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Windows 8.1 Previewに見え隠れする、情シスへの真のインパクト無視できない、リリースサイクル短縮化の真意

Windows 8.1 Previewが公開され、再び市場の関心が高まる一方、米MicrosoftはWindowsのリリースサイクルを短縮化する方針を打ち出した。これらが企業ユーザーと情報システム部門におよぼす真のインパクトとは何か?

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Windows 8.1 Previewを基に考える“業務環境の今”

 2012年10月26日に登場したWindows 8は、タイル型のタッチインターフェイス、スタートボタンの消失をはじめ、UIや使い勝手が大きく変わリ、市場に賛否両論をもたらした。とりわけ日々の業務でWindowsを使う企業ユーザーの間では、“大きな変化”がネガティブに受け止められる傾向が強かった。

 こうした中、2013年6月27日にWindows 8.1 Previewが公開され、再び市場の関心が高まる一方、米MicrosoftのCEO スティーブ・バルマー氏は「高速リリースサイクルをWindowsにも適用する」方針を発表した。これにはモバイル市場におけるiOS やAndroidとの競争力確保が背景にあるといわれているが、企業ユーザーの間では、OSの頻繁なバージョンアップに伴うコスト、リスクを懸念する見方が広がっている。

 長年の間、多くの企業においてビジネスの遂行環境となってきたWindows。そのバージョン8.1の登場をはじめ、XPからの移行問題、モバイル利用によるWindows以外のOSの浸透、リリースサイクル短縮化など、昨今、業務環境=OSを取り巻く状況はあらゆる変化にさらされている。コンシューマーの視点で見れば、ある種楽しみな状況といえるが、ビジネスを遂行する企業にとって先を見通せない楽しみは一転、リスクになり得る。

 では今後、ビジネスの進展をより安定的・継続的に支え続けるためには、何に留意し、どのような展開を念頭に置いておけばよいのだろうか?――ガートナー ジャパン リサーチ IT インフラストラクチャ&セキュリティ シニアアナリストの針生恵理氏に、Windows 8.1 Previewの話題を中心に、Windowsを取りまく現状と、情報システム部門が留意すべきポイントを聞いた。

MicrosoftのWindowsリリースサイクル短縮化が示唆するもの

 「Windows 8.1 Previewの8からの大きな変更点としては、スタート画面への切り替えボタンの設置、起動直後のデスクトップ画面の表示、Internet Explorer 11が挙げられる。特にUIに関する前者2つの機能は、操作性の面でWindows 8を避ける企業も少なからずあった点で望ましい変更といえる。またWindows 8はWindows Defenderのマルウェア対策など、セキュリティ機能が7から向上しており、8.1もそれを継承している。これらは確かに企業で注目されるポイントだ」

 Windows 8.1 Previewの変更点について、針生氏はまずこのように解説する。ただ企業ユーザーへのインパクトとなると、「2013年7月現在ではPreview版であり、現在公開されている情報の範囲内で判断すればの話だが」と前置きした上で、「結論からいえば、Windows 8.1の企業導入に対するインパクトは小さい」と評する。その最大の根拠は、既存アプリケーションとの互換性だ。

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ガートナー ジャパンの針生恵理氏

 「多くの企業が使い続けているレガシー32bitアプリケーションとの互換性担保に関する機能向上が見られれば、企業にとって大きなインパクトがあったと思う。しかし8.1の正式リリースではそこまで進展しないと考える。また、タッチUIに対応するアプリケーション開発を支援する何らかの仕掛けが用意されたわけでもない。既存アプリケーションの移行と、新しいUIのアプリケーション開発というWindows 8/8.1浸透のキモといえる2つのポイントがそのままである点で、現時点では企業にとってのインパクトは限定的と評価する」

 無用な変化を避けたい企業にとって、確かに既存のWindows資産との互換性は移行の大きな鍵になる。加えて、企業におけるOS移行の意思決定は、クライアントPCの移行や、OS/アプリケーションのサポート切れなどによって行われる場合が多く、「新機能に対する評価は相対的に優先順位が高くない」。こうした点で、Windows 8.1でいかに機能が改善・追加されようと、移行に踏み切らせるだけの動機付けにはなりにくいというわけだ。

 ただそうなると、大方が考えるようにバルマー氏が表明した「Windows のリリースサイクル短縮化」は、Microsoftにとってタブレット市場での競争力確保にはつながるが、新OSへの移行促進という面では不利に働くことになる。針生氏もその点はMicrosoftにとってジレンマであることを指摘する。だが同時に、グローバルではWindows依存アプリケーションの比率は急速に下がる傾向にあり、どの実行環境でも動作するOSニュートラルなアプリケーションが増えつつある点で、Windowsのリリースサイクルが速くなっても「それを受け入れる土壌はある」と解説する。

 特に注目すべきは、Windows依存アプリケーションが減っている“3つの背景”だ。1つはOSやOSのバージョンに依存しないアプリケーションの開発によって、多くの企業がOS移行の手間削減を狙っていること。2つ目はWeb/クラウドベースのアプリケーションが増えつつあること。3つ目は競争力強化のために、多くの企業でiOS、Androidなどを搭載したマルチデバイスの浸透が進んでいることだ。

 その点、日本企業はどうか? マルチデバイス化は進みつつあるが、アプリケーションは依然としてWindowsに依存したものが多い。特にカスタマイズしたアプリケーションや自社開発アプリケーションの比率が高く、グローバルでは約3割であるのに対し、日本では約6割といわれている。エンドユーザーの業務環境を取り巻くグローバルのトレンドに対し、これらが意味することとは何か?

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 針生氏は、日本企業がリリースサイクル短縮化を受け入れる土壌は「少なくともクライアントPC上では作れないのではないか」と予測する。だが同時に、Windows依存アプリケーションの減少、Web/クラウドベースのアプリケーション増加、マルチデバイスの活用という“3つの背景”が、MicrosoftのWindowsリリースサイクル短縮化という判断を支えるものであると同時に、“企業が競争力を確保する上での1つのトレンド”でもあることを示唆する。

 無論、MicrosoftにはOS移行に向けた一層の支援を期待したいところだ。だが企業側も、市場で勝ち残るためにはエンドユーザーの業務環境を取り巻くトレンドを見据え、何らかの方策を考えておくことが重要なのではないだろうか――情シスの社内プレゼンス向上に役立つコンテンツを無償ダウンロード提供する「TechTargetジャパン プレミアム」。その第8弾となる『8.1 Previewで問い直す、Windowsトレンドと今、情シスが持つべき着眼点』ではWindowsを取り巻く状況を整理するとともに、タブレットOSの使い分けなど、マルチデバイス化の話題を中心に今後検討すべき施策の考え方を探った。Windowsといえば「新機能」や「移行問題」といった話題が多い中、今目の前にあるテーマの一歩先も見据えてみてはいかがだろうか。

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