「保険市場」サービスの根幹「コンテンツ」の品質を担保する道具「Araxis Merge」とは:情報の品質を現場で高める方法論を聞いた
保険商品というセンシティブな情報を扱うWebサイト「保険市場」。運営者であるアドバンスクリエイトでは、正確な情報開示とタイムリーな商品展開が必要な「Web to Call to Real」のマーケティングを実現する手段として、コンテンツの品質を担保するマージツール導入を決断した。
“ミスが許されない”保険商品の現場
日本最大級の保険選びサイト「保険市場」を中心に、Web、電話、リアル店舗を通じた保険の代理販売を手掛けるアドバンスクリエイト(本社:大阪市)。Webサイトでの保険資料請求から電話相談、テレマーケティング、店舗でのコンサルティング営業までに至る「Web to Call to Real」という独自の販売モデルを武器に成長を続けている。
取り扱い保険会社は82社(生保27社、損保30社、少額短期25社/2015年7月23日現在)、取扱商品は常時250点を数える。また、顧客との窓口であるWebサイトは月間のユニークユーザー数約100万人、実店舗である「コンサルティングプラザ」も大阪を本拠に全国13支店を置いている。
その同社が、保険市場サイトの情報を日々更新する上で欠かせないツールとして活用しているのがファイル比較/マージツールだ。保険商品を扱う同社のWebサイトは、保険業法を順守することが求められ、金融庁の監督のもと、厳密な基準が設けられている。商品の紹介文に間違いがないか、優良誤認を招かないか、常に最新の情報が正しく反映されているかなど、さまざまな項目をチェックし、消費者が正しい判断のもとで希望する保険を検討できるようにしなければならない。そのために利用しているのがファイル比較/マージツールだ。
具体的な製品として、英Araxisが開発しエージーテックが国内販売を担当する「Araxis Merge」を2011年から採用。Webサイトの各ページをHTML形式で出力し、情報の更新前と更新後に比較することで、データの更新漏れや更新ミスをなくしている。アドバンスクリエイト IT統括部 クリエイティブ管理課 主任の松田義之氏は、Araxis Merge導入の効果をこう説明する。
「保険商品を提供する上でのリスクをなくし、お客さまに正しい情報を伝えるためには欠かせないツールです。日々の業務プロセスに組み込むかたちで使っているため、利用しない日はないという状況です。Araxis Mergeは当社の業務運用には、重要なシステムになっています」(松田氏)
比較とマージの効率が向上 リスクも大幅減
Araxis Mergeは、クライアントPCにインストールして利用するアプリケーションだ。ソフトウエア開発者がバージョンの異なるソースファイルを比較(diff)し、差分を精査したり、マージしたりするために用いられる。これだけであれば、一般的な差分比較ツールでも実現可能なところもあるが、Araxis Mergeは、他の無償ツールの追従を許さない品質と機能を持つ。
中でも、差分比較の精度は特筆すべきだろう。そもそも比較エンジンそのものの精度の高さに加え、Araxis Mergeでは「同期リンク」という、比較ポイントを設定する機能があるため、数万行にも及ぶソースコードの変更点比較であっても比較ミスが起こらないようになっている。こうしたことから「おおよその差分が分かった後は目視で比較」といった、曖昧さが許されない現場で、品質を担保する意味で採用されることが多い。加えて「レポート機能」を使うことで第三者への報告やレビューも容易にできるため、業務プロセスとして組み込みやすい点も魅力だ。
こうした特徴から、Araxis Mergeは製造業での採用が多く、例えば、エンジン制御システムなどのように厳密な品質管理が求められる製造業界で広く利用されている。同様に高い精度で文書を管理する必要があるマニュアル管理、部品表管理などの業務、あるいは契約文書のような重要な文章を扱う法務部門での採用も多いという。
コンテンツの品質や適法性が常に問われるアドバンスクリエイトがAraxis Mergeに注目したのも、こうした品質を担保するのに適した製品特性を評価したことによるという。松田氏は、使い勝手をこう評価する。
「無償で利用できるマージツールと異なり、違いのあった行だけでなく、行の中のどの部分に違いがあるかを、カラーで分かりやすく示してくれます。比較する文書は、HTMLのソースコードで、英数字だけでなく日本語の文字や数字も入り交じっています。そのため、行の中のどの部分に違いがあるかを目視で確認していくのはとても骨の折れる作業なのです。Araxis Mergeの場合、違いがすぐ分かるのでスムーズに作業を進められます。更新箇所を見つけてマージするまでの時間は従来と比較して相当速くなっています」(松田氏)
Araxis Merge製品画像 画面のようにプログラムコードや文章を比較、該当箇所が分かりやすく表示される。変更点の反映やロールバックもGUIで操作できる。Subversionなどのバージョン管理ツールとの連携も可能だ(資料提供:エージーテック)
アドバンスクリエイトでは、事業を推進するためのシステムの大部分を内製化している。IT統括部は、インフラ、システム開発、クリエイティブ管理の三つの課で構成され、約80人が所属。これは、従業員全273人(2014年9月30日現在)の3分の1に相当する規模であり、まさにITとビジネスが一体となった組織体制となっている。
