もしも、ビジョナリーなIT担当者がOffice365を導入したら?:岡山のITプロが考えるすごいOffice365の使い方
もし、ビジョナリーなIT担当者がOffice365を導入したら? 岡山発、IT企画担当者はここまで面白く社内業務をカイゼンできる。
岡山県に本拠を構える株式会社三友土質エンジニアリングは、地盤調査および地盤改良工事を主要事業とする企業。間もなく創立30周年を迎える。中国地区だけでなく、九州や北関東地区まで広く事業を展開していることから、79人の従業員のうち約半数は全国10拠点に分散している(2013年10月現在)。
同社は、本業である地盤調査や地盤改良工事で知られるだけでなく、先進的なIT活用に積極的なことでも知られている。というのも、同社のIT経営への取り組みは、経済産業省が主催する「中小企業IT経営力大賞」の認定事例(2010年度認定事例)をはじめとして多数の賞を獲得しているからだ。ITによる業務効率改善の成功事例として高く評価されている
導入の背景:NASの乱立、営業とバックオフィスの非効率な連携
「この規模の企業でここまでIT経営に力を入れるのはやり過ぎに見えるかもしれませんね(笑)」
そう話すのは、今回の取材に対応いただいた同社 総務部 総務課 主事 細川利治氏。同社におけるIT活用の成功を裏から支えている人物だ。
現在の総務部門に移る前から社内IT環境に貢献してきた細川氏。「情報の集中管理やガバナンスをいくら訴えても、利用者には響かない。だから、業務が楽になりメリットを感じられるように作り込めばいいのです」(細川氏)
細川氏は同社のいわば「たたき上げ」社員。地盤改良工事の現場が長かった細川氏は「そもそも屋外にいることが多かった」。一方で、大手取引先との業務システムのWeb化など、外部環境は刻々と変化していった。社内IT環境の整備が進むにつれ、いつの間にかITに明るい同氏がそれらのメンテナンスやサポートを担うようになっていった。その後、工事部から技術部、総務部と移籍する中で、文書管理システムの構築や自社販売管理システムの改善、ドメイン環境への移行にも携わるようになっていったという。
同社は事業所が分散し、また外回りの多い営業や現場とバックオフィスとの連携が非効率な点に課題があった。
「当社のように拠点が多数あり、社外にいる従業員が多い環境では、本社の目が届かないところで各地にNASが乱立し、夜遅くに出先や現場から帰社した後でバックオフィス部門とのやり取りが発生することが多いのです」(細川氏)
導入の経緯:営業支援システムの構築
社内情報の集約、情報ガバナンス、社内外での情報連携スピード向上を目指したシステム置き換えを検討している中で細川氏がOffice 365と出会ったのは2011年ごろ。細川氏はそれ以前から情報収集を進め、多様なツールを独自に比較検討していた。その細川氏が総合的に判断した結果、最も定着性や将来の発展性を見込んだのがOffice 365だ。
「システム置き替え検討中はGoogle Appsなどとも比較しましたが、業務上の利便性や使いやすさ、将来的に実現したい仕組みを実現できるOffice 365(当時のBPOS)を選択しました」(細川氏)
BPOSの導入は2011年9月に実施している。その後、Office 365の製品体制になってからはまず、2012年に「E3」を導入、新プランの発表を受け、現在は「プランM」を採用している。
「Office 365の採用で、バックアップなどの運用負荷が低減します。また、社外にいる従業員もネットワーク環境があればどこでも報告書を作成でき、バックオフィスとの連携も早くなります。機動的な事業活動を促進できると考えています」(細川氏)
細川氏は、既にOffice365を使った「営業支援システム」を構築、現在は「調査報告書システム」を構築中だ。報告書作成システムは2013年10月にリリースする(本稿取材時予定)。
まず取り組んだ営業支援システムでは、Office 365に含まれる「SharePoint Online」を採用している。同社では端末のリプレイスを定期的に行っており、それに合わせて随時Office 365環境に切り替えている。当面はSharePoint Serverを使ったシステムと併存するが、全ての営業端末でOffice 365が使えるようになる2013年末には、社外のどこからでもバックオフィスとの連携や、進捗動向が確認できるようになる仕掛けだ。
