規模と用途で考える仮想環境バックアップの勘所:業務で使えるバックアップの基礎知識(3)(1/3 ページ)
なかなか解決に至らず、相談を受けることが多い話題の1つに、仮想環境のバックアップがあります。今では仮想環境のバックアップソリューションも2極化しており、システム規模や運用方法に合わせて選ぶことが重要です。
前回は、バックアップに関して知っておくべき技術や方法について説明しました。第3回となる今回は、仮想環境のバックアップについて取り上げます。なかなか解決に至らず、相談を受けることが多い話題の1つです。
企業システムに広く浸透する仮想環境
仮想化市場はこの数年、堅調に拡大しています。企業のシステムに広く浸透するにつれて、小規模から大規模までさまざまな仮想環境が構築されています。業務に直結する重要なシステムも、物理環境から仮想環境への移行が進んでいます。さらに業務データの増加に伴い、仮想環境で処理されるデータ量も増加の一途をたどっています。
仮想化ソフトウェアも進化し続け、より大規模な環境の構築を可能にしています。加えて、ハードウェアの利用効率を高め、運用に掛かるコストを低く抑えるためのさまざまな機能が提供されるようになりました。仮想環境を導入する際のハードルは年々下がり、仮想環境はより身近なものとなっています。
これらの状況から、業務システムは今後も仮想環境への移行が拡大し続け、仮想環境上に存在する各種業務データは増え続けると考えられます。
希望通り体制を整えられているのはまだ少数
仮想環境で稼働する業務システムの重要度が高まるにつれて、仮想環境に構築されたシステムのバックアップの重要度も大きく増しています。バックアップソフトウェアにも、仮想環境に対応したものや、仮想環境専用のものが登場しています。こうしたさまざまなソリューションでカバーできているように思える仮想環境のバックアップですが、バックアップ体制を希望通りに整えられているユーザーはまだ少数です。
考えられる理由はいくつかあります。1つ目は、仮想環境に移行するのにまだ手いっぱいで、バックアップにまでは予算などを含めて手が回らないからです。2つ目は、まだ仮想環境への移行途中であり、移行が完了するまではバックアップへの投資を見合わせたいからです。3つ目は、仮想環境が段階的に導入されており、その都度バックアップソリューションを用意したことから、統合やリプレイスが困難となってしまったためです。
このように、仮想環境への移行が重要視される半面、残念ながら、バックアップまで手が回らないか、もしくは仮想環境の拡大につれて複数のバックアップソリューションが混在するなどして手が付けられないといった傾向が、仮想環境を導入した企業に見られます。
仮想化を導入する前は、システム全体のバックアップを、物理サーバごとに分けて考えられました。しかし、業務システムが仮想環境へ移行してからは、仮想環境そのものが業務システムとなりました。その環境のバックアップを取るということは、いかに業務システム全体のバックアップを考えるかということを意味します。
導入しやすいからといって、物理サーバごとや仮想マシンごとにバックアップを分けて考えてしまうと、バックアップの構成が複雑になり、運用管理が煩雑になってしまいます。業務環境全体のバックアップを考慮すると、拡張性に富んだソリューションを最初から綿密に比較検討して作り上げなければならず、管理者には負担の大きなタスクとなります。その結果、バックアップの導入を延々と先に延ばしてしまうほか、バックアップを取得できないリスクを避けるために暫定的なバックアップソリューションを導入し、その後放置してしまうなど、バックアップ環境の整備は後手に回ってしまうのです。
このように仮想環境の導入拡大に伴ってバックアップの負担がより大きくなり、課題はむしろ増えつつあります。
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