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データセンターに訪れる“新たなステージ”の話SDN時代の幕開け(2)(3/3 ページ)

「VMware」や「OpenStack」の登場により、大きく変化しつつあるデータセンターインフラの世界を探訪する本連載。第2回では、初回のSDNからさらに視野を広げ、「SDDC(Software-Defined Data Center)」をめぐる動きをたどる。

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ついにイノベーションの波はネットワークにも

 データセンターにおけるサーバ、ストレージの変革はクリティカルマス(ある製品が爆発的に普及するための分岐点となる普及率)を超えたが、昔から保守的でリスクに敏感なネットワーク領域では、変化は遅れて訪れた。

 従来型のネットワークでは、業界の巨人であるシスコシステムズのスイッチなどを1台1台個別に導入・管理することで上位のアプリケーションやVM、そしてストレージインフラを支えてきた。そして過去20年間、この運用管理モデルが変化することはなかった。

 ところが、前回も述べた通り、仮想化によってサーバおよびストレージ市場の既存の仕組みが破壊されたのと同様に、データセンターネットワークに登場したSDNのアプローチが、ネットワーク市場全体に影響を与え始めている。

 SDNは、ネットワークの「コントロールプレーン」と「データプレーン」を分離するというコンセプトであり、言い換えれば、管理単位としてのスイッチハードウェアを抽象化し、ネットワークを管理するためのソフトウェアを個別のハードウェアから切り離すというものだ。その原型となったのは、フェイスブックやグーグル、アマゾンなどのハイパースケールと呼ばれるプレイヤーたちが、これまで考えられなかったレベルの効率的なネットワーク運用を、ホワイトボックススイッチと独自開発のソフトウェアによって実現したアプローチだった(参考:「ネットワークにも変化の波が」)。

 これらの企業の成功もあり、「現在のデータセンターの各レイヤーの中で最も変革が望まれているのはネットワークだ」という認識が投資家のコミュニティーにおけるコンセンサスとなった。その結果、かつてサーバとストレージの領域でベンチャーキャピタルによる投資が行われたのと同様に、2010年以来、ネットワーク関連のスタートアップに多くの注目と投資が集中している。

 なお、ネットワーク領域の変革を担うトレンドの1つであるSDNは、ヴイエムウェアの「VMware NSX(旧Nicira)」「PLUMgrid」「Nuage」「Contrail」などに代表されるオーバーレイ型のネットワーク仮想化と、シスコシステムズの「ACI」や「Big Switch Networks」といったアンダーレイ型のテクノロジーに大別することができる。

今、役者は出そろった――SDDCの実現へ

 SDDCが目指す“ポリシーベースの自動プロビジョニング”を実現するためには、サーバ、ストレージ、ネットワークからなるデータセンターの各サイロにおける、ハードウェアとソフトウェアを切り離すインテリジェントな抽象化レイヤーと、それらを統括するオーケストレーションレイヤーが不可欠だった。

 そんな中これまで見てきたように、サーバ仮想化やSDS、SDNを実現するための新技術、そしてVMware vCloud、Microsoft Azure、Openstackといったオーケストレーションの基盤となる複数の選択肢が進展したことにより、いよいよこのビジョンの実現が現実味を帯びてきている。これらの技術を活用したSDDCが実現すれば、データセンターは今日のビジネスのスピードに追従するための迅速性を手に入れることができるだろう。以上が、SDDCを求めて繰り広げられてきた革新の歴史である。

コンテナの登場:小さく、速く、そして若い

 ところで、最後にどうしても触れておかなければならないある技術の存在がある。それは「コンテナ」と呼ばれる、まだ若いが市場を一変させる可能性を持つ新たな仮想化技術だ。事実、この技術は、アーリーアダプターのデータセンターを中心に導入が進んでいる。

 Dockerや Kubernetes、Mesosといったプレイヤーにより推進されているアプローチを用いれば、VMより少ないオーバーヘッドで仮想化を行い、アプリケーションを数秒で展開することができる。例えばNetFlixのようなコンテンツストリーミングサービスを支えるインフラのような、大規模かつダイナミックな要求が与えられる環境において、契約者のストリーミングセッションをユーザーごとに展開されたコンテナが提供するといった使い方ができれば、従来の仮想化環境よりも迅速で柔軟なコンテンツデリバリが可能になる。

 本稿で見てきたように、仮想化はデータセンターの全レイヤーを根本的に変革し、仮想マシンはその変革の中心的役割を担ってきた。コンテナによる革新はまだ始まったばかりだが、仮想マシンの登場以来、最も注目を集めている技術の1つといってよいだろう。このコンテナが普及したとき、もしかしたら将来の私たちは今日のことを「仮想マシンの黄金期」として振り返ることになるのかもしれない。

著者プロフィール

グレッグ・ホルツリヒター(Gregg Holzrichter)

Big Switch Networks マーケティング担当ヴァイスプレジデント兼CMO。

Big Switch Networks入社以前は、Siebel Systems、PeopleSoft、VMwareに在籍し、

CRM、ERP、サーバ仮想化、SaaS、SDS(Software-Defined Storage)をはじめとする

数々のBtoB分野において、20年以上にわたりマーケティングを担当。

豊富なマーケティング経験を武器に、業界をリードしてきた。


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