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GMOクラウド、ビデオリサーチが採用、次々に具体化するCisco UCS、Cisco ACIのビジョン「Cisco Data Center Forum 2015」レポート

シスコシステムズ(以下、シスコ)は2015年4月17日、パレスホテル東京で、次世代データセンター向けソリューションを紹介するイベント「Cisco Data Center Forum 2015」を開催。同社のサーバー、ネットワーク製品が新たな段階に入っていることを印象付けた。その模様を詳しくリポートする。

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 シスコシステムズ(以下、シスコ)は2015年4月17日、パレスホテル東京で、次世代データセンター向けソリューションを紹介するイベント「Cisco Data Center Forum 2015」を開催した。同社のサーバー製品「Cisco Unified Computing System(Cisco UCS)」、ネットワークをポリシーベースで管理するアーキテクチャ「Cisco Application Centric Infrastructure(Cisco ACI)」が、製品の進化と活用の両面で、新たな段階に入っていることを印象付けた。すなわち、シスコのメッセージは、1年前に比べてさらに具体的になり、そのメッセージは実績によって、確実に裏打ちされるようになってきた。

シスコがデータセンターにもたらした変革とは

 冒頭の基調講演では、シスコのデータセンター向け製品事業の進展を、シスコシステムズのグローバル データセンター / バーチャライゼーションセース担当のシニアバイスプレジデントであるフランク・パロンボ(Frank Palumbo)氏が説明した。

 パロンボ氏はまず、「Cisco UCSは、現在、4万1000以上のお客様と約30億ドル以上の利益を生み出しています。フォーチュン500のリストされる企業の85%にUCSを選択いただいています。革新的なアーキテクチャに加え、クラウド、ビッグデータ、エンタープライズアプリケーションにおけるソリューションとしての確固たる牽引力が融合し、UCSが選ばれているのです」という米シスコ CEO、ジョン・チェンバース(John Chambers)氏の言葉を紹介した。


米シスコシステムズ グローバル データセンター / バーチャライゼーションセールス担当 シニアバイスプレジデント フランク・パロンボ氏

 シスコのサーバー製品Cisco UCSは、x86ブレードサーバーでは米国でナンバーワン、世界では第2位のシェアを達成している。日本のサーバー市場は特殊で、国内ベンダーが強いが、それでもシェアは10%を超えた。成功の理由としてパロンボ氏は、「標準技術を使っている」「パフォーマンスに力点を置いている」「自動化と効率化を実現している」という点を挙げた。用途としては、大規模データセンター、ビッグデータ、SAP HANA、クラウドプラットフォームでの採用が、Cisco UCSの成長を後押ししている。

 一方、データセンターネットワークに関しては、Cisco ACIで、「SDN(Software Defined Networking)を超えたSDN」を実現している。アプリケーションベースのポリシーにより、ネットワークを中心としたITインフラの運用を簡素化するものだ。アプリケーションの展開を加速するなどのビジネス面のメリットと、リスク軽減やリソースの有効活用といった運用面のメリットを提供する。シスコは、その構成要素を積極的にオープン化し、業界全体を巻き込む動きに進化させつつある。

 基調講演に続き、サッカー解説者の松木安太郎氏を迎え、シスコシステムズ合同会社 執行役員の財津健次氏と共に、サッカーでのデータ活用について熱のこもったディスカッションが行われ、会場も大いに盛り上がりを見せた。

これから、Cisco UCSはどう進化するか

 次に、米シスコのコンピューティングシステムズプロダクトグループ テクニカルマーケティング ディレクター、ダン・ハンソン(Dan Hanson)氏が、Cisco UCSの進化を紹介した。

 商用データセンター、企業データセンターを問わず、仮想化への移行が進み、新たなアプリケーションへの迅速な対応が求められている。こうした時代に、従来どおりサーバーの調達と設定方法を続けていては間に合わないし、余計なコストが掛かり過ぎる。一方、Cisco UCSのアーキテクチャは、配備に掛かる時間を短縮できる。構成作業の流れが簡潔で、分担作業を促進する一方、コンプライアンスを強化できる。どんなスケールのデータセンターでも、アプリケーションの機動的な展開を邪魔せず、逆に支援する効果をもたらす。


米シスコ コンピューティングシステムズ製品グループ テクニカルマーケティング ディレクター ダン・ハンソン氏

 過去1〜2年の間、シスコはCisco UCSで、統合インフラニーズや、クラウド/ビッグデータニーズへの対応を強化してきた。統合インフラについては、EMCなどとの「VCE」、ネットアップとの「FlexPod」が知られているが、2014年末にはIBMとの「VersaStack」が発表された。ソリューション設計ガイド「Cisco Validated Design」では、一般的な用途に基づき、シスコが事前に検証した構成を提示。迅速で確実なITインフラ配備が可能になっている。

