NFSを用いた仮想化環境構築手順:続・実践! Xenで実現するサーバ統合(3)(2/3 ページ)
仮想化ソフトウェアの「Xen」を用いてサーバを統合するのはいいけれど、肝心のデータやアプリケーションを格納するストレージはどのように配置するのが最も効果的でしょうか? 続編では仮想化とストレージの効果的な活用にフォーカスを当てていきます(編集部)
ライブマイグレーションの処理概要
さて、これで前回のiSCSI構成と今回のNAS構成で、2通りの共有ストレージの仮想化環境が構築できました。それではストレージの共有化の一番の特徴ともいえる「ライブマイグレーション」を実行してみましょう。
その前に、ライブマイグレーションの仕組みについて簡単に触れておきます。ライブマイグレーションでは主に次のような処理が行われます。
1. 移行準備
移行先のXenホストBに仮想マシンを受け入れられるリソースがあるか確認し、リソースを確保します。
2. 実行中コピー処理
TCPコネクションを確立し、仮想マシンのメモリをコピーします。コピー中に変更されたメモリの差分データをコピーします。メモリの差異が小さくなるまで差分コピーを繰り返し行います。
3. 一時停止コピー処理
メモリの差異が十分小さくなったら、仮想マシンを一時停止して残った差分メモリやCPUの状態をコピーします。また、移行先のXenホストBではコピーした仮想マシンの再構成を行います。
4. 仮想マシンの稼働再開
移行の正常性が確認されると移行元のリソースが解放され、移行先の仮想マシンを再開します。
以上のような流れでライブマイグレーションが完了します。
コラム●NASとiSCSIの使い分け
Xenの仮想化環境を構築する際に、NAS構成とiSCSI構成のどちらを使うのがいいのか? という疑問を持つ人は少なくないと思います。ストレージの選定は仮想化環境を導入する際に頭を悩ませる要素の1つです。NAS/iSCSIそれぞれの構成について、いくつかのポイントごとに考察してみます。
■性能面
NASとiSCSIの違いはディスクアクセス方法にあります。NASはファイルサーバであるのに対し、iSCSIはネットワーク接続できるブロックデバイスです。
NAS構成ではXenの仮想マシンをファイルシステムでフォーマットされたディスクの上にファイル形式で作成します。iSCSI構成ではディスクボリューム上に直接仮想マシンを作成でき、ファイルシステムを介さずに作成できる分ディスクアクセスのオーバーヘッドが少ないため、NAS構成よりも性能的に有利であると考えられます。ただし、ソフトウェアを使用してiSCSIターゲットを実現しているストレージでは、OS上で作成したファイルを「ブロックデバイスもどき」として提供するタイプのものもあります。このタイプのiSCSIはNASよりもオーバーヘッドが大きくなる場合があり、期待するパフォーマンスを得られないことがあります。
注:ネットワーク性能についてはどちらもTCP/IPを使うため、同性能と考えています。また、ディスクは同一のものを使用した場合を想定しています
■機能面
iSCSI構成はブロックデバイスでアクセスできるため、LVMを使えることがメリットです。また、iSCSIホストバスアダプタを用いれば、Xenホスト自体をSANブートさせることもできます。ファイル形式での仮想マシンの作成はiSCSIでも可能であるため、NAS構成による機能的なアドバンテージはありません。
■導入面
NASはNAS OS側にファイルシステムが存在するので、Xenホストが接続さえできるようになればすぐに使用できるため導入が容易です。一方、iSCSIではパーティションの作成や排他制御などをユーザーが設定しなければならないため、多少の知識が必要になってきます。
■価格面
ここが一番の悩みどころです。ストレージは機能や性能が良いものほど価格が上がります。これはiSCSIでもNASでも同じです。数十万円で導入できるものもあれば、数千万円かかるものまで存在します。一般的には同性能のストレージであればNASよりもiSCSIのほうがコストが上であることが多いようです。
ただし、価格だけで単純にNASとiSCSIを比較することにはあまり意味がありません。実際のところは、限られた予算の中で価格と性能のトレードオフによってストレージを選定することになります。
これらのポイントの中でも、NASとiSCSIを使い分ける上で考慮すべきなのは機能面です。仮想マシン上で動作させるアプリケーションによってストレージに求められる性能が決まってくるので、一概にどちらが良いとはいえません。ブロックデバイスのアクセスにこだわりがなければ、NASで十分と考えることもできます。性能重視であれば一般的にはNAS<iSCSIとなりますが、SASや高回転数のディスクなど高性能のディスクを使用することで、その差を埋めることが期待できます。
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