検索
連載

アマゾンと楽天――大手Eコマースサイトを裏側で支えるCDN1ミリ秒でも早く〜次世代Web技術が支えるこれからのEコマース(4)(1/2 ページ)

Eコマースサイトにおいて、コンテンツ配信ネットワークの利用は日常化しています。ブラウザー型解析ツールの「HttpWatch」とオンライン解析ツールの「robtex.com」を使い、その裏側に迫ってみましょう。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 第2回「もはや当たり前? CDNとクラウドを活用した構成」で、国内Eコマースサイト1社当たりの売上・流通総額(推計値)を紹介しました(図1)。


図1 日本国内におけるEコマースサイトの2つの分類

 今回はシステムエンジニア目線で、さまざまなツールを使って国内大手Eコマースサイトの仕組みをひも解いてみようと思います。

 Eコマースサイトが拡大し、小規模から中規模、中規模から大規模へと成長していく段階で、企業のシステムエンジニアは、それまで経験したことがなかった問題を1つ1つクリアしていかなければいけません。国内大手の大規模Eコマースサイトの「今」を見ることで、「これから」のEコマース運用体制のヒントにしていただければと思います。

さらなる高速化へ向けたHTTP/2.0 SPDYの対応状況は?

 Webサービス全体の高速化に向けてGoogleが提唱する次世代Webサービス向けプロトコルが「SPDY」です。最近では、このプロトコルに対応するソフトウェア実装も出てきており、すでに幾つかのサイトで利用が始まっています。

 さて、国内大手Eコマースサイトである「アマゾン」と「楽天」でのSPDY対応状況はどうでしょうか? オンラインでSPDY対応状況をチェックできる「SPDYCheck.org」を使って見てみましょう。

 図2はSPDYCheckで「www.amazon.co.jp」をチェックした結果です。ご覧の通り、「Does Not Support SPDY」で未対応であることが確認できました。詳細は「Report Details」に書いてありますが、SPDYに必要な拡張メッセージがSSL/TLSから確認されていないので「未対応」と判断されています。


図2 「www.amazon.co.jp」のSPDYCheck結果

 図3は同じくSPDYCheckで「www.rakuten.co.jp」をチェックした結果です。www.amazon.co.jpと同様に「Does Not Support SPDY」で未対応のようです。


図3 「www.amazon.co.jp」のSPDYCheck結果

 2つのサイトという極めて母数の少ない調査ではありますが、これも、これからEコマースサイトの「SPDY対応」を検討する際の判断材料とはなるでしょう。導入を決断するにせよ、あるいは極めて「日本的」な考え方ではありますが「大手がやっていないから、われわれもやらない」と判断するにせよ、先行事例調査はとても重要です。どこに地雷(技術的・運用的問題)が埋まっているとも限りませんから。

Eコマースの裏側で動いている「CDN」の調べ方

 Webサービスでのクラウド利用は既に当たり前になってきました。同様にEコマースにおいても、特に大規模サイトではCDN(コンテンツ配信ネットワーク)の利用は日常化しています。これも過去の記事でご紹介した通りですね。

 ここではブラウザー型解析ツールの「HttpWatch」とオンライン解析ツールの「robtex.com」を使い、その実態に迫ってみようと思います。

 今回はCDNの仕組みを理解しやすいよう、手順を追って解説するため、「アマゾン」のEコマースサイトのみに絞って紹介し、「楽天」やその他Eコマースサイトの解析については次回以降に公開していきます。

 まずは、Eコマースサイトをより詳しく解析するためブラウザー型ツールである「HttpWatch」をインストールします(図4)。


図4 ブラウザー型HTTP解析ツール「HttpWatch」

 今回はFirefoxのアドオンをインストールしました。筆者の手元の環境は「HttpWatch Professional Edition」のため、そのように表示されていますが、無償版の「HttpWatch Basic Edition」でも十分な調査が可能です(図5)。


図5 Firefoxで右クリックし、HttpWatchを起動する

 次にブラウザー上で右クリックして起動したHttpWatchの「Record」ボタンを押し、Eコマースサイト名を入力してHTTP解析を開始します(図6)。


図6 HttpWatchでHTTP解析を始める

 Eコマースサイトへのアクセスが開始されると、HttpWatchのビュー側にさまざまな情報が表示されます。コンテンツごとのURLやデータ受信に要する時間、データサイズなど、その気になれば本当に詳細な情報まで分析が可能です。

 しかし、今回のテーマは「CDN」ですので、この中から「CDNを利用していると推測されるURL」のみを抽出してみます(図7)。


図7 HttpWatchからCDNと推測されるURLを抽出する

 ここで、「何を根拠にCDNを使っていると推定できるのか」を疑問に思う方もいるかもしれません。

 実は、筆者の所属するクロスワープでは、突発的にアクセスが集中する「大規模ECサイト向けSaaS(Software as a Service)」を運営しており、日常的にCDNを利用しています。この経験から、「頻繁に閲覧される画像などのコンテンツをCDNへ逃がす」ことで、Eコマースサイト本来が必要とする「受注・決済処理などにシステム資源を集中させる」といった運用ノウハウを蓄積してきました。ちなみに、小規模から中規模のEコマースサイトでは、コンテンツ配信と受注/決裁処理などが1つのシステムに相乗りしている場合が多く、突発的なアクセス集中や意図しないシステム負荷への機敏な対応が困難です。

 やや脱線しましたが、つまりHttpWatchの解析結果から「頻繁に閲覧される画像などのコンテンツ」を見つけ出せば、CDNを使っているか否かを推定できるというわけです。

 ここでは、HttpWatchの解析結果から、CDN利用が推測される「http://g-ec2.images-amazon.com/……」などのURLをピックアップしました。この情報を基にして、次はオンライン解析ツールの「robtex.com」を使って、さらに詳しくCDNの裏側を見ていきましょう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る