OSSライセンスの採用傾向に「変化」あり:OSS界のちょっと気になる話(4)(1/2 ページ)
OSS普及の一翼を担ってきたライセンスがGPLであることに異論は少ないでしょう。けれど最近の報告によると、OSSプロジェクトにおけるGPLファミリー採用の割合が減少傾向にあるそうです。いったいどうして?(編集部)
OSSプロジェクトのライセンス動向に変化あり
OSS、とりわけLinuxと関連するツールなどを普及させる大きな原動力となったライセンスがGPLだったことは疑いのないところだと思う。GCCもその普及の一翼を担っている。
現在、OSSプロジェクトで採用されているライセンスのうち最も多いライセンスはGPLv2だと言われており、ほかのGPLファミリーも含めるとOSSプロジェクトの過半数でGPL系のライセンスが採用されているという。GPLがソフトウェア業界に与えた衝撃は大きく、現在ではさまざまなソフトウェア開発において欠かせない存在になっている。
しかしここ数年、GPLファミリーがOSSプロジェクト全体に占める割合は減り続けている。しかも、その減少傾向が加速していることが、451 CAOS Theoryにおいて「On the continuing decline of the GPL」として報告されている。451 CAOS Theoryでは、そう遠くない将来、GPLファミリーは過半数を割るのではないかと予測している。
451 CAOS Theoryの報告によれば、GPLファミリーを採用しているプロジェクトの数自体は増加しているとのことだが、OSSプロジェクト全体における割合は低下し続けているという。OSSを普及させる起爆剤となったGPLが、なぜいまシェアを減らし続けているのか、いくつかの報告を取り上げ、その理由を探っていきたいと思う。
代表的なOSSライセンスの特徴
OSSプロジェクトで採用されているライセンスの種類は数百に上るとも言われているが、よく採用されている代表的なライセンスはもっと少ない。そうした代表的なOSSライセンスはOpen Source Initiativeをチェックすることで調べることができる。特に次のページでは、代表的なOSSライセンスの内容をチェックできる。
- Open Source Licenses by Category:カテゴリ別OSSライセンス :カテゴリ別OSSライセンス
- Licenses by Name:名前順OSSライセンス:名前順OSSライセンス
ライセンスそのものの解説ではないが、OSSライセンスを比較した資料としては、IPAが公開している次の資料が参考になる。
OSSライセンスはいくつも存在するが、GPLが提供している「コピーレフト」という観点をベースにして、主に3つのカテゴリに分類することができる。
ライセンスの種類 | 特徴 |
---|---|
コピーレフト型 | 二次的著作物(derivative work)の頒布条件に同じライセンスが要求されるライセンス。例えばGPLのソースコードを使って開発した二次的著作物はGPLの基で頒布する必要があるといったもの。パーミッシブ型の対極に位置する。OSSの理念を強く持つライセンスと評価されることが多い。代表的なライセンスはGPL、AGPLなど。 |
準コピーレフト型 | コピーレフト型ほどコピーレフト性が強くないライセンス。開発コミュニティに利便性が出るように工夫されている。代表的なライセンスはMPL、LGPL、CDDL、EPLなど。 |
パーミッシブ型 | 無保証であること、著作権表示をすること、ライセンス条文を表示すること、などの条件さえ満たせば頒布を許可するライセンス。二次的著作物を同じライセンスにする必要がない。コピーレフト型の対極に位置する。企業における商用利用への転用が容易だと評価されることが多い。代表的なライセンスはBSD、MIT、Apache、MS-PLなど。 |
上記の説明では何が何だか分からない方も多いかもしれない。乱暴だが、開発者の観点から極論的に簡単にまとめるとすれば、コピーレフト/準コピーレフト型では書き変えた部分のソースコードを公開する必要がある、パーミッシブ型は書き変えたソースコードを公開しなくてもよい、といったことになるだろう。
OSSライセンスに関しては、ソフトウェアに対する立場(開発者、ユーザー、経営者、企業、研究者、教育者、学生など)やそのソフトウェアを取り巻く状況、コミュニティの歴史や文化背景などさまざまな要因が絡むため、一概にどのライセンスがよい、悪いといった判断はできないように思う。ありきたりな表現になるが、ライセンスも時代と共に変化し、適材適所で選ばれるということだろう。
GPLからMITライセンスへ
451 CAOS Theoryの「On the continuing decline of the GPL」によれば、ここ数年に渡ってGPLファミリーはOSSプロジェクトにおける割合を減らし続けており、代わりにパーミッシブライセンス(Permissive License)がそのシェアを伸ばしているという。パーミッシブライセンスの中でも、特にMITライセンスがシェアを伸ばす傾向があるとの説明がある。
注:BSDライセンスとMITライセンスはよく似ているため、これら類似ライセンスをまとめてBSDスタイルライセンスと呼ぶこともある。現在採用されているBSDライセンスは主に2条項のものと3条項のものがあり、それぞれ2条項BSDライセンス、3条項BSDライセンス/修正BSDライセンスと呼ばれている。2条項BSDライセンスは時にFreeBSDライセンスと表記されることもある。
MIT/BSD/Apacheといったパーミッシブライセンスがシェアを伸ばしているものの、依然としてGPLファミリーが過半数を占めており、OSSプロジェクトにおいて強い影響力を持っていることは間違いない。しかし、近年新しく発足したプロジェクトの多くがパーミッシブライセンスを採用するように状況がシフトしていることは注目に値する。しかも、その動向が加速していると報告されている点が興味深い。
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