Windows Azureの“いま”を知る:進化を続けるマイクロソフトのクラウド(1/2 ページ)
マイクロソフトが展開するパブリッククラウド「Windows Azure」は、常に最新のテクノロジが惜しみなく投入され、日々進化を続けているクラウドサービスだ。多くの企業がクラウドの導入を進めている現在、Windows Azureはそうした企業のビジネス成長を加速させるプラットフォームとして、日々その存在感を増している。
Windows Azureは2010年に正式にサービスが開始され、現在も進化を続けているマイクロソフトのパブリッククラウドサービスだ。その進化のスピードは、同社が提供する従来の製品群と比べても目を見張るものがある。これまではプロダクトファースト、つまりWindows Serverの開発が優先であり、その機能を他のサービスに展開するという時代が続いていた。現在は“クラウドファースト”となり、Windows Azureに実装された機能がWindows Serverへとフィードバックされる流れになっている。それが顕著に表れたOSが、「クラウドOS」と呼ばれるWindows Server 2012 R2になる。
第一世代のWindows Azureは、Windows Server 2008 R2をクラウドサービス向けにチューンアップしたものだった。第二世代以降では、Windows Azure用に開発されたWindows Server 2012/2012 R2の性格付けが強く反映されている。オンプレミス製品のWindows Server 2012がリリースされてからわずか1年足らずでWindows Server 2012 R2がリリースされたのも、Windows Azureの進化と足並みを合わせるためだと考えられる。
クラウドサービスとしてのWindows Azure
マイクロソフトは1989年に最初のデータセンターを開設。以来、20年以上にわたってクラウドサービスを支えるデータセンターを運用し、現在では世界70カ国で約10億超のユーザーと2000万以上の企業が利用している。また、検索サービス「Bing」やメールサービス「Hotmail」などのサービスも含め、これまでのデータセンター運営で得られた知見とノウハウが蓄積されたクラウドサービスがWindows Azureになる。
マイクロソフトでは、さまざまなクラウドサービスを提供しているが、Windows Azureの位置付けは次の図のようになる(図1)。
Windows AzureはIaaS(Infrastructure as a Service)とPaaS(Platform as a Service)を提供しており、SaaS(Software as a Service)の部分は別のサービス(Office 365、Dynamics CRM Onlineなど)が提供する。
Windows Azureはマイクロソフトが提供するクラウドサービスの“ブランド”のようなものであり、そのブランドにはさまざまなサービスが含まれている。2013年12月末の時点で既に25以上のサービスが提供されており、今後もさらに拡充されていくようだ(図2)。
世界規模でのWindows Azureクラウド展開
Windows Azureは世界規模で展開されており、北米、アジア太平洋、ヨーロッパ、オーストラリアの4つの「リージョン」に分けられている。各リージョン内には最低2つの「サブリージョン」を設置するというポリシで運用され、北米には4つ、アジア太平洋、ヨーロッパ、オーストラリアは各2つのサブリージョンが存在する。なお、最近このリージョンとサブリージョンの名称が変更され、今後は「リージョン」が「ジオ(geo)」、「サブリージョン」が「リージョン」となる。
2013年末の時点では日本にはマイクロソフトのデータセンターがなく、そのことが日本企業がWindows Azureを利用する上での課題の1つだった。自社のデータが日本国外のサーバーに置かれることによるさまざまなリスクを懸念する企業が多かったからだ。
2014年には世界で5番目となる「日本ジオ」(旧リージョン)が創設され、東日本リージョンと西日本リージョン、2つのWindows Azureデータセンターが開設されることが発表されている(図3)。これまでデータセンターが海外にあることでWindows Azureを敬遠していた日本の企業ユーザーも、これで安心して利用できるようになるだろう。
Windows Azureにおける災害対策
日本国内にWindows Azureのデータセンターが設置されることで、日本の企業はこれを活用して、容易に災害対策(ストレージの冗長化)を強化できるようになる。大規模な災害時におけるデータの継続性を提供する目的で、アカウントデータを同じデータセンター内で3回複製する「ローカル冗長ストレージ(LRS)」と、アカウントデータをジオ内の2つのリージョン間で複製(レプリケーション)する「地理冗長ストレージ(GRS)」が利用できるようになるからだ。
■ローカル冗長ストレージ(LRS)
Windows AzureのBLOB(Binary Large Object)ストレージでは、仮想マシンインスタンスからの書き込み要求があった場合、3つの複製の作成が完了して初めて「書き込み成功」が返される。仮想マシンのディスクは通常のシンプルボリュームであっても、3本のディスクをミラーリングした場合と同等の堅牢性を持つ(図4)。これによりゲストOS上ではミラーボリュームの構成が不要となる。
■地理冗長ストレージ(GRS)
GRSはデフォルトで「有効」になっており、一次拠点で大規模災害が発生した場合などに備え、保存したデータは2次拠点に複製されて、フェイルオーバーが可能になる。プライマリ拠点からセカンダリ拠点への複製は、プライマリの書き込みとは非同期で行われているのでパフォーマンスへの影響もない。また、仮想マシンが保存されているBLOBストレージには既にLRSによって3重のレプリカが保存されているので、GRSとの組み合わせにより6重のレプリカが保持されることになる(図5)。
クラウドサービスの需要予測と求められているプラットフォーム
企業ユーザーがクラウドサービスに求めるものは、(1)完成されたサービスを利用する「SaaS」、(2)アプリケーションは自ら構築し、土台となるデータベースやミドルウェア層以下のサービスを利用する「PaaS」、(3)OSから全て利用する「IaaS」の3つに大別できる。いずれもハードウェア部分の管理はクラウドサービスのプロバイダーに委任できるので、情報システム部門における管理者の負担減と、サービス提供に専念できることが大きなメリットになる。
IT専門の調査会社であるIDC Japanの予測によると、IaaSとPaaSの重要性は今後さらに拡大し、特にPaaSの伸びが注目されるという(出典:IDC Japan、2013年10月『国内パブリッククラウドサービス市場予測を発表』)。システム構築におけるインフラやOSへの投資コストを減らし、システムの実態であるアプリケーションの開発・運用を重視した戦略を採っていくという時代になってきたのだろう。
Windows Azureは特にIaaSとPaaSをターゲットとしてサービスを提供しており、マイクロソフトの市場動向の把握が的確なものであると理解できる。
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