 クラウド基盤への展開では、2RUで16ノードを搭載できるサーバー「Cisco UCS M-シリーズ モジュラーサーバ」、分析とビッグデータへの対応では、4RUに最大360TBのディスクを搭載可能なストレージサーバーの「Cisco UCS C3000シリーズ」を紹介した。さらに将来の方向性として、管理のシンプル化、次世代UCSファブリックインターコネクト、Cisco UCSとACIの統合、UCS Mシリーズのオプションの拡張などを挙げた。

GMOクラウドは、スタッフの生産性を高めるためにシスコを採用

 続いて、GMOクラウドの技術部インフラセクション 立山恵土氏が講演した。同社は、新たに提供開始した「GMOクラウドALTUS(アルタス)」のBasicシリーズで、Cisco UCSを採用した。


GMOクラウド 技術部インフラセクション 立山恵土氏

 Basicシリーズ設計に際し、GMOクラウドでは「OSのサポート」「仮想NICの提供」「低コスト」を要件とした。これら全てを満たす製品は、Cisco UCSしかなかったという。Cisco UCSは、同サービスで採用した仮想化技術「Citrix XenServer」のHCL(動作確認済みハードウェア)に登録されていた。また、仮想NIC単位で帯域幅を柔軟に設定でき、設定した帯域幅でしっかり制御できる。さらに、VICの設定を含め、RAIDからBIOSまですべてXML APIで一括設定でき、作業負荷が軽減できた。

 立山氏は、まず、特にサーバーの結線・整線の時間短縮効果も強調した。2ラック(サーバ約60台)を構築するのに、既存のシステムでは2人で2〜2.5営業日かかっていたが、UCSでは2人で0.1〜1営業日へと半分以下に短縮できた。また、XML APIによる一括設定で得た効果もある。ハイパーバイザーを構築する作業は、「起動確認・BIOS等の初期設定」「OS等のセットアップ」「組み込み」という手順になるが、これを既存システムとUCSで比較すると、起動確認およびBIOS等の初期設定が、1台当たり15分から5分に短縮される。これらの作業時間短縮により、運用担当者は、新しいツールの検証/導入、ソフトウェアの検証に時間を取れるようになってきた、という。

客観的、多面的なデータでマーケティングを支援するビデオリサーチ

 続いて、データ活用でCisco UCSを使用している事例として、ビデオリサーチ ソリューション推進局ACR/ex事業推進部部長 岩城靖宏氏が講演を行った。ビデオリサーチは「テレビ視聴率の会社」として知られるが、企業がマーケティング施策に利用するためのデータを広く提供している。


ビデオリサーチ ソリューション推進局 ACR/ex事業推進部部長 岩城靖宏氏

 ビデオリサーチが新たに提供を開始したサービス「ACR/ex」は、テレビ視聴率で使われている無作為抽出という調査手法を活用し、消費者の「メディア接触状況」「商品・サービス関与」「生活意識・行動」をあぶり出すものだ。無作為抽出のため客観的であり、同一のサンプルに対して全ての調査を実施するため、相互分析が可能だ。広告やマーケティングで、「カテゴリ・ブランドの現状と変化を把握」「現在顧客・見込み顧客を知る」「対象とのコミュニケーションに適した媒体を論理的に導く」「心理変容や行動変化とその内訳を時系列でとらえ、手だてをつかむ」というPDCAサイクルを回していくために使える。ACR/exは、Web経由のサービスとして提供され、ユーザーは、操作性に優れた画面で容易に分析ができる。このことが、データの使い勝手を高め、利用シーンを広げている。

 ビデオリサーチはさらに、アンケートなど能動的に同社が「集めるデータ」と、物や人の活動・行動履歴を記録した自動的に「集まるデータ」を統計的につないで、「使えるデータ」を導く取り組みを進めている。これを含め、Web経由で提供するサービスを増やしていく計画だ。

 ビデオリサーチでは、各種調査データの提供と蓄積を担うシステム基盤を、「Cisco UCS Bシリーズブレードサーバ」で構築している。安定性に優れたシステム基盤のもとで機能拡張を続け、自社データと外部データの連係や、顧客企業同士、データ同士を結びつけるハブとしても機能できるように発展させていく。

アプリケーションにとってネットワークが大切だから、 Cisco ACI

 Cisco ACIはどう進化してきたか。米シスコのインシームビジネスユニット プリンシパルエンジニア、マイク・ハーバート(Mike Herbert)氏がこれを紹介した。

