日本の開発者コミュニティが次世代Java仕様策定に貢献、Lambdaを手に入れたJavaテクノロジのその先へ:Java Day Tokyo 2015基調講演(1/3 ページ)
2015年4月8日、Javaテクノロジに関する開発者イベント「Java Day Tokyo 2015」が開催された。基調講演で紹介されたJavaテクノロジに関する話題を解説していきたい。
2015年4月8日、Javaテクノロジに関する開発者イベント「Java Day Tokyo 2015」が開催された。基調講演で紹介された主な話題は次のようになる。【1】最新版のJava 8(Java SE 8)は新たな言語仕様Lambda(ラムダ式)を取り入れて並列処理への適性を高めた。来年2016年にはJava 9がリリースを予定する。【2】ロボット、IoT(Internet of Things)、パブリッククラウドの各分野のデモンストレーションを見せた。【3】Javaコミュニティへの日本からの貢献をアピールした。Open JDKには4人の日本人が貢献し、開発中のJava EE 8に含まれる新技術には楽天や日本Javaユーザーグループ(JJUG)が貢献している。
Java Day Tokyoは、日本国内で毎年開催するJavaテクノロジ関連イベントとしては最も規模が大きいものだ。特に今回は、Javaテクノロジの発表から20周年という節目の年に当たる。筆者は、登場以来20年間にわたりJavaテクノロジを追ってきた経緯があって感慨深かった。今回の記事では、基調講演で紹介されたJavaテクノロジに関する話題を解説していきたい。
日本オラクル杉原社長はJavaのPaaS「Java Cloud Service」を売り込む
基調講演の冒頭、日本オラクル取締役 代表執行役 社長兼CEO 杉原博茂氏は、同社のクラウドへの注力について語り、Java EEを活用する同社のPaaS(Platform as a Service)である「Java Cloud Service」について言及した。Java EEに基づく同社のアプリケーションサーバー製品「Oracle WebLogic Server」(以下、WebLogic)のクラウド版といえるサービスだ。
同社はクラウドベンダーとしては後発である。クラウド分野での影響力を獲得することを重視し、エンタープライズ分野で高評価を得てきたWebLogicを背景とするJavaのPaaS版を売り込んだ格好だ。
Javaの父、James Gosling氏はAndroidにも言及
「Javaの父」こと最初のJava言語の設計者James Gosling氏はビデオメッセージを寄せた。「1992年から日本のパートナーとは関わってきた」とGosling氏は語る。「あれ? Javaの登場は1995年では?」と思われる方もいるかもしれない。補足すると、当時のサン・マイクロシステムズ社は日本の家電メーカーと協力して新たな家庭向け情報デバイス(今で言うタブレット端末のようなものだった)を作るプロジェクトを進めていた。その中心人物がGosling氏だったのだ。ちなみに、このプロジェクトは成功せず、新たな家庭向け情報デバイスも世に出なかった。しかし、情報デバイスのプログラミングのために開発した技術は1995年に「Javaテクノロジ」と名付けられてインターネットで公開されて大きなブームを巻き起こすことになったのだ。
「Javaでは多くの“日本発”の技術が生まれた。中でも大きいのは、2000年に登場した携帯電話向けのJavaだ」とGosling氏は振り返る。NTTドコモの「iアプリ」は、携帯電話に載ったJavaとして最も初期のものだった。興味深かったのは、携帯電話上のJavaに関連してAndroidの名前も挙げたことだ。「Javaの父」は、Java言語でアプリを開発できるAndroidは言及に値する成果と考えているのだろう。
AndroidはJavaの恩恵を受けている技術だが、Javaテクノロジのライセンスを受けずに開発されている。オラクルは、AndroidがJavaテクノロジの知的所有権を侵害しているとしてAndroidの実質的な開発元であるグーグルに対して2010年に訴訟を起こし、現在も係争中である。そのような事情から、オラクル社員の口からAndroidへの言及を聞くことはない。筆者は以前、オラクル社員にAndroidとJavaテクノロジの関係について質問したことがあるが回答はノーコメントだった。しかし、Javaの父であるGosling氏はオラクルを退職しており、言及しない理由はない。
「Javaはベストのスキルセット」「一番わくわくするのは多様性だ」だとGosling氏は語り掛ける。Javaテクノロジは、ICカード(携帯電話搭載のSIMカードも含む)、携帯電話、エンタープライズシステムのサーバーと、幅広い範囲で使われているし、IoTやロボティクスのような新たな応用分野も生まれつつある。Javaテクノロジが多様な使われ方をしていることが、Gosling氏にとって最もうれしいことのようだ。
Lambdaを取り入れたJava 8の立ち上がりをアピール
続いて、Javaテクノロジに関する最も大規模なイベント、JavaOne ConferenceのチェアパーソンであるSharat Chander氏が登壇。参加者に向けてJavaコミュニティへの参加を呼び掛けた。オープンソース版のJava「Open JDK」の開発では、4人の日本人が貢献者として名前を連ねている。こうした貢献を称え、より大勢がJavaテクノロジに貢献してくれることを期待しているのだ。
Chander氏はまた、2014年に正式リリースされたJava 8(Java SE 8)の普及活動が進んでいることを強調した。Java 8の技術書はすでに多数出版されている。オラクルの資格制度も取り入れられている。
続いてJava Platform DevelopmentのVice President、George Saab氏がJava SE 8 とJava ME 8の最新情報を語った。
まず取り上げたのは、Java 8(Java SE8)だ。多くの新機能があるが、特にLambda、Stream API、セキュリティ機能群について説明した。
2016年にはJava 9(Java SE9)の正式リリースが予定されている。目玉機能はJavaのモジュール化を推進するProject Jigsawだ。JDK 9 EA(Java SE 9開発キットのアーリーアクセス版)はすでにダウンロード可能となっている。会場にいる開発者に向かって「JDK 9 EAを試して、フィードバックを頂きたい」と呼び掛けた。
Java EEのロードマップについても説明した。Java SE 8の上に構築するJava EE 8は、JSR366(Java Platform, Enterprise Edition 8 、Java EE 8)として2014年9月に採択されて、JCP(Java Community Process、詳細は後述する)で仕様策定のプロセスが進んでいる。2016年の終わりごろには正式リリースとなる見込みだ。Java EE 9の構想も進められている。
また組み込みJavaのJava MEについても言及した。従来の組み込みJava(Java ME)は標準的なJavaテクノロジとの差異が大きかったが、Java ME 8では言語仕様をJava SE 8の完全なサブセットとして再定義し、APIも類似性を増やしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.