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日本発の定額制音楽ストリーミングサービスは黒船勢をどう迎え撃つかものになるモノ、ならないモノ(71)(2/3 ページ)

国内外のサービスが乱立する“群雄割拠”の音楽ストリーミングサービス業界の現状とこれからについて、AWAへのインタビューを通じて探った。

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「音楽は無料で聴く」という習慣が染み付いたリスナーをどう取り込むか

 ただ、サービスの認知度上昇による市場拡大には懸念事項もある。無料音楽アプリの存在だ。例えば、App Storeの「ミュージック」カテゴリーの無料ランキングには、たくさんの無料音楽アプリが存在する。


2016年5月26日のApp Storeの「ミュージック」カテゴリーの無料ランキング上位には、10個の無料音楽アプリが並んでいる

 これらのアプリを使うと、YouTubeなどの無料配信サイトからストリーミング再生する形で音楽を聴くことができる。例えば、ドリコムの連結子会社が提供する「DropMusic」などは「800万DL突破」をうたっている。800万DLというと、AWAのアプリと同レベルのダウンロード数だ。実際、このアプリを使ってみると、「このアーティストを聴きたい」と決め打ちで聴取する限りでは、何の不満もなく利用できる。未知の音楽を探すことを目的としないリスナーにとっては十分すぎる音楽環境を提供している。

 このようなアプリがランキング上位に複数存在するのだから、ダウンロード数は、延べ数千万件にはなるだろう。中には合法なのかかなり怪しい音源を引っ張ってくるアプリもあるが、ランキングの様子を見る限り、こうした無料音楽アプリを日常的に利用し、満足しているリスナーは相当数いると想像できる。無料音楽アプリのユーザーが、月額課金が発生するような定額制のストリーミングサービスに移行してくるケースは決して多くはないだろう。

 では、そんな「音楽は無料で聴く」という習慣が染み付いたリスナーを相手に、AWAをはじめとする定額制ストリーミングは、どこまでユーザーを取り込むことができるのだろうか?

 小野氏は、「人の思いが込められたプレイリストを提供し、未知の音楽との出会いの機会を演出することこそが成長の鍵」だと言う。確かにAWAを使っていると、プレイリスト文化が着実に浸透しているのが見て取れる。それも、Apple Musicのようにサービス側のスタッフが作ったものではなく、ユーザーが作ったプレイリストが横方向に広がっているという印象だ。

 実際、「現在ある500万件のプレイリストは一般ユーザーが作ったもの」(小野氏)だという。一般ユーザーならではの“不純物”が混じったプレイリストには、音楽評論家やキュレーターが作ったような完璧なプレイリストにはない魅力がある。また、AWAでは、一般ユーザーの手によるプレイリストに加えテクノロジーによる楽曲のリコメンドとマッチングも取り入れており、音楽に対する人の思いや知識とテクノロジーが連携した音楽との出会いを演出している。


AWAのデスクトップ版の画面「Playlists that you’ll love.」には、他ユーザーが作成したプレイリストがリコメンドされている

 間もなく日本に上陸予定のSpotifyも同様の手法を採用している。「人手による1000項目近いタグ付け作業とアルゴリズムの組み合わせによって選曲を行う」SpotifyとAWAとのマッチング精度の比較が今から楽しみだ。

 また、AWAでは「マッチングの精度を自分でチューニングして高める機能の実装を進めており、6月末にはリリース予定」とのこと。筆者もデモを見せてもらったが、AWAアプリの特徴であるUI/UXが操作画面にしっかりと継承されていた。こちらも期待したいところだ。

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