 Cisco ACIは、アプリケーションのニーズを出発点として考え、これを満たすために、ネットワークの言葉への翻訳を自動的に行う、SDNを超えたSDNのアーキテクチャだ。アプリケーション担当者は、データセンター内のネットワーク/セキュリティ製品が提供している機能の詳細を知る必要がない。ポリシーを選択するだけで、自らの展開するアプリケーションに適用できる。


米シスコ インシームビジネスユニット プリンシパルエンジニア マイク・ハーバート氏

 Cisco ACIはオープンな技術だ。採用するネットワーク仮想化プロトコル「VXLAN」、ネットワーク/セキュリティ製品との連携を行うプロトコル「OpFlex」は、いずれもIETFに提出されたもの。また、そのアプリケーション/サービスのためのポリシー定義技術は、OpenStackの一部ともなっている。コントローラー機能は、OpenDaylightプロジェクトで、オープンソースソフトウエアとしても提供されている。その上で、シスコは多数のIT製品ベンダーと提携している。仮想化/クラウド基盤についても、OpenStack、VMware vSphere、Citrix XenServer/CloudStack、Microsoft Hyper-V/System Centerなど、他社のSDN製品と比較しても、最も広範に対応している。

 ACIの重要な用途の一つとなっているのがセキュリティだ。セキュリティは、境界型から、仮想化環境に基づくものに展開が進んできた。次の進化はアプリケーション指向のセキュリティだと、ハーバート氏はいう。

 今後は、Cisco UCSのネットワーク関連の設定が、Cisco ACIのポリシーと連携する。また、Cisco ACIはデータセンターだけでなく、データセンター間をつなぐWAN接続にも適用されることになるという。

 続いて、シスコシステムズ合同会社のソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション テクニカル ソリューションズ アーキテクト大平伸一氏が、エンタープライズアプリケーションにおけるCisco ACIの活用例を示した。


シスコシステムズ合同会社 ソリューションズシステムズエンジニアリング データセンターソリューション テクニカル ソリューションズ アーキテクト 大平伸一氏

 VDIでは社員の増減や異動でセキュリティなどに変更が発生するが、VDI環境の変更時に、自動的にネットワーク設定が追従していくことができる。また、例えばオラクルのデータベースと管理ツール、シスコのUCSと管理ツール、EMCのスケールアウトストレージソフトウエア「ScaleIO」をACIで連携させ、インテリジェントなインフラに進化させることができる。

 例えば、Oracle RACへのDBトランザクション負荷の増大による性能不足をトリガーに、サーバー、ストレージ、ネットワークが連動してインテリジェントに拡張し、負荷を軽減できる。SAPシステムでは、開発環境、本番環境、品質保証環境という3ランドスケープ(複数の同一環境)が多い。SAPのシステムコピーを利用すればサーバーは簡単に複製できるが、ACIにより、ネットワークも迅速に複製できる。


Cisco Data Center Forum 2015最後を締めくくるパネルディスカッションの様子

 最後のセッションでは、GMO クラウドの立山氏、ビデオリサーチの岩城氏を交え、アイティメディア ITインダストリー事業本部 エグゼクティブエディター、三木泉氏をモデレーターに迎えたパネルディスカッションで、一日のプログラムを総括。Cisco Data Center Forum 2015は幕を閉じた。

Cisco UCSやCisco ACIは、「ますますユニークな存在に」

 以下は、Cisco Data Center Forum 2015を、一日を通して取材し、パネルディスカッションのモデレーターを務めたアイティメディアの三木氏のコメントだ。

 私が様々な機会を通じ、シスコという企業を取材していて一番印象的に感じるのは、ITインフラベンダーでありながら、「ユーザー組織のビジネスをITでどこまで支援できるか」という命題に挑戦し続けているということだ。

 Cisco UCSやCisco ACIに関しても、特定の製品ジャンルで性能や機能を他社と競うことよりも、ビジネスに近い人々にとっての具体的なメリットが、究極的な差別化ポイントだと同社は考えている。そのために、どちらもアプリケーション指向の仕組みを搭載している。

 加えて興味深いのは、ソフトウエアベンダー各社と活発に連携し、自社製品だけでは提供できない部分にまで積極的に踏み込んでいることだ。いい例がCisco UCSにおけるビッグデータ関連戦略だ。シスコはHadoopディストリビューションの主要3社と再販契約を締結。ビッグデータのためのプラットフォームをまとめて顧客に提供できるようにした。さらに、データ管理/ビジネス分析ソフトウェア各社と提携。技術面を含めた協力関係を築いている。

 シスコのデータセンター製品群は、こうした様々な活動により、ますます他社とは違う、ユニークな存在になりつつある。

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提供:シスコシステムズ合同会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2015年6月24日

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