Amazon、楽天、ヨドバシ、ユニクロ――ECサイトの売上8割を占める「リピート売上」を改善する3種の神器とは:「コンバージョン率改善」×「在庫の見せ方」=「衝動買い」(2)(1/3 ページ)
ネットショップ(ECサイト)を運営および改善提案されている方に向けて「コンバージョン率改善」と「在庫の見せ方」によって「衝動買い」に導く方法を解説する連載。今回は、「コンバージョン率改善」の一環としてECサイトの売上の8割を占める「リピート売上」について改善方法を解説します。
第1回の「売れるECシステム開発、失敗しない3つの要件」では、システム構築においてサービス担当とシステム担当の相互理解がシステムの良しあしを決めることについて解説しました。今回は「コンバージョン率改善」として、「リピート売上」を改善する方法を解説します。
「リピート売上」とは
「リピート売上」とは、読んで字のごとく「以前自サイトで購入したユーザーが、再度(リピート)自サイトで購入する」ことによって生まれる売上を指します。
ECサイトの販売においては、リピート売上が全体売上の実に8割を占めるとも言われています。リピート売上はLTV(顧客生涯価値)の向上にも大きく寄与し、また商品/サービスへの愛着の強い「ロイヤルカスタマー」を生み出す土壌ともなります。あらゆる販売ビジネスは「リピーターなくして成功なし」と言っても過言ではありません。
LTV(顧客生涯価値)の向上策としては、他にSEO対策、会員数の増加などがありますが、本稿では売上におけるウェイトが大きい、リピート売上だけにフォーカスして解説します。
ではリピート売上を向上させるためには、どのような施策が考えられるでしょうか。本稿では、ポイント/メルマガ/キャンペーンの3つに着目して解説します。
これらについて、順に解説します。
【1】ユーザー心理を突いた「ポイント」付与
「リピート売上」を上げるには「値引き」ではなく「ポイント付与」が有効
ちまたには、多くの「ポイント」があふれています。購入金額に対し数パーセントのポイントが付与され、「1ポイント○円」という使い方ができる場合がほとんどです。会員をランク付けしてポイントの付与率をランク別に変化させる場合や、キャンペーンとしてポイントが通常より数倍多く付与されることもあります。
ポイントシステムの代表例としてはECショッピングモールや家電量販店、航空会社などが挙げられますが、他にもドラッグストアやレンタルビデオ店からスーパーマーケットまで、多岐にわたる業種でポイントシステムが導入されています。
ポイント制度は値引き施策の一種ともいえますが、リピート売上の向上という観点では、単純な値引きよりもポイント付与の方が効果は高いということが、さまざまな事例で実証されています。それは、なぜなのでしょうか。
瞬間最大風速的に売上を伸ばすためには、値引きが最も効果的ですが、値引きで購入したユーザーは、別の値引きがあればすぐに購入先を変更しがちです。従って値引きはリピート売上につながるとは言いがたく、かつそのユーザーが優良顧客(=ロイヤルカスタマー)とならない可能性も高くなります。
また、ポイント制度は原則としてユーザーの「囲い込み」であり、そのポイントは付与された店舗か同じグループ店舗でしか利用できません。日本円はどこの店舗でも使えますが、ポイントは付与された店舗でしか使えないのです。
これは販売側としては大きなアドバンテージです。ユーザーのポイント利用という事実上の値引きの必要はあるにしろ、ユーザーがポイントを保持していれば、リピート売上が上がる可能性が高まるわけです。
「捨てるにはもったいないけれど、売れ筋商品と交換するにはちょっと足りない」だけのポイントを常にユーザーに保持してもらうことが理想です。そうすると、幾度もリピート購入が起こるという結果となります。
以上のような理由から、ユーザーに何度も購入してもらう=リピート売上を上げるためには、値引きよりもポイント付与が有効といえるのです。
同じ価格でも、リピート売上を重視するならば付与ポイントを多めに見せる
ポイントには「付与」と「利用」という2つの側面があります。販売側がコントロールできるのは「付与」だけですので、リピート売上を向上できるように積極的にコントロールしていきましょう。
付与するポイントは、次回購入時にユーザーがポイント利用した場合にその分の売上金がない、実質値引きとなりますので、付与する方法には工夫が必要です。ただやみくもに行ってはいけません。過度な付与は利益率の低下につながりますし、少な過ぎても有効な手段となりません。価格とのバランスが重要です。
最適に付与されたポイントは、リピート売上の向上に一役買うことができます。具体的には、実質売上をキープしつつ、ポイントを多めに付与することが有効です。
例を挙げてみましょう。ある商品を1000円の実質売上で販売しようとした場合、以下のどちらの設定が好ましいでしょうか?
- 1100円+100pt付与……A
- 1010円+10pt付与……B
どちらも販売側からすると実質上1000円となりますが、ユーザーからの見え方は違います。
次に、検索や価格比較サイトからの流入するユーザーを考えてみましょう。この場合のユーザーは主に売価に注目していますので、Bの設定の方がよく売れるでしょう。一覧で比較して、一番売り値の安いものを選ぶのです。
では、既に何回かリピート購入をしているユーザーの場合はどうでしょうか。そういったユーザーは、他サイトとの比較などをあまり行わず、サイト上のその商品に対するお得感で購入を判断します。そこでポイント付与率が大きければ、この商品は「お得だ」と感じてもらえることでしょう。
このように、特にリピート売上を重視するならば、上記Aのように「ポイント付与を多めに」見せることが大切です。
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