ストレージ基盤をマルチテナントなクラウドアプリケーション運用に最適化するには?:「業務」を軸に考えるクラウド時代のストレージ基盤
パフォーマンスを売りにしたオールフラッシュストレージ製品が人気だ。しかし、実務で必要になる、階層化やデータ管理、システム管理といった、導入に伴うシステム再設計や運用工数は? オラクルの提案する解決策が「FS1」だ。
オラクルが満を持して送り出すフラッシュストレージ「Oracle FS1」
エンタープライズ向けストレージの世界は今、大きな変革の時期に差し掛かっている。既にコンシューマー分野ではすっかりおなじみとなったフラッシュディスクが、いよいよエンタープライズの世界でも本格的に普及し始めたのだ。
フラッシュディスクはHDDと比べ圧倒的に高速なアクセス速度を誇るが、その半面HDDより高価で、かつ書き込み処理の耐久性に限りがあるなど、大規模なエンタープライズ向けストレージの記憶媒体として採用するにはさまざまな課題があった。しかし、近年急速に技術革新と容量単価下落が進んだ結果、一気に身近な存在になってきた。現在では、全てのディスク領域をSSDで実装したオールフラッシュストレージ製品も、さまざまなベンダーから提供されるようになった。
そんな中、2014年10月にオラクルが満を持して発表したのが、「Oracle FS1 Flash Storage System」(以下、Oracle FS1)だ。一般的なオールフラッシュストレージ製品が、どちらかというとI/O性能やスループットの能力を重視する特定用途のための「特殊な製品」という位置付けなのに対して、Oracle FS1はエンタープライズ向けSANストレージの延長線上にある製品で、事実企業システム全般をカバーする統合ストレージ基盤として利用できるという。
あらゆる面において、一般的なオールフラッシュストレージ製品とは一線を画すOracle FS1。大変ユニークな機能や技術を満載するが、本稿ではこれらの中から特に注目すべき何点かの機能に絞って、同製品の技術面から見た特徴について紹介していく。
ビジネスとアプリケーションの観点に立ったインテリジェントな制御
現在市場に出回っているエンタープライズ向けストレージのほとんどは、データをそのアクセス頻度に応じて異なる速度・容量単価のディスクに自動的に配置する「自動階層化機能」を備えている。Oracle FS1はというと、オールフラッシュストレージとしての機能を持ちながら、SSDだけでなくHDDを混在させることができ、かつSSDとHDD、それぞれでアクセス速度の異なる2段階の階層を設けることで、きめ細かな自動階層化が行えるようになっている。
日本オラクル システム事業統括 ソリューション・プロダクト統括本部 プロダクト・マネジメント・オフィス プロダクトビジネス推進部 プリンシパルセールスコンサルタント 迎田俊樹氏によれば、同製品の自動階層化機能は、他社製品のそれとは明らかに一線を画すという。
「一般的なオールフラッシュストレージ製品では、高速性をうたっているものの、そのI/O処理を見ると、アプリケーションから送られてきたI/O要求を、入ってきた順にFIFO(First In First Out)で処理していく。しかし、Oracle FS1は『QoS Plus』と呼ばれる独自機能で、I/Oをビジネス優先度に応じて5段階に優先付けし、優先度の高いものから先に処理できる。自動階層化を行う際にも、過去の統計情報ではなくいま現在の状況を分析する。しかも、単にI/O頻度が高いものを高速なディスクに移動させるだけでなく、このQoS Plusで設定された優先度も考慮した上でインテリジェントな階層化制御を行う。これにより、ビジネスの優先度により即した自動階層化やI/O制御を可能にしている」
具体的には、個々のI/O要求を「Premium Priority」「High Priority」「Medium Priority」「Low Priority」「Archive Priority」の5段階に分類し、それぞれの優先度に応じてCPUコアやスレッド、キャッシュメモリといったリソースの割当量を調整している。では、実際にOracle FS1の利用者や管理者が、これらの優先度を設定するにはどうすればいいのか?
