「人」に着目しなければ運用自動化ができない3つの理由:自動化できない運用管理作業は、全体の8割
経営環境の変化に対応できる迅速・確実なITインフラ運用が、企業収益に直結する時代となった今、運用自動化があらためて注目を集めている。しかし、ツール・サービスだけ導入しても期待する効果は得られない。それはなぜなのか? 今まであまり語られなかった運用自動化の本当のツボを、豊富なSI経験を持つ伊藤忠テクノソリューションズに聞いた。
運用管理の3つの課題
ビジネス環境の目まぐるしい変化に合わせるように、システムの在り方はここ数年で大きく変わった。仮想環境やクラウド環境の活用が急増し、市場ニーズに合わせて迅速にサービスを提供することが厳しい競争を勝ち抜くための条件になりつつあるのだ。
そんな中、運用管理にも変化が求められるようになった。従来の物理環境を中心とした運用管理の世界では、ハードウェアの調達や容量設計、冗長化、見える化、監視、統合管理といった「機器の管理」が中心になることが多かった。だが、仮想化・クラウドを基本とする今日のシステムでは、一度作ったシステムが状況に応じて動的に変化する。
運用管理業務を主体とする企業の運用部門は、その変化への対応が待ったなしで求められており、その変化は運用部門にとって大きな負担になる場合もある。例えばクラウド環境の運用において、仮想OSの払い出しからアプリケーションのセットアップまでを運用部門が実施しているような企業も珍しくない状況である。すなわち、企業の運用部門にはITインフラの変化・革新に追従し、かつ効率良く運用することが求められている。それらを実現するためには「人が作業するプロセス」も含めてどうシステムを管理するかが課題になることが増えてきた。そこで、あらためて注目を集めるようになったのが運用自動化だ。
運用自動化の導入により、サーバーの配備や監視など、さまざまな定型業務の人的ミスを抑止し、迅速・確実に行えるようになる。また、ジョブスケジューラーによる「システム上で定期実行されるバッチ処理の自動化などシステム視点の自動化だけでなく、例えば「監視結果を受けてリソースを追加する」など、従来は人が介在してきた「複数のツールを使った、複数のステップを踏む作業」を連携させた運用タスク視点での自動化が可能になる点が大きな特長だ。
この分野で、日立製作所(以下、日立)の運用自動化製品を活用したソリューションを提供しているのが伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)だ。CTCの製品・保守事業推進本部 ITインフラ技術推進第1部の渥美秀彦氏は、運用管理の課題について、次のように解説する。
「今日の運用管理の課題は、大きく分けて3つあると考えています。運用の品質をどう担保するか、属人化のリスクをどう避けるか、運用担当者のオーバーワークをどう防ぐかの3つです。いずれも、人に関係する課題で、人への依存からどう脱却するかが今日の運用管理の中心的な課題になっています」
1つ目の品質の担保については、運用のヒューマンエラーに起因するサービス停止が目立ってきたことが背景にある。サービス停止がビジネスに致命的な影響を与えることは当然だが、発生原因までさかのぼった対策を行っているケースは案外少ないという。この点で「人のミスを考慮した対策が求められる」という。
2つ目の属人化のリスクとは、自動化できない処理について「運用でカバーする」管理のあり方を指している。運用でカバーするということは人手を伴うことであり、その人材が確保できなくなったときに、大きなリスクになる。
3つ目のオーバーワークは、文字通り、運用担当者の負荷が高まっていることだ。仮想化やクラウドによって運用タスクは格段に増えた。近年では、サーバーだけではなく、ネットワークやストレージも仮想化の管理対象に含まれてきた。限られた人的リソースで以前よりもさらに複雑なタスクを実施しなければならず、負荷の高まりがミスを招くことにもつながっている。
渥美氏は、「こうした課題の解決策として、真っ先に考えなければならないのが運用自動化です」と指摘。その具体策としてCTCが提案しているのが、運用自動化サービス「AOplus」だ。
日立JP1/Automatic Operationを活用した運用自動化サービス「AOplus」
AOplusは、日立のIT運用自動化基盤「JP1/Automatic Operation」(以下、JP1/AO)を利用した運用自動化サービスだ。JP1/AOは、運用担当者が運用手順書に従って手作業で行ってきた標準的な作業を自動化するソフトウェア。よく行われる運用手順のテンプレートを「コンテンツセット」として用意し、カスタマイズも行えるため、運用手順を一から設定することなくスピーディに運用自動化を導入できる点が特長だ。
