましょう。

[スレッド・プール]の設定

 3つのトランスポート・チャネルの設定の前にまず、スレッド・プールの設定について見てみましょう。「トランスポート・チャネル・サービス」は特定のHTTPポートに対して、スレッド・プールを割り当てられます。

 例えば、HTTPのポート9080番を使用しているアプリケーションにはスレッド・プール1を割り当て、ポート9081番を使用している別アプリケーションにスレッド・プール2を割り当てられます。デフォルトでは、すべてのHTTPポートに対して「WebContainer」というスレッド・プールが割り当てられています。

図6 [スレッド・プール]の設定画面
図6 [スレッド・プール]の設定画面

 アプリケーションへの同時アクセスを最適化するために、各スレッド・プールで設定するスレッド数を調整します。多くのケースにおいて、V6.xはV5.xと比較して、必要とするWebコンテナスレッド・プールサイズを小さく設定することにより性能向上を得られます。

 次に紹介する[TCP インバウンド・チャネル]の設定画面でも、[スレッド・プール]は「WebContainer」と設定されています。

[TCP インバウンド・チャネル]の設定

図7 [TCP インバウンド・チャネル]の設定画面
図7 [TCP インバウンド・チャネル]の設定画面
  • [最大のオープン接続数]
    サーバで使用可能な最大接続数を指定します。通常は、デフォルト値の20000のままで十分ですので、調整は必要ありません
  • [非活動タイムアウト]
    このパラメータで指定した時間内にデータを受信しなかった場合、TCP トランスポート・チャネルは接続をクローズします

[HTTP インバウンド・チャネル]の設定

図8 [HTTP インバウンド・チャネル]の設定画面
図8 [HTTP インバウンド・チャネル]の設定画面
  • [パーシスタント・タイムアウト]
    非活動状態によりKeepAlive接続が切断されるまでの時間を調整できます。デフォルト値は、30秒です
  • [ユーザー・パーシスタント(キープアライブ)接続]
    HTTPのKeepAliveを有効にするかどうかの選択ができ、デフォルトはKeepAliveが有効です
  • [最大のパーシスタント要求数]
    接続が切断されるまで処理できるリクエスト数の指定。デフォルト値は100です。HTTPのdenial-of-service(DoS)攻撃への対応という側面で、この値を調整する場合もあります。パフォーマンス・ベンチマークとか、HTTPクライアントが信頼できる環境にあるといった場合に(例えば、Web(HTTP)サーバがWASの前段に配置されており、Web(HTTP)サーバからのみHTTPリクエストが届くといったケース)、パフォーマンス性能を最大限に引き出すためには、このオプションの値を「無制限」に設定します(V6.0.xの場合には、「-1」を指定)

編集部注DoS攻撃について詳しく知りたい読者は、セキュリティ用語事典の[DoS攻撃]をご参照ください

[Web コンテナー・インバウンド・チャネル]の設定

図9 [Web コンテナー・インバウンド・チャネル]の設定画面
図9 [Web コンテナー・インバウンド・チャネル]の設定画面
  • [書き込みバッファー・サイズ]
    HTTPレスポンスが大きい場合に、書き込みバッファー・サイズを大きく設定できます。デフォルト値は32kbytesで、多くの場合はこの値を変更しないでも大丈夫です。ただし、HTTPレスポンスが32kbytesよりも大きい場合には、レスポンスメッセージの処理がまとめられ、クライアントに対して複数のTCP書き込み処理が送られることになります。このパラメータに適切な値を判別するには、戻されたページ・サイズを確認し、HTTPヘッダのために数bytesを加えた値を算出します

WAS 6.1の新機能Native AIOとは?

 WAS 6.1では、多くのプラットフォームにおいて、Native AIO(Asynchronous I/O)機能を提供するようになりました。Native AIO機能は、パフォーマンスおよびスケーラビリティという面で、WAS V6.0で提供していたJavaのNew I/O APIよりも優れた性能を提供しています。

図10 WAS 6.1のNative AIO構成
図10 WAS 6.1のNative AIO構成

 以下のプラットフォームには、IBM提供のネイティブ・ライブラリがWASに同梱されており、ネイティブなI/O機能を使用することによって、プラットフォーム特有の優位性を提供しています。

  • AIX - pollset
  • Linux - sys/epoll
  • zServer - asyncio
  • Windows - IOCP(IO completion ports)
  • Solaris - Event Completion Framework
  • HP - dev/poll

 WAS 6.1 Native AIOの特徴としては、

  • 高速なネイティブI/O機能によりクライアント接続を管理
  • HTTP I/Oイベントは、イベント・ハンドリング用にプラットフォームのカーネルに登録されたWebコンテナ・スレッドが処理
  • IBM WebSphere Native I/O Libraryによって、I/Oイベントのバッチ処理を実行

 などが挙げられます。

適切なチューニングを施すために

 WAS V5.xの「HTTPトランスポート」とV6.0の「トランスポート・チャネル・サービス」では、ベースとなる技術が大きく異なっていることがご理解していただけたと思います。さらに、V6.0で採用されたNew I/O APIからより前進し、V6.1ではネイティブなAIO技術を取り入れることにより性能向上を行っております。

 これらの違いは、管理コンソール上の設定パネルだけでは理解するのは容易ではありませんが、適切なチューニングを施すために必要となる知識ですので、正しく理解しておくべき内容といえます。

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プロフィール

日本アイ・ビー・エム 東京基礎研究所 アドバイザリー・リサーチャー

上野 憲一郎(うえの けんいちろう)
kenueno@jp.ibm.com

日本アイ・ビー・エムに入社後、システム・エンジニアとして10年ほど活動した後、米国IBMへ赴任。米国IBM Raleighソフトウェア開発研究所にて、WebSphere Application Server開発部門のパフォーマンス専門グループのメンバーとして活動。2003年に帰国後、IBM東京基礎研究所にて、XML、Web サービス、SOA関連技術の研究開発に従事。WebSphere Application Serverパフォーマンス専門家として、セミナーなどで講演も実施。

主な著書
WebSphere V3.5 Handbook」(Prentice Hall)

主な訳書
Webサービスプラットフォームアーキテクチャ」(エスアイビーアクセス)



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