検索
連載

徹底比較! 運用監視を自動化するオープンソースソフトウェア10製品の特徴、メリット・デメリットをひとまとめ特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(2)(10/12 ページ)

運用自動化のポイントを深掘りする本特集。今回は「個々の作業項目の自動化」に焦点を当て、「Zabbix」「JobScheduler」「Sensu」など、運用・監視系の主要OSS、10種類の特徴、使い方などを徹底解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Zabbixのプロフィール

 Zabbixは1998年にZabbix SIA社の現CEO Alexei Vladishev氏が社内プロジェクト用に開発を行ったツールをOSS製品化したシステム監視ソフトウェアだ。サーバーやネットワーク機器の死活監視、およびリソース使用量の統計情報収集、グラフの生成を行う機能を持っている。ライセンスはGPLとなっており、全ての機能を無償で利用できる。

 Zabbixは2001年4月にVer 1.0 alpha版がリリースされ、2004年4月に正式版のVer 1.0をリリース。2005年4月にはZabbix SIAが設立され、商用サポートを開始した。最新の安定版は2014年07月17日にリリースされたVer 2.2.5。

特徴

 ZabbixはC言語/PHPで開発されており、全ての機能のソースが公開されている。集中管理サーバー「Zabbix Server」は各種Linux/BSD系のオープン系UNIXに加え、MacOS X/AIX/HP-UX/Solarisなどの商用OSでも動作する。

 サーバーの負荷分散のためのプロキシサーバー「Zabbix Proxy」も提供されており、監視情報の一時蓄積や、リソース使用状況のグラフ編集などの処理の負荷分散を図ることも可能。

 サーバーの稼働監視に利用するエージェント「Zabbix Agent」は各種Linux/BSD系のオープン系UNIXに加え、Windows OS/Windows Server OS/MacOS X/AIX/HP-UX/Solarisなどの商用OSでも動作する。さらにリモートコマンドを有効にすることで、集中管理サーバーから監視対象サーバーに対してコマンドを実行することも可能となる。

 収集したリソース使用状況や警告・障害検知などの情報はRDBに格納する。RDBはOSSのMySQL/PostgreSQL/SQLiteの他、商用のOracle/IBM DB2なども利用可能だ。

 公式サイトからコンパイル済みのインストーラーをダウンロードしてインストールすることもできるが、LinuxであればZabbix公式リポジトリを追加することでyum/aptコマンドでのインストールも可能となる。

 サーバー、ネットワーク機器の死活監視、リソース使用状況の監視は、ping/SNMP/IPMI/zabbix_agent/JMXのいずれかで行う。各種OS、ネットワーク機器で標準で利用できるテンプレートを利用することで、少ないオペレーションで監視・グラフ生成が可能。

 zabbix_agentに対応していないネットワーク機器や各種アプライアンス製品は、SNMPを解析するテンプレートを自分で生成することも可能だが、主要機材は有志による自作テンプレートが多数公開されており、それを追加テンプレートとして登録することで標準テンプレート同などの監視を行うことができる。IPMIを利用し、ハードウェアレベルでの死活・リソース状況監視のみではなく、ハードウェア状態の詳細情報の取得も可能だ。

ALT
Zabbixの画面イメージ《クリックで拡大》
ALT
Zabbixの画面イメージ《クリックで拡大》
ALT
Zabbixの画面イメージ《クリックで拡大》

 取得したリソース情報を正規表現や計算式で整形することができ、グラフ生成や閾値チェックなどを自由にカスタマイズすることも可能。ニーズに合わせた詳細な監視が行える。

 監視対象の自動検知機能も存在し、指定されたIPアドレスに対してping/SNMP/zabbix_agentのレスポンスを解析し、自動的に指定されたテンプレートでリソース情報の収集および死活監視を開始(オートディスカバー)することもできる。

 VMware ESXi環境の監視も強化されており、ハイパーバイザー部分の監視のみではなく、ハイパーバイザー上に生成された仮想マシンのオートディスカバーも可能。ただ、リソース状況監視で収集できるデータ量が大きいため、DB設計やメンテナンス設計を事前に行っておかないと、DB容量がすぐに肥大化し停止を伴うメンテナンスが必要となる事態が発生する。

 コミュニティの活動は非常に活発で、文献や、ユーザー提供パッチ/テンプレートの提供も多く、構築に当たっての情報収集や問題解決は比較的容易。開発も活発で新機能のリリースや不具合の対応もかなり早い上、コミッターがZabbix SIA社のメンバーのみとなっているため、製品の品質も安定している。

 Zabbix SIA社自体も積極的に開発を行っており、出資を受けたスポンサー企業の要望を受けてリリースする機能を選定している。また、要望があればZabbix SIA社が開発した機能でも全てOSSとして公開され、利用者は無償で利用することができる。

 国内でのサポートには、Zabbix日本法人サポートZabbix社の認定による国内パートナーが存在。さらに非公認の多数のベンダーによる構築・サポートサービスもある。

 今後のロードマップとして、「通信の暗号化」「ジョブ管理機能の搭載」「オートスケール」「クラスタリング機能の実装」などが予定されている。

 Zabbixの使用方法は、TISの池田大輔が以下の書籍にまとめている。ぜひ参考にしてほしい。

優位性と劣位性

優位性

  1. 製品の利用者、利用事例が多く実績や文献・資料が豊富
  2. 製品が多機能だが、操作が簡単でかつ必要な機能の取捨選択が容易
  3. 出資企業も多く開発ベンダーの経営が安定しており、製品品質も安定している
  4. ハードウェア、OS、サーバー仮想化製品ベンダーも正式対応を行いつつある

劣位性

  1. 監視が行えるパラメーター数が多く、取捨選択の判断にある程度の経験と知識が必要
  2. 有志が作成したテンプレートも多数入手可能だが、最終的には自分でカスタマイズして最適にチューニングする必要がある
  3. 多機能であるため、監視機能自体のリソース使用量も肥大化する傾向があり、負荷分散や監視対象の制限などの対策が必要となる
  4. 統合監視ツールとしてのジョブ運用制御の機能は存在しない(ただし、現状でもエージェントやSSHコマンドを利用して簡単なジョブを実行することは可能)

利用シチュエーション

  1. 他のOSSジョブ管理ソフトウェアと併用しての統合監視機能の実現
  2. 既に統合運用監視、ジョブ管理ソフトウェアが導入されている環境のリソース監視機能の強化
  3. クラウド環境上でのサーバー増減が発生する環境での自動監視の構築

 死活監視、リソース管理機能は商用製品と比較しても非常に高性能で、OSS/商用を問わずジョブ管理ソフトウェアと組み合わせて利用することで、より高度なリソース監視が行える。今後のロードマップにある「ジョブ管理機能の搭載」が実現すれば、単体で統合監視製品として機能させることも可能になる見込みだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

[an error occurred while processing this directive]
ページトップに戻る