vSphere 6登場、マルチクラウド環境の統合プラットフォームとしての機能強化:VVOL、DockerライクなInstant Cloneも登場
OpenStackも、長距離ライブマイグレーションも、ストレージプロビジョニングも、アプリケーション集積率向上も、ハイブリッドクラウド統合運用も。ヴイエムウェアがOne Cloud構想に向け、ハイブリッドクラウドを前提とした統合クラウド基盤としての機能を強化する。
vCloud Air Hybrid Networking Servicesでオンプレミス/オフプレミスを透過に
2015年2月3日、ヴイエムウェアはVMware vSphere 6を始めとする同社製品群を刷新、併せて独自のOpenStackディストリビューションやストレージ基盤ソフトウェアなどを発表した。
これらの製品群の発表は、ハイブリッドクラウド環境を包括的に管理する統合基盤を標ぼうする同社「One Cloud」構想を実現するものと位置付けられている。
そもそも、ヴイエムウェアでは2014年に発表したパブリッククラウドサービス「VMware vCloud Air」の登場により、オンプレミス/オフプレミスともに共通ハイパーバイザーで運用ができるようになっていた。vSphere 6では650以上の機能追加が含まれる「VMware vSphere 6」の発表とともに、今回、VMware NSXとVMware vCloud Airを組み合わせたハイブリッドクラウド環境向けのネットワーク「vCloud Air Hybrid Networking Services」も発表しており、ネットワーク領域においても、オンプレミス/オフプレミスの垣根を超える運用を容易にしている(vCloud Air Hybrid Networking Servicesは現段階ではオンプレミス側に専用ゲートウェイが必要)。なお、VMware vCloud Airについては既に米グーグルとの提携が発表されており、「Google Cloud Platform」がvCloud Air経由で利用できるようになる。
vSphereユーザーが導入しやすいOpenStackディストリビューションの登場
vSphere 6の発表と併せて、VMwareによる検証済みOpenStackディストリビューション「VMware Integrated OpenStack」も発表した。vSphere上で同社検証済みOpenStackを展開、APIを介して統合運用できるというものだ。vSphere Enterpriseユーザーであれば無償で利用できる。このOpenStackディストリビューションの提供により、既存vSphereユーザー企業におけるエンタープライズDevOps環境構築、クラウドネイティブアプリケーション開発といったニーズを吸収できるとしている。なお、OpenStack環境については、vRealize Operationsなどの管理ツールを利用して透過的に管理できる。
I/O性能向上、オールフラッシュ構成にも対応したVirtual SAN 6
「VMware vSphere 6」に含まれる「VMware Virtual SAN 6」は、汎用サーバーを利用してスケールアウト型ストレージ環境を構築するソフトウェアだ。専用ハードウェア/専用ファームウェアを必要とせず、汎用サーバーで利用できる、いわゆるSoftware-Defined Storageの機能を提供する。今回、新たにオールフラッシュアーキテクチャに対応、writeキャッシュおよび永続データの階層化も実現した(別途アドオン機能として提供)。パフォーマンスは、旧版(VMware Virtual SAN 5.5)と比較して4倍のIOPS以上になっているという。ノード数は旧版の倍となる64ノードまで拡張できる。
「従来、VMware Virtual SANは本番環境での利用を推奨してこなかったが、バージョン6では、オールフラッシュ環境への対応や、ソフトウェア改良によるI/O性能の改善などにより、エンタープライズの本番環境で求められる要件を満たせるようになった」(同社 マーケティング本部 シニア プロダクト マーケティング マネージャ 桂島航氏)という。
VVOL:ポリシーベースのストレージプロビジョニングが多様な環境で実現
VMware Virtual Volume(VVOL)も正式にアナウンスした。仮想環境運用上の課題の1つとなっていた、ストレージ装置側のボリューム管理と仮想環境管理との分断(LUNとVMFS、VMDKの分断)を解消する機能を提供する。ハイパーバイザー側の情報をストレージ装置側に認識させ、連携するものと考えると分かりやすいだろう。
従来の仮想環境では、ボリュームの中にどのような情報が載っているかについてストレージ装置側が考慮することはなかったが、この機能を実装することで、ストレージ装置側から仮想マシンのキャパシティやデータサービスを動的にプロビジョニングできるようになる。
その際、ストレージ装置側の属性情報は、Virtual SANが提供する属性情報のようなポリシーベースの設定となる。属性については各ストレージ装置側の実装に依存する。
現段階で主要なストレージベンダーがVVOL対応を表明しており、第一弾は2015年6月までに出荷開始となる予定だという。
東京―シンガポール間でライブマイグレーションも可能なLD vMotion
vSphere 6そのものでは、650以上の新機能が盛り込まれている。中でも「Long-Distance vMotion」(LD vMotion)は、RTT100ミリ秒以内の環境であれば、ダウンタイムなしでライブマイグレーションを行えるという。ネットワーク環境に依存するが、会見では、東京―シンガポール間程度であれば、無停止で実行できる、という説明があった。
Dockerライクにサーバー集積率を高める「Instant Clone」(Project Fargo)
また、2014年の同社年次イベント「VMworld」で「Project Fargo」として発表した機能は「Instant Clone」として、正式にvSphere 6に搭載される。Instant Cloneは、VMの複製において差分情報のみを使うことで、Dockerにおけるコンテナ技術同様に、素早いプロビジョニングと、集積率を向上させる機能。
なお、今回のvSphere 6を中心とする各種発表では、ライセンス体系に変更はない。
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