SDNの理想と現実――ネットワーク運用でのSDNの現実的な活用法を考える:SDNで始めるネットワークの運用改善(1)(1/4 ページ)
本連載では、現実的な視点から、従来のネットワーク運用をいかにSDNによって改善できるのかを考えていきます。第1回では、SDNとそれに関連する技術についてあらためて整理します。
SDN(Software Defined Networking)という概念が登場してからしばらくがたち、キャリアネットワークやデータセンターネットワーク、企業ネットワークに至るまでさまざまな場所で研究・活用が行われるようになっています。また、そこから幾つもの発展技術が現れ、日々進化を続けています。
SDNのプレイヤーはさまざまです。先進的な例では、必要に応じて自らネットワーク装置を作り、自社サービスを効率的に構築・運用できるネットワークを実現している企業や、自身の研究成果と前述したような発展技術を組み合わせて応用・製品化し、他社にまで適用している企業もあります。
一方で、運用負荷が高まるばかりの自社ネットワークに対して、これからSDNソリューションを適用することで解決を図ろうとしている企業もあります。ところがそうした企業の中には、「SDN製品がうまく課題や状況に合致しない」あるいは「自社での課題の掘り起こしや開発が難しい」といった理由から、従来のネットワーク(の一部または全部)を、これまで通りの方法で運用し続けているところも多いようです。
今回の連載では、企業ネットワークの管理や運用に課題をお持ちの方を主な対象として、SDNのおさらい、現状の整理を行い、従来のネットワーク運用が置かれている状況と課題を確認した上で、「プログラマブル、プログラミングという観点に着目したSDNの効果的な使い方」によっていかに課題を解決できるのかを考えていきたいと思います。
SDNのおさらい――「OpenFlow」
既に世の中にはSDNに関する優れた情報が豊富に存在するため、やや「今さら」かもしれませんが、まずはSDNに関する簡単なおさらいと現状の確認から始めましょう。SDNは、従来のネットワークと何が違うのでしょうか?
従来のネットワークは、パケットの転送(Data Plane)と制御(Control Plane)が一体化したネットワークノードが自律分散し、それらが相互接続され、さまざまなプロトコルによってお互いを制御し合うことで成立していました。
これに対し、ONF(Open Networking Foundation)が定義したSDNでは、Control Planeをソフトウェアだけでも実装可能な形でネットワークノードから切り離し、Control Planeは転送ルールの決定とData Planeへのルール配布(Southbound API)を集中的に行い、Data Planeは配布されたルールに従ったパケット転送に徹する形を取ります。
この転送ルールを配布するための統一的なプロトコルの1つが「OpenFlow」です。OpenFlowでは、ネットワークを管理・運用する際にControl Planeをソフトウェアとして実装することで、自由にネットワーク全体のトラフィックを制御できる他、この制御インタフェースを外部にAPI(Northbound API)として公開し、さまざまなアプリケーションと連携してネットワークを制御することもできます。
参考記事
ただ実際のところ、既存のネットワークノードが全てOpenFlowに対応したものに突然置き換わるということはあり得ません。また、全てのネットワークノードについて細かいルールを集中管理・制御するということは、制御ロジックが膨れ上がるということも意味します。従ってOpenFlowには一長一短がありますが、これが一般的によく知られるSDNの定義の1つです。
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