いまさら聞けない「DevOps」:特集 DevOps時代の必須知識(2/2 ページ)
最近さまざまなイベントやブログエントリで見かける「DevOps」。この言葉をひもとき、なぜ「Dev」と「Ops」が衝突するのか、その解決に必要な要素とは何かを分かりやすく解説します。
DevOpsをより深く理解するために
ここで、より理解を深めるためにDevOpsの周辺について軽く紹介します。
まず、頻繁にリリースをするという考えは、継続的デリバリー(または継続的インテグレーション)からの要請です。DevOpsは、継続的デリバリーの中でインフラ寄りの取り組みにあたります。
また、このリリースサイクルを「スプリント」と言い換えれば、アジャイル開発手法の1つであるスクラムとの関連も見えてきます。このスクラムという手法は、“The New New Product Development Game”という論文を参考に開発されました。この論文は、不確実性の強い新製品の開発に対する組織的なアプローチについて考察したものです。
前者も後者も継続的にインテグレートしていくという姿勢では同じですが、特に前者からはDevとOpsの技術的な関係を、後者からは組織論的なアプローチを学ぶことができます。
これからDevOpsを始めるならば……
冒頭で説明したように、DevOpsはツールではなくプラクティスです。このため、どこから始めたら良いのか分かりにくいと思います。
そこで、これからDevOpsを実践される方への切っ掛けとして、これからのエンジニアに求められることやDevOpsを実践する際の注意点を説明し、本稿のまとめとします。
これからのエンジニアに求められることとは?
カルチャーを支えるために、これからのエンジニアには、明確な専門性に基づくテクニカルスキルが強く求められるようになります。
DevOpsはビジネス要求から産まれたものであり、ビジネススピードに追従するにはこれを避けては通れません。しかし、人は基本的に変化を好まない生き物です。DevOpsを実践するには、システムのみならず組織との関わり方も大きく変えなければなりません。この変化に際し、組織とシステムのよりどころになるカルチャーの存在は大きな役割を果たします。
そのカルチャーは、経営方針だけではなく、お互いの専門性を尊重し、信頼、協力できる関係の上に築かれるものです。これまでエンジニアは、アサインされた役割で仕事をしてきました。しかし、これからのエンジニアには、カルチャーの土台となる信頼関係を構築するために、より明確な専門性に基づいた役割を強く求められるようになります。例えば、ミドルウェアのパフォーマンス問題が発覚したときに「この問題は彼に相談してみよう」と指名されるような専門性を持つエンジニアに変わっていかなければならないのです。
DevOps実践時の注意点
DevOpsを実践するに当たり、注意したいことが2点あります。
1点目は、性急な変化を求めないことです。性急な変化は、多くの人から反発されるだけです。カルチャーが短期間では根付かないように、強引に進めてもDevOpsは実現されません。まずは、影響やリスクが少なく、手を付けやすいところから始めるのが良いと思います。
例えば、Webサーバは比較的新陳代謝が早い上に、同じ構成の多数のサーバから成っているため、Chefなどによる管理へ移行しやすく、大きな効果を得ることができます。実際、先日、FacebookがChefを採用したことが発表されましたが、このリリースの中で「Web層についてはChefで管理している」と明言されています。想像でしかありませんが、その大きな理由は上記によるものと思われます。
2点目は、多くの人を巻き込むことです。DevOpsはカルチャーをも含む大きなテーマであり、これを実践するにはテクニカルな知識だけではなく、経営陣とも話ができる広い知識が必要となります。
しかし、これらの知識を1人で持つ必要はありません。経理、マーケティング、営業など、多くの人はそれぞれ専門性に基づいて働いています。非常に困難なことではありますが、多くの人を巻き込み、それぞれの専門を持ち寄ることです。まずは、あなたの周囲の方々に関心を持つところから始めてみてはいかがでしょうか。
千葉 則行
株式会社エクシード 取締役 CTO
2013年2月、“Let Engneers Free!”を合言葉にChefをベースにしたシステム運用自動化フレームワークサービス"cloudrop"を開発、発表しましたが、基本はOSSを利用したシステムの構築、運用経験を主とするインフラエンジニアです。
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