DevOpsツールのベンダ動向に探る、実践のヒント:DevOpsベンダ動向まとめ(1/3 ページ)
DevOpsに対する関心の高まりとともに、各ベンダが提供している支援ツールも出そろってきた感がある。各ベンダのDevOpsに対する解釈と製品動向からDevOps実践のヒントを探る。
開発部門と運用部門の壁を解消し、ITサービスのリリースサイクルを速める概念「DevOps」。この考え方が関心を集めている背景には、市場環境変化の加速があるといわれている。というのも、昨今はITサービスを入念に企画・開発し、時間をかけてリリースするスタイルでは、リリース時には既にニーズとずれている、といったことが起こりやすくなっている。市場ニーズに追従するためには、ITサービスを短期間でリリースして市場の反応をうかがい、要望をくみ取りながら短いスパンで改善を重ねるアジャイルのアプローチが鍵になるためだ。基本的な考え方については、以下の記事に詳しい。
- いまさら聞けない「DevOps」
- DevOpsは、ソフト開発とビジネスをつなぐ架け橋(@IT Special)
ただ、DevOpsという言葉の解釈は人や立場によって異なる。「開発部門と運用部門の壁をどう解消するのか」という問題に対しても、例えば「コラボレーション」「テスト自動化」など、人によってさまざまなことを想起する。では現在、DevOpsという言葉はどのように捉えられ、どのような点が実践のポイントになると考えられているのだろうか? 支援ツールを提供している3ベンダの考え方とツール動向に、DevOpsのヒントを探ってみたい。
DevOpsはリーンスタートアップの手段――日本IBM
日本IBMではDevOpsの意義を表す概念として「リーンスタートアップ」という言葉を掲げている。2013年6月、米国で行われた米IBMの開発者向けイベント「IBM Innovate 2013」では、ビジネス分野で注目を集めている経営書『リーンスタートアップ』の著者、エリック・リース(Eric Ries)氏が基調講演に登壇。「試行と検証による継続的なイノベーション経営」を示す概念であることを解説した。
同社では、その実践手段としてDevOpsを位置付けている。つまり「開発と運用の密接な結合にとどまらず、事業部門も含むプロセス全体の改善を狙う、企業としての取り組み」と定義している。IBMソフトウェアグループのIBM Rationalゼネラルマネージャであるクリストフ・クロックナー(Kristof Kloeckner)氏は、IBM Innovate 2013において次のように解説している。
「IBMはこれまで、『統制のとれたアジャイルなデリバリ』という言葉を推進してきた。だが、アジャイルという言葉は開発プロセスに注目しすぎだ。そこでIBMでは、コンティニュアスデリバリを実現するために企業が整備すべきエンタープライズケイパビリティ、つまり、組織、プロセス、ツールを表現する言葉として、DevOpsを選んだ。コンティニュアスデリバリは、デリバリの加速を最もラディカルな形で実現するものだ。リーンやアジャイルは、開発者の部分で始まり、終わるものではない。フロント部分ではビジネスが関わり、バックエンドではオペレーションが関わる。一方、DevOpsの中核は常にアジャイルだ」(『開発者がアジャイルなだけでは十分な価値が生まれない、IBMのいうDevOpsとは』より抜粋)
これを受けて、DevOps支援ツール群も「ビジネスゴールに合ったアプリケーションポートフォリオの策定・調整」「コラボレーティブな開発とテスト」「リリースとデプロイプロセスの自動化」「リリース後のアプリケーションのモニタリングと最適化」といった具合に、ソフトウェアライフサイクル全体をカバーする製品群を用意している。
具体的には、製品ポートフォリオを管理するための意思決定支援ツール「Rational Focal Point」、アプリケーションライフサイクル管理を支援するスイート製品「IBM Rational CLM(コラボレーティブ・ライフサイクル・マネジメント)」などを用意している。
このうちIBM Rational CLMは、ステークホルダーのニーズを統合管理し、ビジネス目標に必要なアプリケーションのみに絞ることで無駄な開発を抑止する要求定義ツール「IBM Rational Requirements Composer」と、構成管理、変更管理などの機能を1パッケージに集約し、各チームメンバーが開発資産/情報を共有して作業を進められる「IBM Rational Team Concert」、テスト・品質管理を支援する「IBM Rational Quality Manager」の3製品で構成。これによって、アーキテクト、プロジェクトマネージャ、開発者、品質管理担当者など、ソフトウェア開発の全ステークホルダーがリアルタイムに必要な情報を共有し、チーム全体でソフトウェアライフサイクルの最適化を図れる仕組みとしている。
また、2013年7月11日にはソフトウェアデリバリ管理の自動化ツールである「UrbanCode」の日本国内での提供開始を発表。UrbanCodeは、2013年4月に米IBMが買収したUrbanCode社が開発した製品で、アプリケーションデプロイプロセスのGUI設計および可視化、開発プロセス管理などを行う。「UrbanCode Deploy」「UrbanCode Release」「UrbanCode Build」など、開発から運用に至る各プロセス向けの独立したツールがあり、「今後、Rational製品群に加わることで、より柔軟にニーズに対応できる」(日本IBM広報)としている。
詳しい情報は以下の記事にまとめられている。
また、同社の場合、アプリケーションの開発から検証、デプロイメント、運用までのプロセスを同社クラウドサービス上で完結できるサービス、「IBM SmarterCloud Application Services(SCAS)」を用意している点も特徴だ。これについては『「クラウドDevOps」サービスを国内で正式発表、日本IBM』を参照してほしい。
DevOpsはリリースサイクルの加速によって、自社ビジネスを合理的かつ効率的に発展させるための手段。開発部門と運用部門の壁を解消するだけではなく、ITサービスをリリースした後の改善までを視野に入れ、ビジネスサイドも含めた全ステークホルダーのコラボレーションを促している点がIBMの特徴といえるだろう。
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