「Power Pivotは非常に便利なツール。営業支援ツールを構築する際に非常に役立った」(細川氏)
基幹システムとの接続ではExcelやInfoPathを活用、売上分析などはPower Pivotを使って誰でもひと目で分かる仕掛けだ。細川氏が自身のノウハウを詰め込んで作り込んだ画面は、業績などがひと目で分かるようになっている
システムには現場経験の長い細川氏らしいアイデアが詰まっている。営業支援システムの次にリリースを予定している調査報告書システムでは、位置座標などの調査情報を入力しなければ報告書を完了しないように作り込んだ。細川氏自身が技術者として情報を扱っていた時に、この部分もしっかり記録しておけば、後々有用な情報となることを知っていればこそ、いくつかの情報の入力を必須にしている。
こうした細川氏の積極的なIT施策を支援してきたのが、同じく岡山県に本社を置くピコシステム株式会社 Microsoft製品担当 井殿寿代氏だ。細川氏がシステム置き換えを検討していた際、展示会での積極的な提案活動の結果、交流が始まった。
「細川氏は非常にITを活用した業務改善に熱心な方。ビジョンを持っており実現したいことも明確でした。また、具体的に利用したい製品やサービスについても深く調査した上で議論していただけます」(井殿氏)
取材中も将来のIT戦略について議論を交わす細川氏と井殿氏(写真右)「細川氏はオンプレミスならば数千万円はくだらないであろう環境プラスαの仕組みを、Share Point OnlineとOffice 365を使って短期間で実現しました。製品の魅力にとことん付き合い、“自分が引退してもこの仕組みが残れば”と情熱を持って作り込んでくださったのです」(井殿氏)
導入の効果:全ユーザーがこの仕組みを利用すれば、皆がこの価値に気付きだす
同社では、これらITシステムの刷新と併せて、地質調査に関連する機材を一新している。調査データをクラウド環境に「現場から」送信できる機材だ。複合機から直接Office 365側にデータを送るサービスも試験中だ。PCを経由せずにスキャンしたデータを直接クラウド環境に送ることができる。
2013年末のPCリプレイス後は全ユーザーがWindows 7/8端末に移行する。そうすれば、社外にいる営業部員がバックオフィスの人たちとインターネット経由でつながるようになる。
「いま、この仕組みのメリットを理解してくれているのは恩恵を受けている一部の皆さんでしょう。しかし、全てのユーザーがこの仕組みを利用することになったら、皆がこの価値に気付きだすはずです。Office 365環境を提供し、かつ使いやすい仕掛けを用意することで、利便性が高まるだけでなく、安全で統制のとれた情報活用が可能になるのです」(細川氏)
今後の展望:自社の蓄積データが競争優位の核になる
実は細川氏、2013年10月にはActive Directory フェデレーション サービス(AD FS)も導入を予定している。なぜここまで? と疑問に思う向きも少なくないだろう。実はこれにも仕掛けがある。
「AD FSを導入するということはDMZを設置する、ということ。つまり、社内のデータを使った外部向けサービスが検討できます。この業界も動きが早く、異業種からの参入業者も多い。こうした環境の中で競争優位を保つには情報戦略は必須です」(細川氏)
先に、報告書作成支援システムでは位置情報と調査内容の詳細入力が必須になると聞いた。30年の社歴の中で同社が実際に蓄積してきた情報が、用途に応じて随時関係会社やパートナー企業に開放できれば、それだけオンラインでできることは増える。新しいビジネスアイデアが生まれる可能性もある。Office365を武器に細川氏は既に次の仕掛けを用意しているようだ。
※本記事は日本マイクロソフトにより提供されたコンテンツを一部編集の上、掲載したものです。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2013年12月7日