DeNAのサービスが強い、速い、本当の理由:特集:DevOpsで変わる情シスの未来(3)(1/4 ページ)
事例を交えてDevOpsをさまざまな角度から探る本連載。今回は「Mobage」をはじめ各種サービスを提供しているDeNAの強さの秘密を、同社の開発・運用体制に探る。
MobageなどDeNAのサービスを支えるものとは?
スマートフォンの浸透など、ソーシャルゲームを取り巻く市場環境変化が続く中、ソーシャルゲームプラットフォーム「Mobage(モバゲー)」の堅実な海外展開や、スマートフォン向け音楽アプリ「Groovy」など新サービスのリリースを重ねているDeNA。同社もDevOpsを実践してきた1社であり、その効用はサービスリリースサイクルの速さ、市場ニーズの迅速な反映といった点に現れている。
ただ同社の場合、DevOpsという言葉が登場するはるか以前から、「開発部門と運用部門の連携」に取り組んできたという。つまり「DevOpsという方法論」を取り入れたわけではなく、「すでに実践していたことが、後からDevOpsと呼ばれるようになっていた」という独自の経緯を持っている。
だが周知の通り、ひと口にDevOpsといっても定義や方法論は一様ではない。ではDeNAの場合、どのようなことをDevOpsと捉え、何を実践しているのだろうか? DeNA システム本部 本部長の茂岩祐樹氏に話を聞いた。
創業当初に自ずと醸成された「協力し合う文化」
「DevOpsという言葉を初めて聞いたのは3年ほど前でしょうか。ただ、『組織の壁を作らない』という概念は、DeNA全体でも大切にしてきた考え方だったので、すでに自分たちでもやっているなと感じましたね」
茂岩氏はDevOpsという言葉を知った時の印象をこのように語る。同氏が所属するシステム本部は、サーバやネットワークの管理を行うインフラ部門、各種サービスや社内システムのセキュリティを管理するセキュリティ部門、新サービスの品質管理を行うQA部門で構成され、茂岩氏はシステム本部長として3部門を統括している。
とはいっても、開発部門も含めて「部門間で壁を作らない文化」は茂岩氏が作ったわけではなく、同氏が入社した1999年、DeNAが創業したばかりで企業規模がまだ小さかったころに、自然発生的に醸成されたものなのだという。
「当時、インフラ部門は私を含めて2人、開発は4〜5人という規模でしたから、いやでも一緒にやらないと死んでしまうわけです(笑)。そうした中でお互いの仕事を理解する、相手の負荷を下げるためにお互いに協力し合う、という文化が自然に醸成されていったんだと思いますね。何か問題があればみんなで議論して解決する、といったことを当たり前のように行っていました」
茂岩氏は当時をそう振り返った上で、「部門間の壁を作らないポイントは、言われたことをやるといったように受動的にはならず、主体的に仕事に取り組むこと、また日々の業務の先にある共通のゴールを見据えること」と指摘する。
「DevOpsといっても、スピーディにリリースしたい開発部門と、安定運用が求められる運用部門という相反するミッションがある以上、当然、コンフリクトが生じるわけです。そこでお互いの利害関係だけを見て両部門の距離を広げてしまうのか、それとも、エンドユーザーに楽しんでもらう、会社の収益を上げるといった共通のゴールを見据えて、コンフリクト解消に向けて建設的な議論を行うのか、というところがDevOps実践の分かれ道だと思いますね。弊社も創業当時は余裕がありませんでしたから、自分の担当範囲だけを考えて局所最適などしていたら会社はつぶれてしまうわけです。そうした時代を経験したスタッフが、今、シニアスタッフとして組織を支えている。当時醸成された協力し合う文化は、今も着実に引き継がれていると思います」
では同社の場合、具体的にどのようなDevOpsを行っているのだろうか?
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