NECがOSS/マルチベンダーのOpenStack導入・運用支援サービス発表:セミオーダー方式を採用
NECは2015年10月20日、OpenStackをベースとしたクラウド基盤の構築・運用支援サービス、「NEC Cloud System(OSS構築モデル)」を発表した。オープンソース、マルチベンダーを活用し、セミオーダー方式で、OpenStackを使ったプライベートクラウド基盤を迅速に構築できるという。
NECは2015年10月20日、OpenStackをベースとしたクラウド基盤の構築・運用支援をセミオーダー方式で提供するサービス、「NEC Cloud System(OSS構築モデル)」を同日販売開始したと発表した。マルチベンダーで、OpenStackを使ったプライベートクラウド基盤を迅速に構築できるという。
NECはこのサービスで今後3年間の売り上げ600億円を目標としている。適用用途でいえば、大部分は通信事業者のNFV。次いで商用データセンターやオンラインサービス事業者のクラウド基盤構築、次に遅れて立ち上がる一般企業の情報システムだという。
これまでOpenStack関連で、NECはクラウドサービスを提供する一方、オンプレミス向けには同社の製品で固めたレディメイドの統合インフラシステム、およびフルオーダーメイドのOpenStack導入支援サービスを提供してきた。
新サービス「NEC Cloud System(OSS構築モデル)」は、レディメイドのシステムとオーダーメイドの構築支援の中間。セミオーダー方式で顧客のニーズに合わせたプライベートクラウド基盤を構築・運用支援する。
具体的には、事前検証済みの機能をビルディングブロックとして用意し、顧客ニーズや規模に合わせて組み合わせるという方式を採る。後述するが、このビルディングブロックはOpenStackソフトウエアだけにとどまらない。顧客の利用用途に合わせて、必要な機能を組み合わせて提供する。こうした「プレハブ」的な仕組みを採用し、さらにテンプレートの適用、および構築自動化、テスト自動化ツールの利用により、フルオーダーでは6カ月程度掛かる導入作業を、3カ月程度で済ませられるという。導入コストも抑えられる。
新サービスでは、運用のための基本方針から具体的な手順まで、詳細なドキュメントを無償で提供する。NECによる運用代行サービスも別途提供する。サポートは、OpenStack専門部隊を中心に、OpenStack以外で組み合わせる他の製品を含め、ワンストップで提供する。24時間365日対応で、障害発生時の緊急措置も行うという。
第一の特徴はオープンソース/マルチベンダー。原則としてオープンソースソフトウエア(OSS)を利用するが、サーバー、ネットワーク、ストレージなど、商用製品を使う場合については、マルチベンダー対応する(もちろんNEC製品を使ってもいい)。そのため現在は、OpenStackディストリビューションとして、サポート対象製品の多いRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platform(RHELOSP)を採用しているという(他のディストリビューション利用の要望にも応える)。顧客の要件を満たすOSSがない場合、改造や新規開発も行うという。
NECは独自のOpenStackディストリビューションを提供するつもりはない。同社は2011年以来、OpenStack開発プロジェクトに参加。延べ7名のコアデベロッパーを輩出し、現在8つのコンポーネントで15名の開発者が活動している。コントリビューション数は、10位以内をキープしているという。それでも自社ディストリビューションを出さない理由を、NEC C&Cクラウド販売戦略本部 主席戦略主幹の上坂利文氏は、顧客におけるOpenStack導入の柔軟性を考えると広範なマルチベンダーエコシステムの維持が望ましいが、同社としてはより直接的に顧客をサポートする部分にリソースを費やしたいからだと話す。
第二の特徴は、OpenStackをベースとするが、それ以外のソフトウエアも組み合わせ、各顧客の用途に適したプライベートクラウド基盤を提供するということ。OpenStackには含まれていない、オープンソースの監視・管理ツールや、NECが開発したクラウドポータルソフトウエアなどを利用できる。OSSの管理ツールとしては、例えばZabbix、ELK、Logstash、Bacula、Ansibleなどがある。
NECはOpenStack Foundationのゴールドメンバーであるだけでなく、OpenDaylight Projectのゴールドメンバー、OPNFVのプラチナメンバー、ONOSのポードメンバーでもある。こうした経験を生かし、同サービスでは、通信事業者のNFV要件に応えるNFV運用機能、サービスチェーニング、課金などのビルディングブロックも提供するという。
将来に向けては、上図のようなロードマップを描いている。2016年春には、自社で複数のOpenStackデータセンターを持ち、その間で事業継続/災害対策(BC/DR)が行えるようなソリューションの提供も予定している。その後には、PaaS/SaaS機能の提供も考えているという。
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