「ITは所有から利用へ」などといまさらのようにいわれるようになってきた。しかし中小企業のITに関しては、持たないで済めば、それに越したことがないことは最初から分かりきっている。
社員が利用するPCのメンテナンスやトラブルシューティングだけでも大変なのに、サーバ機の面倒を見ることは、情報システム専任者を持てないか、持てても1、2人の企業にとってはつらい。だからといってサーバの管理を業者に代行してもらえば、それなりの料金が掛かってしまう。
「日本の中小企業はなぜITをちゃんと活用しないのか」といわれることもあるが、当の中小企業からしてみれば、「業務を助けるのがITの目的であるはずなのに、なぜこんなにコストが掛かるのか」ということになる。
だからASPサービスは内在的に、中小企業にとって魅力が高い。アプリケーションの動作を支える仕組みの維持や障害対応をすべて業者側で担当してもらえれば、企業としては利用に徹することができる。
その際のおもなニーズは、信頼できる業者であること、できるだけ1社にすべてのアプリケーションをまかせられること、カスタマイズ・ニーズに応えてくれることだ。
信頼できる業者であることという点は、ASPサービスであれば実績で判断できる場合もある。最終的には心理的に信じられるかどうかが重要なので、ネームバリューも効果があると考えられる。
できるだけ1社にすべてのアプリケーションをまかせられることという点は、業者にとってはハードルが高い。1つのアプリケーションとしてさまざまな機能を備えているという意味では、例えばサイボウズOfficeはかなりのニーズをカバーできる。Webブラウザでアクセスできるデータベースを簡単に設計・利用できるアプリケーションを含めると、カスタマイズ・ニーズにもある程度応えてくれるといえる。足りないのは販売管理や在庫管理、会計などの、今風にいえば、使いやすく十分な機能を備えた「ERP」アプリケーションだ。
カスタマイズ・ニーズへの対応はなかなか難しい。カスタマイズがどの程度かにもよるが、ほとんど新しいデータベースアプリケーションを作るのに等しいレベルになると、均一化されたアプリケーションを多数のユーザーに提供することでの規模の利益の追求という、ASPサービスのビジネスモデルと根本的に合わなくなってくる。
だが、そこに新たなビジネスの種がある。ASPサービスの選択を助け、さらに利用の際のカスタマイズやアプリケーション構築を支援あるいは代行するというものだ。
効率的で拡張性の高いビジネスとはいえない。しかし、これこそが、中小企業でITを活用しきれない最大の理由であり、誰からも支援を得られない部分であることも確かなのだ。
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