AOplusは、システム運用経験が豊富なCTCのコンサルタントが運用自動化アセスメントから、JP1/AOを活用したシステム構築までを広くカバーするサービス。顧客企業各社の運用現場の実態に即した運用自動化を提供する。2012年10月のJP1/AOと同時にリリースされ、これまでに数多くの運用自動化の実績を積んできたという。
サービスは大きく「運用自動化アセスメント」「JP1テクニカルサービス」「カスタマイズオプション」の3つで構成されている。運用自動化アセスメントでは、既存の運用作業手順の調査・分析を行う。各種作業手順についてJP1/AOによる効率化が可能かどうかを判断し、効率化による効果をROI含めて定量的に分析、提示する。
JP1テクニカルサービスでは、この運用自動化アセスメントの結果、自動化による効率化が見込める作業について、JP1/AO上での運用効率化フローの作成、動作テスト、システム構築を行う。システム構築では、運用自動化アセスメントによる要件定義を基に、インストールと基本セットアップから、JP1/AOの設定情報の確認、自動化コンテンツのテスト実行まで、正常稼働をチェックする。
3つ目のカスタマイズオプションは、顧客企業の独自システムに対応する運用作業フローの開発・作成や、AOplus導入後の運用業務のアウトソーシング対応など、幅広いニーズに柔軟に対応するサービス。独自の作り込みにも対応できる点が大きな支持を獲得しているという。これら3つのサービスによって運用自動化の仕組みを作り、冒頭で述べた「品質」「属人化」「オーバーワーク」という人にまつわる課題を解決する。
渥美氏は、「AOplusは運用方法を刷新するのではなく、既存の運用管理の環境・方法を活用しながら、そこにアドオンする形で運用自動化を実現していく、現場に負担を掛けないアプローチをとっています」と説明する。監視ツールやジョブスケジューラーといった既存のツールとの連携も柔軟であり、コスト面でも合理的・効率的に運用自動化を実現できる。
自動化できない範囲をフォローする「JP1/Integrated Management - Navigation Platform」
とはいえ、冒頭で紹介したように、運用管理においては人手を介さないと実現できない作業もある。例えば、故障したハードディスクの交換やテープバックアップの交換などは、実際にマシンの前で人が作業しなければならない。また、人の判断が必要になる運用は無理に自動化するよりも、むしろ人手の方が効率的である。
渥美氏によると、「企業が運用自動化を積極的に進めていったとしても、全てを自動化出来る訳ではない。過去の例では、自動化できずに残る作業は全体の7〜8割に及ぶ場合も珍しくない」という。つまり実際には、運用自動化ソフトだけでは、十分ではないということだ。
では、先に挙げた「人に起因する運用管理の課題」をどう解決すればいいのか。それに対してもCTCが提案するAOplusは解決策を用意している。それは、日立が提供する「JP1/Integrated Management - Navigation Platform」の組み合わせだ。同製品は、組織における業務の流れをフローチャートで表現する製品。これにより、個々人が蓄積している業務知識やノウハウを見える化して組織全体で共有し、業務品質を向上させることができる。
「作業者は、たとえ経験がない作業でもWebブラウザで作業手順を逐一確認しながら業務を進められるため、ヒューマンエラーの削減につなげることができるのです」と渥美氏は語る。
運用業務の20%を自動化し効率化したとしても、80%の部分は手作業で行う必要がでてくる。その部分をJP1/Integrated Management - Navigation Platformでフォローすることで、業務全体の効率化を図っていくというわけだ。
AOplusで運用管理作業の全体をカバーする
AOplusの大きな特長は、運用においてキーボード入力というミスが起こりやすい作業を極力排除し、マウス操作に集約することで「誰が」「いつ行っても」「同じ品質で」運用が行えるよう使いやすさを追求している点だ。JP1/Integrated Management - Navigation Platformのフローチャートで作業全体を確認しながら、自動化できる作業に関しては、JP1/AOを使って自動化する。
フローチャートという、エンジニアに受け入れられやすいインタフェースを備えていることも、作業者にとっての使い勝手の向上につながっている。渥美氏は、「フローチャートを自由に定義できて、運用自動化ツールで行う一連の作業と組み合わせられる製品は、JP1/Integrated Management - Navigation Platformを除いて他にない」と高く評価する。
また、JP1/AOが持つ既存の作業手順コンテンツに加えて、CTCが多数のSI経験を通じて培ってきた運用ノウハウを詰め込んだオリジナルコンテンツを用意していることも本サービスの特長的なところだ。
