System Center Configuration Managerを用いたSAM効率化:ITエンジニアのためのSAM入門(3)(2/2 ページ)
皆さんは、「ソフトウェア資産管理(SAM)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? この連載では、ITエンジニアの方にSAMの背景や規格、正確な基礎知識を提供していきます。最終回では「Microsoft System Center Configuration Manager」を例に取り、SAM実践のステップをツールで効率化する方法を紹介します。
レポート
Configuration Managerには、収集したデータを集計したり、組み合わせて分析して、その結果をグラフィカルに表示するレポート機能が備わっています。Configuration Managerには、400種類以上の定義済みレポートが組み込まれているので、SAMの担当者が必要とする情報はほぼ定義済みレポートを使用して作成できます。
また、レポートの内容をExcelやxml、pdfなどのファイルにエクスポートすることもできます。
具体的には、次のような定義済みレポートをSAMに役立てることができます。
- ソフトウェア 01A:特定のコレクション内にインストールされているソフトウェアの概要
- ソフトウェア 02E:特定のコンピュータにインストールされているソフトウェア
- ソフトウェア 06B:製品別ソフトウェア
- ソフトウェア 07A:複数のコンピュータによって最近使用された実行可能プログラム
- ソフトウェア 09A:使用頻度の低いソフトウェア
- ソフトウェア 09B:使用頻度の低いソフトウェアがインストールされているコンピュータ
- ハードウェア 04A:複数ユーザー向けコンピュータ(共有)
- ライセンス 01A:Microsoft ライセンス ステートメントの Microsoft ボリューム ライセンス台帳
- ライセンス 02C:特定のコンピュータのライセンス情報
- ライセンス 04A:ソフトウェア ライセンスによって管理される製品の数
- ライセンス 06B:プロセッサ単位のライセンスをサポートする特定製品がインストールされているコンピュータ
- ライセンス 14A:Microsoft ボリューム ライセンス調整レポート
- ライセンス 15A:標準ライセンス調整レポート
こうした定義済みレポートのうち、[ソフトウェア 07A - 複数のコンピューターによって最近使用された実行プログラム]や、[ソフトウェア09A - 使用頻度の低いソフトウェア][ソフトウェア 09B - 使用頻度の低いソフトウェアがインストールされているコンピューター]などのレポートを作成するには、次に紹介するソフトウェア測定機能を有効にする必要があります。
ソフトウェア使用状況測定(ソフトウェアメータリング)
ソフトウェアの使用状況について、起動した日時、終了した日時、実行したユーザー/コンピュータなどの情報を収集します。使用状況を測定するソフトウェアは、管理者がソフトウェア使用状況測定規則を構成して指定します。
ここでは、ソフトウェア使用状況測定と資産管理インテリジェンスのソフトウェアインベントリの違いに注意してください。資産インテリジェンスのソフトウェアインベントリは「インストールされているソフトウェアの情報」を、ソフトウェア使用状況測定では「実行されたソフトウェアの情報」を収集します。
参考までに、ソフトウェア使用状況測定について、よくある誤りの1つを紹介しましょう。例えば、ソフトウェア使用状況測定で、保有ライセンスが25本のソフトウェアの起動情報を監視し、そのソフトウェアが同時に25以上実行されていないことを確認したとします。これでそのソフトウェアのライセンスコンプライアンスに問題がないといえるでしょうか?
――いいえ、いえません。なぜなら多くのソフトウェアは、インストールした段階でライセンスを必要とするからです。この例では、インストール数が25を超過していれば不正使用となり、ライセンスコンプライアンス違反です。
ソフトウェア使用状況測定は、ライセンスの効率的な使用や購入に役立てることができます。インストールされていても、まったく、あるいはほとんど起動されていないソフトウェアを確認することで、そのライセンスを別のコンピュータに移管したり、新しいバージョンのソフトウェアを購入する際に購入するライセンスを最適化したりすることができます。
ここまで資産管理ツールの例として、Configuration Managerを取り上げ解説してきました。こうしたツールは、SAMに必要となる情報を自動的に収集したり、レポーティングしてくれるので、導入によってSAMの一部のタスクを効率化することができます。
しかし、SAMで必要となる体制や方針、規程の策定、定期的なSAMの計画と実行、教育といった部分は、資産管理ツールの導入だけではまったく対応できません。繰り返しになりますが、資産管理ツールは、あくまでSAMの導入ステップの「STEP1:棚卸しの実施」と「STEP2:整理とマッチング」の一部のタスクを自動化、効率化するものであることを覚えておいてください。
Point! 「資産管理ツール - System Center Configuration Manager」
- 資産管理ツールを使用することで、「STEP1:棚卸しの実施」「STEP2:整理とマッチング」の一部のタスクを自動化、効率化できる。
- Configuration Managerのハードウェアインベントリ機能を使用し、組織のハードウェアの属性情報を取得することで、ハードウェア管理台帳の作成に役立てることができる。
- Configuration Managerの資産インテリジェンス機能では、Microsoftの提供する資産インテリジェンスカタログを使用し、インストール済みソフトウェアの属性情報を取得できる。この情報をソフトウェア管理台帳の作成に役立てることができる。
- Configuration Managerの資産インテリジェンスには、保有ライセンスデータをインポートする機能が組み込まれており、ソフトウェアインストール数とライセンス数のおおまかな突き合わせを行うことができる。
- Configuration Managerのレポート機能では、SAMに必要な情報を分かりやすく分析して表示したり、Excelやpdf形式ファイルに保存したりできる。
- Configuration Managerのソフトウェア使用状況測定機能を、ライセンスの効率的な使用や購入に役立てることができる。しかしほとんどのソフトウェアのライセンスはインストールした段階で必要となるため、ソフトウェア実行数の監視によってライセンスコンプライアンス違反を監視することはできない。
最後に〜Windows XP移行は大きなチャンス
現在のIT業界の大きな関心事の1つに、2014年4月9日のWindows XPのサポート終了が挙げられます。残り1000万台ともいわれるWindows XP……社内のWindows XPの移行作業に頭を悩ませている方も多いでしょう。
しかし、これはSAMの面から見ると、大きなチャンスと捉えることができます。社内のOS調査の機会にソフトウェアの棚卸しを実施し、クライアントOSのアップグレード時にライセンス契約の最適化を図ってみてはいかがでしょう? Windows XPからの移行を社内でのSAMの導入につなげることをぜひ検討してみてください。
以上、ITエンジニアの方を対象に、SAMの基礎的な部分、間違いやすい部分を3回の連載でご紹介しました。SAMについての理解を深める一助になれば幸いです。
著者プロフィール
高橋 桂子(たかはし けいこ)
1997年、NRIラーニングネットワーク(株)(現エディフィストラーニング(株))に入社。Microsoft認定トレーナーとして、Windows Server、セキュリティ、Forefront、Exchange、System Centerなどのインフラ系コースの開発、実施を担当。
2011年に、公認SAMコンサルタントの資格を取得し、SAMの入門から実務まで幅広いコースの開発、実施を担当している。なおエディフィストラーニングでは、SAMに関して幅広いコースを提供しています。詳細はこちらをご参照ください。
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