その中で、Araxis Mergeは、IT統括部のクライアントPC全てにインストールされ、システム開発や、Webサイト制作など業務全般を支えるツールとなっている。松田氏が所属するクリエイティブ管理課は約30人で構成。「保険市場」をはじめとするWebサイトの運用やクリエイティブ全般の制作管理などを担当し、日々の業務でAraxis Mergeを利用するという環境だ。
「こうした環境では、誰でも簡単に使えること、操作ミスを犯しにくいこと、仮に操作ミスをしてもすぐに見つけて修正できることが大切です。Araxis Mergeはそうしたニーズに応えるものでした」と松田氏。
1日100ページ超をチェックすることも
具体的な業務を、「保険市場」のWebサイト更新の流れに沿って見てみよう。
まず、元になるデータ入力や更新業務では、新商品に関するデータを保険会社と調整して準備をする。商品概要、保険料、保険期間、給付金の額、保障(補償)内容など、全てのデータを間違いなく掲載したことを確認した上で、本番環境に更新していく。
既存商品のラインアップが変更になったり、あるいは商品内容に変更が発生したりした場合は、変更箇所についてのデータ編集作業が発生する。この他、Webサイト上での保険商品の特長やPR文、ランディングページなどをアドバンスクリエイト側でも独自に作成している。
こうして作成したデータは、社内審査の専門部署がチェックを行う。商品内容はもちろん文言や数字に不適切な内容や表現がないかを入念にチェックし、保険業法など保険商品取り扱いに関する法や、その他の法律に照らして問題がないかどうかの確認を徹底しているのだという。
松田氏が所属するIT統括部 クリエイティブ管理課では、そのチェックを経て戻されたデータについて、ステージング環境下で掲載作業を行う。そこで、更新前のデータと比較し、適切に更新されているかをチェックするのだ。その際に用いるのがAraxis Mergeである。
「保険会社の審査の後に、当社の審査部門の承認を経てから本番環境にアップします。Webサイトはバージョン管理されており、更新が入る度に既存のファイルと更新したファイルの差分をマージして反映していきます」(松田氏)
新商品の発売時期などの繁忙期には、1日に100ページを超える更新を行うこともあるという。
アップ後には目視確認に加えて、Araxis Mergeのレポート機能を利用し、更新箇所の一覧を出力。これを別の担当者がチェックするという体制だ。
「差分を見てマージする担当者がいて、さらにそれが正しく反映されたかをチェックする担当者がいます。こうしたダブルチェックを行って、ミスの発生を事前に防ぐよう心掛けています。繁忙期はクリエイティブ管理課総出でのチェックになります」(松田氏)
事業を支えるツールからさらなる活用へ
アドバンスクリエイトはもともと無償のマージツールを利用していた。使い方は同じだったが、色分け表示ができなかったり、マージの精度が納得いく水準ではなかったりと、不満があったという。
一つ一つは小さな違いだったが、作業量の増加に伴い、負担も目に見えて増えた。取り扱う商品が増加する中で、使い勝手の良さやレポート機能の利便性からAraxis Mergeの採用を決めたという。
「金融商品なので、小さな間違いが大きな事故につながります。そのため、誤植などは絶対に許されない環境です」(松田氏)
無償マージツールからの移行は速やかだったという。もともと業務プロセスに組み込まれていたこともあるが、特別な研修などは設けずに利用を開始した。設定ファイルもほぼデフォルトのまま利用できる状態だったが、表示色などを一部カスタマイズし、設定ファイルを共通化して配布した。
機能的には、無償ツールよりも、検知の精度が高くなったことで「効率と精度が向上し、安心感が格段にあがりました」と、松田氏は振り返る。また、属人性が排除されたことも大きなメリットだという。ツールの性能が低い場合、どうしても人のスキルに頼らざるをえなくなる。Araxis Merge導入後はそういったことが少なくなったという。
このように、同社の標準マージツールとしてサイト運営を支えるとともに、ビジネスの成長エンジンを支えるツールにもなっているAraxis Mergeだが、松田氏は、今後のさらなる活用も視野に入れている。
「例えば、法務関連の文書校正などで活用できるのではないかと思っています。いまはIT統括部だけがユーザーですが、他部門でも利用できるのではないかと考えています。アイデア次第で、さまざまな利用方法が考えられるのがAraxis Mergeの魅力です」(松田氏)
アドバンスクリエイトの躍進の秘訣(ひけつ)の一つは、システムの内製化とテクノロジの効果的な利用にある。テクノロジを顧客向けのユーザビリティの向上や、Webマーケティング、テレマーケティングの向上に迅速に役立て、また、信頼性の高い情報を提供することで、顧客からの高い支持を得てきた。Araxis Mergeもその取り組みを支えたツールの一つだ。
松田氏は「刻々と変わる消費者動向を先取りし、最先端のテクノロジとWebマーケティングノウハウを駆使し、あらゆる保険の情報メディアサイトとして進化を追求していきます」と話す。
企業概要
株式会社アドバンスクリエイト(Advance Create Co.,Ltd.)
本社:大阪市中央区瓦町3-5-7 野村不動産御堂筋ビル
設立:平成7年10月
従業員数:273人(グループ含む)
事業内容:生命保険・損害保険の代理店事業
https://www.advancecreate.co.jp/
提供:株式会社 エージーテック
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2016年6月30日
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.