では、具体的にどのような画面構成になるのだろうか。簡単に使い勝手を紹介していこう。以下の画面は、AOplusのサンプル画面だ。これはメニュー画面で、左カラムに行う作業一覧を表示している。この左カラムのメニューから、行う作業手順をクリックして選ぶ。
すると、以下のような作業手順書が表示される。以下は「APサーバー追加構築」の作業手順の画面。メイン画面は、左カラムと右カラムに分けられる。左カラムが作業全体の流れを示すフローチャート、右カラムがフローチャート内の具体的な作業手順の内容となる。
作業を行う場合は、フローチャートの上端から、フロー記号に沿って進めていけばよい。各チャートをクリックしたり、右カラム下部「作業概要へ」のボタンをクリックすれば、以下のように各チャートで行う作業の詳細を閲覧できる。
例えばタブレットにこの画面を表示させ、作業のたびにクリックしていくことで「次に何をやるべきか」がナビゲートされるため、誰でも簡単に作業を遂行できることがお分かりいただけるのではないだろうか。
画面の内容は自由に作成できるため、文字の大きさや色を変えることはもちろん、図の挿入や、注意点の強調表示も可能だ。また、容量などを入力する欄を、自由入力形式にしたり、あるいはドロップダウンリストにして最初から選択肢を提示したりすることも可能。さらにチェックボックスの作成もでき、ナビゲートしたい作業の内容やスタッフのスキルレベルに応じて、自由に画面をカスタマイズできる。
AOplusは、こうした「手作業によるプロセスも巻き取った運用自動化フロー」の作成と、それを分かりやすく伝える画面作成のノウハウに大きな特長がある。例えば、サンプルの一つとして、以上の画面紹介にも使った「APサーバーを構築し、監視設定を行う」ための作業手順書を見てみよう。
WebサーバーやAPサーバーの構築作業は、設定項目も多く、手順としてまとめるだけでも一苦労だ。例えばサーバーのホスト名の定義から、台数、必要なCPUやメモリ量の設定、各種定義ファイルや設定ファイルの作成、IPアドレスやポート番号の設定、ファイアウォール作成などなど。自動化のためのスクリプトなどを作る場合、そのスクリプトの管理も必要になる。作り込めば作り込むほど、属人化が進み、ヒューマンエラーが発生する可能性も高くなってしまう。AOplusでは、こうした作業をHTML画面上のパラメータ設定だけで行えるようにする。
ここでは、「ホスト名」「サーバー台数」「サーバーサイズ(S/M/L)」「ポート番号」をドロップダウンリストから選ぶだけでいい。仮想マシンのCPUやメモリ設定、サーバーの設定ファイル、IPアドレス、管理者のメールアドレスとパスワードなどは、ここで設定したパラメーターから自動的に作成される。前述のように必要な作業はフローチャートとして全て管理されているため、設定漏れなども起こらない。
このように、「AOplusを運用管理業務のポータルとして活用することで、運用自動化ツールで行う作業、自動化できない人手による作業、全ての流れを一元的にカバーできるようになる」というわけだ。
運用部門の力になりたい
ビジネス環境の変化の中で、運用自動化があらためて注目を集めるようにはなったが、当然ながら、運用自動化ツールを導入しただけでは、課題を解決することはできないし、投資額もかさんでしまう傾向にある。
そうした中で、CTCは「人」にフォーカスしながら、既存の手順書を生かし、運用を無理なく高度化させていくアプローチをとっている。渥美氏によると、運用自動化を意味のあるものにするためには現場の意見は必要不可欠である。そのためにトップダウンではなく、現場からのボトムアップのアプローチを重視しており、「AOplusの提供価格については、“現場で認められている決済額のレベル”に配慮し、投資額を抑えたスモールスタートを可能にしている」という。渥美氏は、運用自動化を企業に根付かせるためのノウハウはたくさんあるとし、次のようにエールを送る。
「ツールを提供するだけではなく、最終的には運用部門の力になっていくことが目標。力になるというのは、運用管理という業務が自社内でクローズアップされ、『このようにシステマチックに運用を自動化、合理化していますよ』と、運用担当者が胸を張って社内に向かって言えるようにすることです」
ビジネスとITの一体化が進む中、迅速・確実な運用管理の実現に向けて、取り組みを進める企業は増えている。だが現実には、運用自動化にはさまざまなハードルが存在し、多くの企業が有効な施策を見いだせずにいる状況だ。運用自動化を検討されている企業は、AOplusで自社においてはどのような効率化・合理化が狙えるのか、まずはCTCに問い合わせてみてはいかがだろう。
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アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年2月26日