「アプリケーションごとに、最適な設計やプロビジョニングがあらかじめ定義されたプロファイルが用意されている。これを選択して1クリックするだけで、後は自動的にそのアプリケーションに最適化されたストレージ設定が施される。もちろん、QoSの設定もこれによって自動的に行われる」(迎田氏)
QoS Plusはオラクル製品以外を含む、主要なエンタープライズアプリケーション向けに調整・テスト済みのQoS Plus用プロファイルが用意されており、ワンクリックで適用できる。例えばOracle Databaseでは、表データ、各種ログデータ、一時ファイルなど、アプリケーションを構成する各コンポーネントごとのきめ細かな設定が施されており、パフォーマンス向上が期待できる
現時点では「Oracle Database」や「Oracle E-Business Suite(EBS)」「Oracle Fusion Applications」といったオラクル製アプリケーションの他、マイクロソフトやSAPの代表的なビジネスアプリケーションにも対応しており、全部で約70種類のプロファイルが用意されているという。また、自社開発アプリケーションに最適化したカスタムプロファイルをユーザーが独自に作成することも可能だ。
「このように、アプリケーションの観点から、インテリジェントな制御が可能になっている点が、Oracle FS1の最大の特徴だ。これは、Oracle DatabaseやOracleアプリケーションの開発部隊と密接に連携しながら開発してきた賜物。もちろん、こうした自動制御だけではなく、カスタムプロファイルを使えばユーザーが自ら細かく挙動を制御できるし、今後は内部動作に関する情報も積極的に紹介していく予定だ」(迎田氏)
ストレージドメインによってセキュリティとコンプライアンスも確実に担保
Oracle FS1は、セキュアなマルチテナント環境をサポートする機能も備えている。ストレージ容量全体をRAIDを構成する物理デバイスのグループ単位で「ストレージドメイン」と呼ばれるグループに分割できる。各ストレージドメインは"データコンテナ"として他ドメインからデータを分離し独立性を維持する。このため、複数組織や部門でのプライベートクラウドにおいて、あるいはパブリッククラウド環境下で、複数の企業間でOracle FS1を共有する場合、互いのデータ領域をセキュリティ境界によってしっかり分けることができるようになっている。
マルチテナントを実現する機能は、大規模システム向けのSANストレージとしてはさほど珍しいものではないが、オールフラッシュストレージとしては実装されている製品はまだまだ希少だ。
「一般的なオールフラッシュストレージは、特定用途向けに絞った使い方が前提となっているせいか、全体のストレージ容量も最大100Tバイト程度で頭打ちになることがほとんど。しかしOracle FS1は、1ノードを全てSSDで構成した場合で912Tバイト、全てをHDDで構成すれば3Pバイト近くの容量をカバーできる。これをさらに最大16ノードまでスケールアウトできるので、相当の容量を持つことができる。これだけの容量になると、やはり一般のSANストレージと同様に、ストレージ領域を複数に分けて管理できる仕組みが不可欠になる」(迎田氏)
先ほど紹介した自動階層化機能は、このストレージドメインの単位で行われる。すなわち、個々のドメインごとに異なる階層化の設定を行えるということだ。例えば、性能を重視する基幹アプリケーション用ストレージドメインには、高速SSDと大容量SSD(SLCおよびeMLC)で階層化を、そして主にバックアップ用途のストレージドメインは高速HDDと大容量HDD(1万rpmおよび7200rpm)による階層化を組む、といったきめ細かい制御が可能になる。
「こうした仕組みに、さらにプロファイルを通じたアプリケーションの優先制御を組み合わせることで、よりビジネスニーズに即した実践的な階層化を可能にしている。一般的な自動階層化の仕組みでは、例えば優先度の高くないアーカイブデータに対して一時的にアクセスが集中した場合、優先度の高いアプリケーションのデータを押しのけて高速SSDに移動してしまうようなことが起こってしまうが、Oracle FS1ならそうした事態の発生をあらかじめ防ぐことができる」(迎田氏)
フラッシュの高速性をより引き出す高密度データ圧縮技術「HCC」
自動階層化と並ぶ近年のエンタープライズ向けストレージ製品のトレンドともいえる機能が、重複排除だ。多くの製品が重複排除によるデータ圧縮とディスク容量節約の効果を喧伝する中、Oracle FS1はあえて重複排除の機能を打ち出すことをせず独創的なアプローチを展開している。その真意について、迎田氏は次のように説明する。
「重複排除機能が効くのは主にテキストファイルなどのファイルデータで、しかもその効果はせいぜい5倍程度。これがデータベースとなると、途端にその効果は薄れてくる。Oracle FS1はNASとしても使えるユニファイドストレージだが、その主たる用途はフラッシュの高速性を生かしたデータベース用のSANストレージであり、もともと重複排除の効果はさほど期待できない」
その代わり、Oracle FS1ではデータベース用途で効果を発揮する独自のデータ圧縮技術をサポートしている。それが、高密度データ圧縮ソリューション「Oracle Hybrid Columnar Compression(HCC)」だ。Oracle ExadataでおなじみのHCCだが、Oracle Database Enterprise Editionの特定バージョン以上においてOracle FS1との組み合わせで利用可能だ。
HCCは4段階のデータ圧縮率が設定可能で、最大では約50倍ものデータ圧縮が可能になるという。これにより大幅にストレージ容量を節約できるようになるが、迎田氏はむしろ「データ圧縮によるパフォーマンス向上効果」の方がはるかに大きいと指摘する。
「データ圧縮処理はサーバーのCPUリソースを消費するが、近年ではサーバーの性能はどんどん向上しているため、これはさほどの負担にはならない。むしろ、サーバー仮想化やストレージ統合によってサーバーやストレージの集約が進むにつれ、ネットワークを流れるデータ量が飛躍的に増えたため、ネットワークがボトルネックになるケースの方が多くなってきた。従って、HCCでデータを大幅に圧縮してネットワーク上を流れるデータ量を削減することは、即パフォーマンス向上に直結する」
このようにHCCは、NASストレージの容量を少しでも節約することを目的とした重複排除とは、根本的に目的を異にするものなのだ。SSDの高速性をより生かし、フラッシュストレージに対する投資をより有効活用できるのは、HCCの方だと言えるだろう。Oracle Database連携においては「Automatic Data Optimization(ADO)」にも対応しており、圧縮データの最適配置も可能となっている。
以上、Oracle FS1の特徴的な機能や技術を紹介してきたが、これらは同製品が備える数々の機能のほんの一部に過ぎない。本稿を読み、Oracle FS1に興味を持たれた方は、日本オラクルに詳細な情報を問い合わせてみるのもいいし、あるいは実際にその挙動を確かめたいという方は、日本オラクルの検証施設「Oracle Solution Center」内にOracle FS1の検証機が用意されているので、ぜひ実際にその目で確かめてみてほしい。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月31日