いまさら聞けないLinuxの基礎知識:“応用力”をつけるためのLinux再入門(1)(1/2 ページ)
Linuxを勉強してみたいけど、どこから手を付けてよいか分からない、何だかよく分からないまま使っている……そんな方々のための連載です。まずは、Linuxとはどんなものなのか確認しましょう。
Linuxを一から学びたい人のために
今、Linuxは企業のWebサーバやアプリケーションサーバ、ファイルサーバとしての用途だけでなく、クライアントPCやシンクライアント端末のデスクトップなど多くのシステムで利用されています。本連載は、そんなLinuxを一から学びたい、Linuxを効率良く操作するための知識やスキルを身に付けたいという人のための連載です。
インターネットを検索すれば大抵のことは分かりますが、基礎部分を理解していないと、思い通りに設定できなかったり、無駄な作業を行ったりしてしまうことになります。本連載ではそうならないために、Linuxを扱っていくための基礎を押さえ、実運用時に応用が利くようにすることを心掛けた解説をしていきます。
そもそもLinuxとは何か?
PCにしてもスマートフォンにしても、ハードウェアを操作するには「Operating System(オペレーティングシステム)」すなわち「OS」が必要です。「Linux」はマイクロソフトのWindows 7/10やWindows Server 2012 R2、アップル(Mac)のmacOSと同じくOSの一つであり、デスクトップPCやノートPC、一部のスマートフォン、そして多くのサーバで利用されています。
一般的なPCは、OSがインストールされた状態で販売されています。しかし、自分でOSをインストールし直したり、別のOSを追加したりして、複数のOSを切り替えて使うこともできます。Windowsが動作するコンピュータであれば、ほとんどの場合、Linuxをインストールして動かすことができます。そして、Linuxは無償で手に入れることができます。
Linuxは、狭い意味では「カーネル」部分のみを指します。カーネル(kernel:種、中心部)はOSの“核”となる部分で、コンピュータを操作する上で最も基本的な事柄、すなわちCPUやメモリ、ディスクなどの制御を行います。複数のプログラムを同時に動かす際に、CPUやメモリの利用配分を管理することもカーネルの役割の一つです。
しかし、コンピュータを利用するにはカーネルだけではなく、さまざまなソフトウェアが必要です。例えば、ファイルを操作するためのソフトウェアやユーザーがキーボードでコマンドを入力するためのソフトウェア、マウスで操作するためのソフトウェアなどです。
Linuxは、最初にカーネル部分が作者のLinus Torvalds(リーナス・トーバルズ)氏によって公開されました。そして、多くの人がそれぞれ自力で、あるいはチームで、このLinuxカーネルを使ってPCを動かすためのソフトウェアを開発しました。
ディストリビューションとは何か?
Linuxのカーネルは公開されており、誰でも無償で利用することができます。また、Linuxカーネルと組み合わせて使うパッケージも数多く公開されています。しかし、これらを全て自力でそろえることはとても大変です。
そこで、Linuxカーネルにさまざまなソフトウェア群を組み合わせて、まとめて配布するというスタイルが誕生しました。これを「ディストリビューション(distribution:配布)」、または略して「ディストロ(distro)」と呼びます(※)。
【※】ディストリビューションパッケージは、「配布パッケージ」という意味で、個々のソフトウェアについても使うことがあります。しかし、通常は「ディストリビューション」あるいは「ディストロ」というと、Linuxカーネルを含んだシステム全体、「パッケージ」は各ソフトウェアやライブラリの個々のパッケージという意味で使われます。本連載もそれに従います。
主なLinuxディストリビューションとしては「Red Hat Linux(レッドハット)」およびRed Hatをベースとした「Fedora(フェドラ)」「CentOS(セントオーエス)」(画面1)の他、「Debian GNU/Linux(デビアン)」およびDebianをベースとした「Ubuntu(ウブントゥ)」(画面2)、そして、これらとは別系統の「Gentoo Linux(ジェンツー)」「SuSE Linux(スーゼ)」などがあります。
Linuxカーネルは無償ですが、ディストリビューションには有償のものと無償のものがあります。有償のディストリビューションには、企業が開発・販売しているソフトウェアが含まれたり、インストールやシステム構成、保守サービスなどのサポートが付属したりするものもあります。また、同じディストリビューションでも、用途(商用/個人用など)やサポートの有無などで、有償/無償に分かれるものもあります。
どのディストリビューションを使えばよいのか?
ディストリビューションによって、ソフトウェアパッケージの管理方法、つまりインストールやアンインストールの方法、採用されているソフトウェア、設定方法などが異なります。従って、これからLinuxを勉強しようという人は、まず、ディストリビューションを選ぶところから始めることになります。
無償で提供されているLinuxを一通り試してみて、使い勝手が良いものを選ぶ……というのが理想かもしれませんが、なかなか難しいでしょう。ディストリビューションを比較紹介しているWebサイトはたくさんあるので、見た目や開発ポリシー、評判、人気、参照できる情報量などを手掛かりに選んでください。
古いPCを活用するのであれば、低スペックのハードウェアでも快適に動作することを重視しているディストリビューションを選ぶのもよいでしょう。これから選ぶという方は、次回解説する「Linuxのデスクトップ環境」も参考にしてください。
自分の会社で使っているサーバや契約しているレンタルサーバがRed Hat系であれば、同じRed Hat系のディストリビューションに慣れた方が、操作に戸惑うことがなくなり、管理やメンテナンスを行う際に効率良く作業を進められるようになります。
ただし、必ず同じでなくてはいけないというわけではありません。Linuxにおける設定や操作の意味を理解すれば、異なるディストリビューションでも応用が効きます。本連載ではそのための基礎作りを心掛けて解説していきます。
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