検索
特集

Interop Tokyo 2012で見えたOpenFlowのこれからOpenFlow ShowCase、各ブースの技術を掘り下げる(1/2 ページ)

6月に開催された「Interop Tokyo 2012」。その主催者企画の中で最も目立っていたのが、OpenFlow関連の展示です。来場者も大きな興味を示した「OpenFlow ShowCase」のデモをひもとき、どんな思想に基づいてOpenFlowが活用されようとしているのかを探ります。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

来場者の熱い注目を集めた「OpenFlow ShowCase」

 6月に開催された「Interop Tokyo 2012」。その主催者企画の中で最も目立っていたのが、OpenFlow関連の展示でした。「OpenFlow ShowCase」や「OpenFlow Securityデモ」をはじめ多くの展示でOpenFlowが大きく扱われていましたし、来場者の側も、それらに大きな興味を示していました。

「OpenFlow ShowCase」
Interop Tokyo 2012の中でも最も来場者の注目を集めた「OpenFlow ShowCase」

 一方で、OpenFlow関連の展示を行っていたベンダの多くが、どこか「さめた」感じで説明を行っていたことも印象的でした。中には、「OpenFlowがこんなに盛り上がってるのは日本だけですよ。アメリカではほどほどです」と語る説明員もいたほどです。またシスコシステムズやジュニパーネットワークス、ブロケード・コミュニケーションズ・システムズなどアメリカ系の企業の多くは、「OpenFlow」という個別技術を前面に打ち出す代わりに、「SDN」(Software Defined Network)という大きな枠組みで公式発表を行っていました。

 OpenFlowスイッチの実現方法にも、ベンダによって異なる特徴を見ることができました。専用ハードウェアとしてOpenFlowスイッチを実装した製品もあれば、既存の製品に対するソフトウェアアップデートでOpenFlowに対応するスイッチもありました。

 ただし、既存の製品をソフトウェアアップデートでOpenFlowに対応させるベンダの中には、現時点ではまだβ版のみの提供にとどまっているところもあります。要は、既存の手持ちハードウェアを用いてもOpenFlow化は可能としつつも、サポートなどを考えると、いますぐに大きなOpenFlow市場が生まれるとは思えない……という感じの雰囲気です。

 中でも多くの来場者を集めていたのが、「OpenFlow ShowCase」です。展示内容の多くは正規サービス/製品に関するものではありませんでしたが、各社それぞれの取り組みがよく表れていたように思います。

マルチベンダの接続デモ
マルチベンダのOpenFlow対応ネットワーク機器が集まった

 特にガチで「OpenFlowでいくぜ!」という気合いを見せて頑張っていたのが、NEC+NTTコミュニケーションズでした。両社はすでにOpenFlowを用いた新サービスを発表し、事業化しています。この2社をはじめとして、日本企業によるOpenFlow解説には、非常に前向きなトーンが多かった印象があります。例えば、NTTデータもInterop前にOpenFlowに関するプレスリリースを出していました。

 では、いくつかのOpenFlow展示をあらためて振り返っていきましょう。

OpenFlowの基本動作を示したブロケードのデモ

 ブロケード・コミュニケーションズ・システムズによるOpenFlowデモは非常にプリミティブなものでした。来場者が抱く「OpenFlowで、結局何ができるの?」という素朴な疑問に対し、「OpenFlowって、こんなことができますよ!」と紹介するデモを行いました。

ブロケードのブース
来場者の素朴な疑問に答えるデモを行ったブロケードのブース

 中には、「え!? OpenFlow ShowCaseってユースケースを見せてくれるんじゃないの?」と反応する方もいるかもしれません。しかし遠目で来場者の反応を観察していると、「え!?OpenFlowってこんな変態的なことができるの!?(笑)」と、いい反応を返す方々が多かったように思えました。「OpenFlowというバズワードは聞いているけれど、実際のところ何なのさ?」という来場者にとって、非常によい展示だったと思います。

 同社ブースでの展示内容を紹介しましょう。このデモには、マルチベンダでのOpenFlow動作も含まれています。図に示したOpenFlowスイッチのうち、1番と2番はブロケードのスイッチですが、3番はヒューレット・パッカード(HP)のOpenFlowスイッチ、4番が米Pica8(ピカエイト)のOpenFlowスイッチでした(なおPica8のスイッチは、あえて「コモディティ化」を前面に押し出した製品です。コストパフォーマンスの高さを特徴としており、今回のInteropでもいくつかの出展社が紹介していました)。

 展示会の2日目からは、ネットワークの中央部分を構成するスイッチのインターフェイスに、100GbEが利用されていました。ブロケードでは、コントロールプレーンを従来のL2/L3プロトコルから書き込む代わりに、OpenFlowから書き込むという形でOpenFlowを実装しています。要は、ハードウェア部分への変更を行わず、ソフトウェアアップデートだけでOpenFlow対応が実現されているということです。このため、転送処理に関しては従来と変わらないパフォーマンスを出せることが特徴で、それを如実に示すデモとなっていました。

 デモ1は、皆さんもおなじみの通常のシングルフローです(図1)。図中の赤い線が映像とping(ICMP Echo Request)を、黄色い線がpingの応答(ICMP Echo Reply)を示しています。

図1 シングルフローの場合
図1 シングルフローの場合

 デモ2では、OpenFlowを利用してマルチフローが可能なことを実演しました(図2)。PC1からの映像データパケットはOpenFlowスイッチ1で3つに複製されて、OpenFlowスイッチ2、3、4へと転送されます。そしてOpenFlowスイッチは、それぞれ接続されたPCへとパケットを転送し、PCで映像が再生されます。

図2 OpenFlowを活用したマルチフロー
図2 OpenFlowを活用したマルチフロー

 映像転送と同時に、PC1から10.0.0.1に対してpingも行ってみました。映像データ同様、OpenFlowスイッチはICMP Echo Requestを3つに複製し、OpenFlowスイッチ2、3、4へと転送します。OpenFlowスイッチから転送されたICMP Echo RequestはそれぞれのPCへと転送され、ICMP Echo ReplyがPC1へと送信されます。この結果PC1は、ICMP Echo Replyを3つ受け取ることになります。

 続くデモ3では、マルチパスが可能なことを示しました(図3)。PC1から送信された映像データがOpenFlowスイッチ1で3つに複製されて、OpenFlowスイッチ2、3、4へと送信されます。このうちOpenFlowスイッチ3と4は、接続されたPCへのパケット転送は行わずに、OpenFlowスイッチ2へとパケットを転送します。そのため、PC3とPC4では映像が再生されません。

図3 マルチパスのデモ
図3 マルチパスのデモ

 映像送信と同時に、PC1からpingも行ってみます。すると、ICMP Echo RequestとICMP Echo Replyがそれぞれ複製されるので、PC2は3つのICMP Echo Requestを受け取り、PC1は計9個のICMP Echo Replyを受け取るようになります。

PC2が3つのICMP Echo Requestを受け取っていることが分かる
PC2が3つのICMP Echo Requestを受け取っていることが分かる

 このデモでは、たとえ2と4の間、3と4の間の経路を遮断しても、1から2まで映像が配信され続けて、PCでは映像が途切れないことも実演しました。

 4つ目のデモは、迂回経路を実践するというものです(図4)。ここではOpenFlowを利用して、あえて最短経路を通らずに迂回経路を通過させています。

図4 OpenFlowを利用して迂回経路を実現
図4 OpenFlowを利用して迂回経路を実現

 このように、OpenFlowの基本動作を説明するというのは、ありそうでなかなかない展示だと思いました。個人的には、このような硬派なデモは大好きです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る