米シスコシステムズは、長らく噂されていたブレードサーバ「Unified Computing System(UCS)5100 Series」を米国で発表した。シスコは新サーバの詳細な仕様を明らかにしていない。しかし総じていえば、ネットワーク/ストレージ接続をイーサネットベースの技術に集約することで、データセンター設計のシンプル化と構成変更の柔軟性を追求した製品だ。
日本時間3月17日午前2時30分から実施されたユーザー向けの発表イベント(Webキャストされた)で、米シスコ会長兼CEOのジョン・チェンバース氏は、「営業という立場からいえば、もちろんこの製品を買って欲しい。同時に、これは今後2〜3年にわたってシスコが展開するアーキテクチャを明らかにする製品でもある。今後次々に新製品を投入していく予定だ」と話した。
UCS 5100は6Uサイズのシャーシにハーフサイズのブレードを最大8枚、フルサイズのブレードの場合は最大4枚搭載。これはブレードサーバとして密度が高いとはいえない。サーバブレードに搭載するCPUは、インテルがまもなく発表するXeon 5500シリーズだ。各シャーシには電源装置4個と冷却ファン8個を搭載可能。
シスコはUCS 5100ブレードサーバで、「40のシャーシを利用して最大320ブレードのシステムを構成可能」としているが、何をシステム構成の限界としているかは不明だ。もう1つ不明なのは、「特許技術によるメモリ拡張機能を搭載している」という点。「標準的な技術を使っている」という説明がなされたが、標準的な特許技術とは何なのか、明確になっていない。
外部接続はイーサネットのみに集約
UCS 5100の各サーバブレードにはCNA(Converged Network Adapter)を装着し、これを経由して、シャーシ背面に搭載するイーサネット接続モジュール「UCS 2100 Series Fabric Extender」につなげる。UCS 2100は10Gbpsイーサネット接続を4本提供できる。冗長性確保のためにこのモジュールを2つ装着することが可能だ。なお、各サーバブレード用のCNAには、シスコがVMware ESX用に提供する仮想マシンとネットワーク/セキュリティ設定のひも付けが可能なソフトウェアスイッチ「Nexus 1000V」と同等の機能が、ハードウェア的に実装されているという。VNタグを媒介とした仮想マシンのポリシー制御は、新製品の重要なセールスポイントになる。
Fabric Extenderは、UCS5100サーバが外部とやり取りするための唯一の経路となる。つまり、UCS 5100はイーサネットあるいはDCE(Data Center Ethernet:シスコが独自拡張を加えた次世代イーサネット)、およびDCE上で動作するFCoE(Fibre Channel over Ethernet)のみをサポートし、ファイバチャネルを直接サポートしない。このため、ストレージ接続にはiSCSI、NFS/CIFS、あるいはFCoEを使うことになる。
シスコはサーバからネットワーク、そしてサーバからストレージへの接続をイーサネットに集約することを、他社製品との重要な差別化要因と考えている。ストレージ接続をイーサネットベースにしてしまえば、ファイバチャネル用のアダプタ(HBA)やファイバチャネル・スイッチを購入する必要がなくなり、機器調達コストを削減できる。ストレージ接続やネットワーク接続の変更も、多くの場合、当初の段階で行った物理的な配線を変更せずに、論理的な割り当てをし直すだけで済む。シスコはさらにサーバ、ストレージ、ネットワークの接続を単一のツールで管理する「Cisco UCS Manager」を提供し、管理工数と管理担当者数の削減でTCOが下がる点をアピールしている。この管理ツールは、VMware InfrastructureのvCenter(旧製品名VirtualCenter)と連携して、システムプロファイルに基づくリソース管理を行える。
UCS 5100には、「UCS 6100 Series Fabric Interconnect」というシステム集約用の10Gbpsイーサネットスイッチが用意されている。同スイッチには、1Uサイズの20ポート版と、2Uサイズの40ポート版の2種類がある。このスイッチにはFCoE―ファイバチャネルの変換機能はない。
しかしすでにNexusシリーズで、1Uに10Gbpsイーサネットを28ポート搭載し、拡張モジュールを用いてファイバチャネル接続も可能なスイッチ「Nexus 5010」が提供されており、UCS 6100はこれと位置付けが重なるような印象を受ける。UCS 6100にはUCS Managerの機能が組み込まれているとされるが、サーバファームの統合管理ポイントとしての役割を持たせているのだろうか。
シスコは、新ブレードサーバを「仮想化環境専用」とは言っていない。物理サーバ環境も稼働できるとしている。しかし、同社製品群の力はサーバ仮想化環境でこそ発揮できると考えているのは確かなようだ。同社は新サーバの発表に合わせて、ヴイエムウェアとのOEM契約を発表した。ヴイエムウェアとの協業に基づく数種のサーバ仮想化支援サービスを展開する。共同でリセラーに対する啓蒙活動も行うという。シスコはヴイエムウェアの大株主であるEMCとの提携関係も拡大、統合ソリューションの開発や検証、訴求を進める。
シスコはこの新製品および新サービスを、第2四半期から順次、一般提供開始するという。
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