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技術知識の深さ、広さを併せ持つ「T字型人材」とノウハウ共有を核に、マーケットを拡大――サーバーワークス特集:アジャイル時代のSIビジネス(1)(2/3 ページ)

クラウドの浸透などを背景に、「SIビジネスが崩壊する」と言われて久しい。だが顕在化しない“崩壊”に、かえって有効な手立てを打てず不安だけを募らせているSIerも少なくないようだ。本特集ではSIビジネスの地殻変動を直視し、有効なアクションに変えたSIerにインタビュー。SI本来の在り方と行く末を占う。

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実績やノウハウを閉じ込めず「共有できる」ことが強み

 サーバーワークスの事業は大きく、「AWS導入支援」「AWS運用サービス」「AWS自動化ツール」という3つのカテゴリーに分けられる。「導入支援」は、AWSの各サービスだけではなく、これまでのサーバーワークスの構築ノウハウを利用しながら、周辺ツールや他のクラウドサービスなどを組み合わせて提供するもの。「運用サービス」は、運用代行、監視・障害対応、課金代行などのサービス。「自動化ツール」は、自社開発の運用業務自動化ツール「Cloud Automator」をSaaSとしてとして提供するサービスだ。

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サーバーワークスの主要3事業

 「強みの1つはドッグフーディングの徹底です。自社で使って“すごさ”を実感したことがAWSをデリバリーするようになったきっかけです。同じように、いろいろなサービスを社内で試してみて、良さを十分に理解した上で提供しています。2008年に社内向けに“サーバ購入禁止令”を出して以来、自社内の全てのサービスはクラウドサービスを組み合わせて利用しています。そのノウハウを社内に閉じ込めずに、より多くの人に提供しています」

 例えば、顧客に提供するAWS環境のユーザーの稼働状況などは「Salesforce.com」上で管理され、シングルサインオン環境は「OneLogin」で管理されている。AWSを単体で提供するだけではなく、「周辺のSaaSとどう組み合わせれば効果が高いか」を含めて提案、提供することで付加価値を付けている。大石氏によると、そうした中でも特に強みとしているのは、「エンタープライズ環境で必須となるID管理に関するノウハウ」だという。

 「AWSには、IAM(Identity and Access Management)ロールという権限管理の機構があり、これが非常に重要です。クラウドはレバレッジが効く分、何か起こったときの被害も大きくなりがちです。もしIDが漏れるなどすると、サーバ自体が消えるといったことも起きかねません。そこで、『どういう権限でリソースを払い出し、管理し、証跡を残していくのがベストか』が重要になってきます。企業の規模はどうか、グローバル化しているかどうか、自動化を進めたいか否か、といったニーズに応じて設計のノウハウは変わってきます。例えば、『普段は権限をIDから奪っておいて、特定の承認が下りたときにだけ権限を与え、2時間後には自動的に剥奪する』といったオペレーションも整備できます。ここには他社と比べて大きなアドバンテージがあります」

 蓄積したノウハウをオープンにして、パートナーやユーザーと共有できるようにしていることも大きな強みだ。ベンダー同士で協力して、エンタープライズ向けのクラウド構築の手法や導入の処方箋などを冊子としてまとめたり、ブログやWebサイトを通じて情報の発信を行ったりしている。自社のノウハウをSaaSとして提供していることも、そうしたノウハウ共有の方法の一つだという。

ユーザーニーズは「IaaSを使ったクラウド移行」にあり

 企業にとってクラウドはシステム構築の際の重要な選択肢になった。大石氏によると、ハードウェアのリプレースに合わせて、既存システムをクラウドを移行するニーズが目立って増えているという。

 「これまでは5年のスパンでハードウェアとソフトウェアをセットで入れ替えていました。今は、ハードをAWSに移行して、アプリケーションは入れ替えずに延命するといった選択肢を採ることもできます。いったんAWSに移行しておけば、アプリケーションだけをAWSから別のSaaSに移行するといったことも可能です。ベンダーにロックインされずさまざまなオプションを取るためにAWSに移行するという企業もいらっしゃいます」

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「今動いているシステムをクラウドにソフトランディングして、その上でクラウドのパワーを生かしながら、アプリケーションを書き換えていくという動きが加速している」

 技術的にも、クラウドに移行できないようなシステムはほぼなくなりつつある。業界の法的な制約や官公庁からの通達といった特殊な要件がある場合を除けば、クラウド移行に適さないシステムはほとんどないと言っていい。

 「例えばかつては、デスクトップ上での『tableau』を使った分析など、データ量が多かったり、トラフィックが高かったりするケースで(クラウド移行が)問題になることもありました。今はAWSが『Amazon WorkSpaces』というDaaS(Desktop as a Service)の提供を開始したことで、デスクトップごとAWSに移行し、高速な分析基盤で分析するといったこともできます。移行のハードルはかなり低くなりました」

 大手企業を中心に、「グローバルに分散したデータセンターやクラウドサービスをAWS上で統合し、本社統一のルールでガバナンスを効かせたい」ニーズが増えているという。「各地域の業務部門主導でデータセンターやクラウドサービスを利用するケースが増えた」「LOB(Line of Business)が勝手に使い始めた」といった状況が増えてきたクラウドサービスに対して、今度はIT部門が主導してクラウド上からガバナンスを効かせるというわけだ。

 「かつてクラウドに対するニーズはPaaSが中心になるという意見がありました。しかし、冷静に判断してみると、そんなことは起きないと考えます。アプリケーションをPaaSとして書き換えるのは実際はとても大変です。現実問題として、今動いているシステムをクラウドにソフトランディングして、その上で、クラウドのパワーを生かしながらアプリケーションを書き換えていくという動きが加速しています」

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