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BIだけでは収益向上が難しい理由SAS、2014年は分析ライフサイクル構築支援に注力

2013年、38年間連続の増収増益を記録したSAS Institute。2014年は製品提供とコンサルティングを通じて、分析ライフサイクル全体の構築を支援するという。

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 SAS Institute Japan(以下、SAS)は3月5日、「2014年ビジネス戦略発表会」を行い、4つの注力分野を発表した。Web、店舗など、各種コンタクトチャネルで得られたデータを使って精細な顧客動向分析を支援する「Customer Intelligence」、データの可視化や予測モデル開発を支援する「Visualization」、データ品質管理を支援する「DataManagement」、以上3分野の製品提供に注力するとともに、各種製品と「Hadoopの統合」も推進。意思決定を迅速かつ合理的に行える分析環境の構築支援を通じて、「企業の収益向上と日本の経済発展に寄与していく」という。

マルチチャネルの顧客動向分析を強化。IoTにも注力

 SASは2013年、前年比5.2%増の30.2億ドル(約3092億円)と過去最高の売上高を記録し、グローバルで38年間連続の増収増益となった。特に、データ可視化・分析ツールの「SAS Visual Analytics」は2012年3月の発表以来、グローバルで1400社以上が導入。日本を含む北アジア地域はグローバルの中でも最も高い成長率を記録したという。

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SAS 代表取締役 吉田仁志氏

 代表取締役 吉田仁志氏は、「日本国内でもマーケティングにおける顧客分析や、金融機関におけるリスク分析に向けた製品需要が伸びている。特に2013年は、新規の顧客、新規の分野で導入される例が目立つなど、多くの企業でアナリティクスの価値が認知された年だった」と総括。こうした企業動向を踏まえ、2014年は4つの分野に注力していくという。

 1つは「Customer Intelligence」。クチコミを随時共有できるWebやモバイル、Eコマースなどの進展を受けて、企業から顧客へのパワーシフトが起こっている。そうした中で収益を向上させるためには、「顧客を深く理解」し、「客観的な根拠を基に迅速に意思決定する」アプローチが不可欠となる。そこでSAS Visual Analyticsをはじめ、Customer Intelligence分野の製品提案を強化。「Webや店舗など、全てのコンタクトチャネルの情報を基に、顧客動向を立体的に分析可能することで、全チャネルでのコミュニケーションを最適化したりパーソナライズしたりするなど、顧客体験価値向上の取り組みを支援する」(マーケティング&ビジネス推進本部長 北川裕康氏)という。

 2つ目は「Visualization」。大量データを任意の観点で可視化するSAS Visual Analyticsの機能を拡張し、将来予測を行うためのモデル開発の機能までカバーする。

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SAS マーケティング&ビジネス推進本部長 北川裕康氏

 3つ目は、分析ライフサイクルを支える各種製品とHadoopの統合。「非構造化データを扱いやすく、容量が足りなければハードウェアの追加で柔軟に対応できるHadoopは、データストアとして最適だと考える。各種製品とHadoopの統合によって、高価なRDBMSからデータウェアハウスを解放することが狙い」(北川氏)。

 そして4つ目は「DataManagement」。正しい分析結果を得るためには、データ品質の担保がカギとなる。そこでHadoopや、データベース上で各種データ処理を行うIn-Database機能を生かして、大量データの品質管理を迅速・効率的に行える仕組みを提供していくという。また、センサーやスマートメーターなどで収集した大量データをストリーミング処理し、リアルタイムに分析できる機能も提供予定。「IoT(Internet of Things)へのニーズの高まりを受けて、既にセンサー&プロセス事業部を立ち上げている。リアルタイムの分析結果を次のアクションにつなげるイベント駆動型のデータ処理も提案していく」という(北川氏)。

BI(Business Intelligence)とBA(Business Analytics)は違う

 ただ周知の通り、分析ツールだけではデータを収益・ブランド向上につなげることは難しい。特に昨今、多くの企業で課題となっているのが正しい結果を導き出すためのデータ整備だ。マスターデータ整備は企業における恒常的な課題の一つでもあるが、これに着手できない故に分析に踏み出せない例が多い。

 この点について北川氏は、「最も重要なのは分析の目的を明確化すること。分析で何を得たいのか、ビジネスをどう変えたいのかを最初にはっきりさせることで、そのためにはどのデータが必要かを把握できる。それに応じて必要なデータから整備すれば、分析とビジネスの変革に着実に取り組める。ユーザー企業を見ていても、分析がうまくいっていない場合はデータ整備が目的化してしまっている例が多い」とアドバイスする。

 一方、吉田氏は、「過去の経験やカンではなく、合理的・客観的な分析結果を受け入れる企業文化と、分析を避けて通れないプロセスを定着させることが大切」と指摘。経営陣、業務部門、システム担当者、データサイエンティスト、アナリストといった各関係者がコラボレーションし、仮説立案、データ準備、データ探索、予測モデル開発・展開、モニタリング、次のサイクルへのフィードバックといった一連の分析ライフサイクルを回すことの重要性を指摘した。

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分析ライフサイクルを回すためには、ツールとともに、人、文化、プロセスが不可欠となる

 「特に、予測モデルは各企業に固有のもの。自社の状況に合わせて開発し、分析ライフサイクルを回しながら、常に現状に合うものに更新することが求められる。BI(Business Intelligence)とBA(Business Analytics)は混同されがちだが、BAはモデルを使って将来予測をし、適切な意思決定を支援する手段。BIは過去を分析する手段。事象の原因特定には利点があるが、それだけでは先が不透明なビジネス環境には対応できない」(吉田氏)

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分析ライフサイクル全体をカバーする製品群も提供していく予定

 吉田氏は、「日本では分析に関する教育が浸透していないこともあり、企業が分析を受け入れる土壌は、まだ十分に整っているとはいえない。そうした中で、将来予測を意思決定に役立てる Analyticsという取り組みが誤解されてしまうことは避けたい」と強調。今後も製品提案やコンサルティングを通じて分析ライフサイクル整備を支援することで、「真に役立つアナリティクスを広め、日本経済の活性化に貢献していきたい」と述べた。

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